今夜の夕食は
今夜の夕食は
調理場にグツグツと音がなる。この調理場、かなりの手直しを余儀なくされたが、今では使い勝手のいい空間となっている。マローニーは今年で43才になるが、外見のおかげで誰にも本当の年齢を言い当てられたことが無い。135センチしかない身長と、童顔。というか、この姿は呪いのせいだ。ちょっと前まで、マローニーは、冒険者だった。食と、薬草を求め世界各地を転々と仲間と共に旅していた。未知なる物を探求したら、とんでもないしっぺ返しを食らった訳だが。仲間が殺され、傷付き駄目だと思ったとき、旦那に出会った。セイビアである。そして、セイビアと行動を共にしていたレオンである。あの頃、レオンはまだ12才だった。年のわりに小さくまだ、10にもなっていないのかと思っていたくらいだった。二人に助けられ、行動を共にし、彼らを気に入って、この領地を授かったときいたとき、押し掛けてはや4年半。二人は今も変わらずだし、身長は延びたものの、今だ食の細いレオンには、困ったものだ。食費にレオンは文句は言わない。好きなものを作らせてくれる。この屋敷に、好き嫌いを言うやつはいない。以外とみんな食の大切さを分かっている。しかし、今晩の夕食は悩む。今日来たあのお嬢はどうだろう?あの王の娘だと言うし…。あの王、ジークニアは困ったことに、来る度に色々と注文をつけていく。やれどこだかの郷土食が食いたいとか、デザートは何がいいとかである。大体の献立は一週間前には決めている。買い出しや、収穫の目処をみて決めているのだ。それをあいつはめちゃくちゃにしていく。その娘たる、お嬢はどんなものだろう。とりあえずセイビアに頼んで、探りをいれてもらっているが。腕を組報告を待っていると、突然大きな音をたてて扉が開いた。開けた本人が、その音に驚いて茫然と立ちすくんでいた。お嬢だ。
「あ…。そのドア立て付けおかしいから。」
そう言ってやると、顔を真っ赤にしてうつ向いている。きついと思って開けると途中から勢いがついて、とんでもないことになるのだ。コツがいる代物だが、今となっては、それもこの職場の味だった。くっと顔をあげたお嬢が、
「今日から私もお世話になるみ。お手伝いさせてください。」
そういいきった。いや、あんた姫さんだろう。
「…じゃー、芋でも剥いてもらおうかな。」
マローニーは、ため息をつきながら、引くことの無い、サーシャに声を掛けた。嬉しそうに微笑みながら、
「はい。任せてください。」
そう言ったサーシャは、用意した椅子に腰掛け、渡したぺディナイフを持ち芋のかわむきに取りかかった。これで暫くおとなしくなると、たかをくくっていたマローニーは、自分の浅はかさにめまいがした。芋が無いのである。いや、用意した芋が、皮だけを残して消えていた。いやいや、皮の存在感が半端無い。分厚い。わー美味しそう。マローニーは、逃避に成功していた。サーシャに呼び戻されるまでは。
「後何をすればいいですか?」
わくわくとマローニーをみている。なにも。ノーと言える自分でいたい。 サーシャはキョロキョロと辺りを見回し始めた。
「あのー。料理長はいないんですか?」
そう不思議そうに言う。そういえば、あまりの驚きで、挨拶して無いことに気が付いた。
「俺はマローニー。俺が料理長だよ。」
頭を軽く下げながらいうと、サーシャの顔色がみるみるが悪くなっていった。
「えっ?ここでは子供に料理をさせてるんですか?」
憤然としながら聞いてくる。お嬢よ。悪いが俺は子供じゃない。良く間違えられてはいるが。
「俺は、子供じゃない。今年で43才だよ。」
なるべく、顔に出さないように、穏やかに言う。サーシャはきょとんとし、次の瞬間にはニヤニヤしながら、
「いくら、世間知らずでも、それは騙されませんよ。」
ちょっと、お姉さんぽく言い聞かせるように言った。いやいやお嬢よ、嘘なんてついてないし、冗談でもない。至って真面目なお話だ。そこに、第三の声が割り込む。
「マローニーの、言ってることは本当ですよ。」
落ち着いた渋い声。セイビアである。えっと、驚きの声を小さくあげた、サーシャが振り替える。びっくりするのも無理はない。
旦那の気配本当に読めねーなー。いつまでたっても、現役みたいな体さばきでセイビアは、衰えを知らぬ騎士様だ。
「彼はもう、当家で4年半働いていますし、その約5年ほど前から知り合いましたが、今と変わっていません。9年たっても、成長していないんです。その事から、彼の年齢は、私どもが考えるより、はるかに上でしょう。」
そう、じっとサーシャを見つめながらセイビアが話す。色々と面倒なので、続けてマローニーはなにか言われる前に付け加えた。
「これは、 呪いだよ。前にちょっと厄介なやつに、絡まれて呪われたんだ。そのせいで、こんな風になっちまったんだ。」
まあ…っと言葉を無くして、こちらを凝視するサーシャの視線がいたい。やめてくれ。別に今んとこ困ってない。セイビアの孫娘のおかげで、高い所の物も以外と簡単に取れるから。舐められることもあるが、そういう時は殴ることにしてるしな。納得した様な出来ないような微妙な表情を浮かべるお嬢よ。どうでもいいじゃないか。あんたが困ることは一つもないのだから。
「ところで、サーシャ様。神馬を見たくは無いですか?」
セイビアに言われ、慌てて暇をこうお嬢にマローニーは軽く手を振りながら後姿を見送った。
すみません。少し、名前を直しました。




