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神狼(仮)  作者: Thokun
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納得いかない。

感想ありがとうございます。とっても嬉しかったです。

納得いかない。


 セイビアは気分を概していた。今年で52歳に成ったセイビアは、レオン=フェルドに使える執事だ。この家には、孫娘と共に使えている。セイビアの主人レオンは今は爵位持ちだが、昔はただの平民だ。と、言ってもちょっと有るのだが、もうそれは昔の話。今は王に認められてその地位にある。セイビアとレオンの関係は主人と執事。だが、遠い姻戚関係もある。その為と、昔からの付き合いで執事といってもファーストネームで呼び会う仲でもある。というか、この領地にレオンを畏まった呼び方をするやつはいない。初めて会った時から、レオンの目付きの悪さと、人嫌いは直っていない。それは仕方ない所もあるが、もう少しどうにかしたいところだ。レオンはそれなりに整った顔と焦茶のボサボサの髪の毛。瞳はライオンの様に金色に煌めいている。瞳の奥には二重になった魔状虹彩が有り生まれながらの魔力の強さを示していた。レオンの瞳に憧憬の念を感じながらも、この大人になりきれない男を追い立て行くのが、セイビアの仕事だ。

その日の午後、先触れもなく領内に一台の馬車と馬に乗った騎士が二人現れた。馬車には王家の紋章の竜の家紋が施されていて、誰が訪れたのか推測できる。けれど、王家だとしたら、護衛が少なすぎるのでは?不思議に感じていた。御者が、扉を開き、一人の騎士が手を差しのべると、ピンクの指先が見えた。王ではなさそうだ。若葉色の絹でできたドレスの裾には竜をモチーフにしたであろ刺繍が鳩羽色のきらめきを見せている。嗚呼、これはあれだ。国の至宝と呼び声高き、かのサーシャ王女。どっと、セイビアに疲れが押し寄せた。

「ごきげんよう」

茫然自失のセイビアに、嵐の女が微笑んだ。

「私はジークニア王皇女サーシャです。この度は、先触れもなく申し訳ありません。領主レオン=フェルド候にお会いしたいのですが。」

少し考え、首を傾げながら

「ご在宅でしょうか?」

そう訪ねられた。

「はい。どうぞこちらへ」

居るよ居る。凄く居る。というか、あいつ引きこもりだから。部屋から出てこないから。食事の時以外。だから外にいけって言ったろうが。外に出てれば、帰って貰えたものを。セイビアはひきつりながら屋敷のなかに招き入れた。客間に通し、主人を呼びに行く。サーシャは、物珍しそうに屋敷内を眺めていた。それはそうだ。この屋敷めちゃくちゃ古い。レオンは全く屋敷に興味がなく、住めればいいと思っているだけなので、最低限の補修しかしていない。しかも、領民すべてが彼と同じ感覚の持ち主ばかりで、自分の興味あるものしか、関心を寄せないのだ。だが、客間はたまに訪れるジークニア王のお陰で、ましな方なのだ。あの人、人のうちに、どっかで買ってきた壺とか絵画とか勝手に置くのだ。出所もわからん様なやつを。セイビアは、レオンの部屋の前に立ちノックをする。返事がない。もう一度ノックをするがやはり応答がない。引きこもり対策で鍵は付けていないのだが。セイビアがノブに手をかけると中から阻止しようと力がかかった。コイツ。セイビアはイライラしながらノブを回す手に力を加えた。めきめきと音をたててドアが破壊された。小さく、ぎゃっと声がしたが気にしない。セイビアは無理やり押し入り、尻餅をついているレオンを見下ろす。

「なにやってる?」

そう聞くが、明後日の方向をみながら、鳴らない口笛を吹くレオンの頭に、セイビアが手を乗せ力を加えていく。

ギャーギャー騒ぐが無視だ。

「サーシャ王女様がおみえだ」

そういってやったが、レオンは

「あっ…会いたくない!!」

そう涙目で叫び返してくる。セイビアはため息を漏らしつつ、

「無下にすると、この家とられるぞ」

そう言った途端、やだー、と立ち上がりボサボサの頭のまま客間に駆け込んでいった。レオンにとってここは無くてはならない大切な場所なのだ。

さてと、小さく声を出しながらセイビアは立ち上がり、足取り軽く厨房へ寄り、マローニーオススメの紅茶と割りといい感じのティーセットをワゴンに乗せて客間へと向かった。ところが、レオンが客間へ入れず、騎士ともめていた。あまりにひどい格好で、騎士が領主と思えなかったらしい。いや、わかるが。うん。わかるよ?だが、騎士たちよこの領土の者がレオンをどう扱おうとそれはいいのだよ。しかしながら、よそ者が領主をむげに扱うのは許せん事なのだよ。それが例え地位の高いものだとしても。殺気にも似た冷ややかな視線を騎士にぶつけながら、セイビアから話をつけやっと二人は顔を会わせることができた。



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