表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神狼(仮)  作者: Thokun
6/8

嫌なことは無視したい

嫌なことは無視したい


「ねーさん、セイラねーさん!夕食の時間だよ!」

アーシャルが呼びに来た。部屋には小さなランプが灯って青い炎が揺れている。机にうつ伏せで寝ていたせいか、書きかけの用紙はセイラの流した涎で酷い事になっていた。ふうふぁいと意味不明な声で返事をしたら、アーシャルが笑ながら、

「また、遅かったの?もう夕方なんだからしっかりね。後、今日お客さん居るから、早めにね?」

そう言い終えて戻っていった。客とは誰?ここに客なんて、しかもご飯まで食べるなんて。あのジークニア王の事なら『王さん』来てるとアーシャルなら言ったはずだ。不思議に思いながらセイラは、仕方がないので服装を整えた。セイラがここに来て2年たった。祖父のセイビアが、学院を卒業した時迎えに来て、それからレオンに初めて会った。セイラより年上なのにしっかりしてない彼が嫌いだった。何より、セイビアに気を使わせてる癖に、それを甘受してるのが許せなかったのだ。けれど直ぐにそんな考えは無くなった。この屋敷で魔力について深く語り合えるのが、レオンしか居なかったからだ。しかも、凄く詳しく博識だった。それに、貴重な稀覯書を惜し気もなく買ってくれるのだ。屋敷の一画をセイラの好きに使わせてくれ、道具も揃えてくれる。しかも見返りを求めない。この屋敷の唯一の決まり事は、一緒に食事をする事だけだ。それも、レオンが決めた訳じゃない。そうしないとレオンがご飯を食べないからだ。はっきり言ったら、きっとセイラも同族で、『食べるのめんどくさい』それより考えたい事は一杯ある。詰まるところ、レオンもセイラも似た者同士だったりする。

黒を基調とした質素なメイド服に黒色のタイをきちんと着けて、整える。セイラの居た学院の時と変わらない格好は落ち着く。

国立魔法科学院。セイラが6才から16才まで過ごした第2の故郷といっても良い場所。両親が死んで、気が付けば身寄りが居なくなっていた。セイビアはセイラが5才になった頃旅に出た。次の年に両親が亡くなり、孤児院に入るところを魔力が大きいと認められ学院に入ったのだ。その後、セイビアは10年以上帰って来なかった。両親の死も、残されたセイラの事も知らなかったと言う。悲しくて、悔しくて、恋しかった人。セイラよりレオンが大切なのかと嫉妬もした。バカらしくなったけど。それより、興味深いのはレオンの魔力だ。底が見えないのだ。生まれた土地柄だと言うがそれにしてもスゴすぎる。けれど、本人に自覚がないので、勝手に実験対象にしてるのだが…。楽しい。面白い。毎日試したい事で一杯で、寝る暇がない。


セイラは食堂に行った。この屋敷の食堂は、それなりに大きい。大きなダイニングテーブルは、6人掛けだが、今日はそれにプラスして10人座れる様になっていた。その上座に少女がいた。アーシャルと差ほど歳の変わらない印象を受ける。私を見て、驚いた顔をした。セイビアが側に来て少女の元に一緒に連れて行かれた。めんどくさい事はお断りだったが、

「サーシャ様、紹介してもよろしいでしょうか?」

そう問いかけている。サーシャ…。王さんの娘だ。あのおっさんやたらと、嫁と娘自慢が酷かったから、すぐ分かった。てか、親子で何やってるの?暇なの?

大様に頷く、サーシャ様。

「ありがとうございます。こちら、私の孫娘のセイラと言います。」

そう言ったので、セイラも続いて、

「よろしくお願いいたします。」

頭を下げておいた。

「セイラは、メイド兼医療に従事しています。また、魔術師でも在るため何か有りましたら、お声掛けください。」

慇懃に頭を下げたセイビアにつられ一緒に頭を下げた。

「セイラさんよろしくお願いいたします。今日から暫くこちらに厄介になるサーシャです。」

はぁ?暫くって何?一体昼間に何が有ったのよ!セイラの思いとは裏腹に皆が食堂に集まった。姫を囲むように騎士が席についた。レオンは嫌がって端っこの席についた。我が家は、コース料理じゃないから、始めに全ての料理が大皿に盛られてテーブルに並ぶ。それを皆で取り分けるのだ。勿論個人個人で。それを出来るのだろうか?侍女位連れて来れば良いのに。私はメイドだけど、絶対にそれは遣らない。そんな事してたら自分の時間が無くなる。そんなのは御免だったので、早々にレオンの隣に座った。セイビアとマローニー、アーシャルも席に着く。私はレオンの腕をつつき、早く始めろと促した。

「えぇー!?…どうぞお召し上がりください。我が家では、食べたい物は自分で取り分けます。ここで過ごすには、ここでの遣り方にしたがってください…。では、いただきます。」

そう言い、食べ始める。ポカンとしていた王女も、騎士達も慌てていた。誰も本当に給仕する人が居ないのだ。レオンが、普通にそれとって?と声を掛ければ、アーシャルが、パンを取って渡したり、逆にマローニーがレオンに、ドレッシングを取るよう言いつけたりする。それを見ていた騎士は、王女に気を使い、何が食べたいかと、自分達が給仕の真似をしだした。それを見たレオンが、

「自分で出来ないなら帰って良いよ。」

と、言ったものだから、サーシャ王女は目を細めてこちらを睨んだ。

「自分で出来ます。」

そう言い、多分生まれて初めて自分で取り分けたりしだした。でも以外とそれが楽しかったのか、騎士にも、分けてあげたりして、騎士の方が食欲を無くしていた、可哀想に。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ