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神狼(仮)  作者: Thokun
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何事にも

何事にも

サーシャは大きくため息をついた。

フェルド候の屋敷に来て5日過ぎていた。この5日の間にサーシャは、同じ歳のアーシャルとそれなりに親しくなった。と言っても、サーシャが勝手にホワイティの所に来ると、必ずアーシャルが側に居るので、話すようになったという感じだが。アーシャルが、馬にブラシを掛けているのを側で見ていた。アーシャルが用意してくれた、木箱にカバーを掛けた簡易の椅子に座っている。

ここで暮らすに当たって、始めにセイビアから話が有った。必ず守って貰いますといい、それが嫌なら出ていって下さいと、丁寧に言われた内容は至ってシンプル。

「仕事をしなさい。」

「領内で地位は無いものと考えなさい。」

「食事は必ず一緒に」

と言うものだった。


サーシャにとって、フェルド候の領地には、初めてが一杯である。神獣が話せる事を初めて知ったし、料理の手伝いも初めてだ。給仕の居ない食事も初めてで、自分で好きなだけ取る事や、誰かに取って上げる何て行為は新鮮だった。ただ、一番困ったのは着替えだ。一人で着たことも脱いだことも無かったのだ。今日初めて服の構造を知ったと言って良い。セイラが今日だけという約束で、着脱の講師をしてくれたのだ。セイラは、無口で殆ど話しをしなかった。セイビアには似ていないが、それでもやはり何処か似かよっていた。セミロングの銀髪が毛先で柔らかくカールしていて、可愛い。大きめの眼鏡に赤い瞳が隠れていた。その瞳をじっと見つめると、チカチカと火花を散らすような、魔状虹彩が見えた。彼女もやはり、魔力が強いのだ。聞けば、国立魔法科学院に居たそうだ。こんなに可愛い人が側に居るのだから、レオンとセイラは恋人かもしれない。そう一度思い付くとそうとしか思えなくて、自分が惨めに感じてしまう。

「セイラねーさんが、レオンの恋人!?」

アーシャルはその言葉を心底嫌そうな顔で聞いていた。言われた途端、凄い勢いで首を振ってナイナイナイと否定した。

「やめてよ。その冗談笑えない。って言うかあり得ないから。」

どうしてそんなに強く言えるのか、とても不思議。

「あんなダメ人間二人がくっついたら直ぐに死んじゃうよ!?主に俺が!」

酷い言われようなんですが、大丈夫ですか、フェルド候?領主として。

「アーシャルは、領主に思うところが有るの?」

サーシャが聞くと、今度は柔らかく首を振って否定した。アーシャルがはにかんで、そっぽを向きながら答える。

「おれ、ここが好きだから…。」

恥ずかしそうなアーシャルはまだまだ少年ぽくて可愛かった。意外とフェルド候は愛されているのだと思った。


次の日、レオンが野良のペガサスを連れてったら?と聞いてきた。つまり、神獣を連れ帰ってさっさと出ていけと言っているのだ。何だか腹が立ったけれど、それが出来るならペガサスの方がとっくにアプローチしてきている。自分に魔力が無いと言われている様で、悔しさが尽きない。サーシャの苦い表情を見て、大きなため息をレオンがつき呆れられている。押し掛けたあげく、この態度はなかったかもしれない。でも、サーシャにだって言い分はあるのだ。王家に生まれたのに、この体たらく。他にも兄弟が居ればまだ良かったのだろうが、居ないのだから仕方がない。自然と視線が下がり俯いていた。

ポンポンと、頭を何かが優しく撫でた。慌てて顔を上げたサーシャに飛び込んだのは、レオンの泣きそうな顔だった。理解が出来なくて怪訝な顔をしてしまう。ビックっと体を強ばらせたレオンが、ごめん、と謝ってきた。何故彼が謝るのか分からない。


今日もアーシャルの所に来て話しをしてみた。一緒にホワイティや、他の馬達の世話を手伝おうとすると、騎士達に必死に止められた。

「どうして手伝うことがダメなのかしら?」

アーシャルが用意してくれたいつもの木箱座りながら呟いてしまった。

「手伝いがダメなんじゃなくて、お姫様が姫なのがダメなんじゃない?」

そう、アーシャルが言う。どういう事だろう?

「姫ではいけないの?」

今、騎士達は側に居ない。セイビアがここに居るならと条件を出したからで、二人は割り当てられた仕事をしに行った。この敷地内に居る限り安全だと言われ、しぶしぶ従ったようだ。

「お姫様には何も頼めないでしょう?」

そういうアーシャルに益々謎が深まる。

「王様は、ここに来るとき肩書きを城に置いて来るよ?」

そう言われた。父は王の肩書きを置いてここで何をしているのか?アーシャルが答えをくれる。

「えっと、王様はここでまず、畑仕事をして、厩の掃除して、マローニーに無理難題な料理を作ってもらって、それから、自分の部屋を作って誰も入れない様にしてる。」

恐ろしい答えが来た。思った以上にここの生活に食い込んでいる。何をしているの?しかも、誰も入れない部屋を作ってるとか、何なの?

じゃあ、姫の肩書きを捨てれば良いのかと聞いてみた。

「えっと、無理だよね?騎士も連れてきてるし、自分の行動に責任が有るって知ってるよね?」

正論です。サーシャが何かすれば、責任を騎士が取らされる。でも、それは父も同じはず。

「王様は、自分がここに来てる事誰にも言ってないと思うけど?」

ああ、そうだった。だからサーシャはレオンと父が仲違いしたと思っていたのだった。熟未熟な自分を思い知った。

急にアーシャルが、背を向けて何かを見ている。子供が1人庭に入って来たのだ。凄い勢いで走ってくる。

「アーシャル!」

そう叫んで居るから、知り合いらしい。側まで駆けて来た子供は、アーシャルを見上げてニコニコしている。真っ赤な燃えるような髪の毛をした男の子だった。しかもとても可愛らしい。アーシャルはその子を見下ろして困っていた。けれど、直ぐにはっとして、

「アンバー?」

と聞いている。うん、と大きく頷く少年が可愛い。

「レオンが、皆に挨拶しに行きなさいって!」

「帰って来たんだ!でも、セレブロは?」

アーシャルが聞くと、突然サーシャの背後から、

「居ますよ?ところで、この方は誰?」

声が聞こえ、驚いたサーシャが振り返ると、美しい人が立っていた。声は男性の様だったのに、姿が女性みたいで、性別がはっきりしない。呆然と見つめて居ると、アーシャルが答えた。

「王様の娘のサーシャ様だよ。今、ここで生活してるんだ。王様が何かやって、レオンを見極める為に来てるんだって?」

ぐだぐだの説明に、後の方は疑問形になっている。サーシャをまじまじ見つめて居たセレブロは、興味を失った様に視線を外してアーシャルに、

「良くレオンが許したね?弱味でも握られてるの?殺す?」

冷やかに尋ねていた。



すみません。読みにくいですね。

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