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 散策を終えたティナとレイラは、適当に昼食を済ませたところで急きょ指揮所に呼び出された。指揮所とは言ってもその実態は退避壕付きの木造ボロ屋で、通信設備もまともに配備されていない急ごしらえの施設だ。

 そんな指揮所のミーティングルームを訪れたティナとレイラを待っていたのは、当基地に所属するほぼ全てのパイロット達と基地司令含む数人の高級将校だった。

 パイロットの総勢は三〇名足らずで、義勇軍が半数以上を占めている。基地の規模に反してパイロットの数があまりに少ないのは、指揮所のボロさも含めて慢性的な資源・人員不足の表れだろう。

 全員が集まったところで、おずおずと現れた基地司令が場を仕切る。

 しかしながら、若さを残す顔つきでオドオドと喋るその姿は司令としての貫禄に欠けていた。恐らく、足りない将校を補うために急きょ養成されたクチなのだろう。不安要素ばかり目につくティナは不安を覚える。

 だが、いくら基地司令が頼りなかろうと、彼も一介の将校である。基地司令がボソボソと話すその内容は、ティナとレイラの運命を決定づける「編成と配属」に関してであった。

 ティナとレイラは、同じ〝モランデル〟に搭乗しているので、同一機種をまとめた第四中隊のうち最低序列である第三小隊に配属されることとなった。

 第三小隊の内訳は、レイラが小隊長を担当し、寮機にティナがつく形だ。当基地では航空隊の規模があまりに小さいため、二機構成の小隊を最小単位にしている。また、装備の偏りや出身国の違いなどから階級差も多少無視され、結果的に同じ小隊に詰め込まれたティナとレイラは同階級にも関わらず方や小隊長、方や寮機という編成を余儀なくされていた。


「なんで私がレイラのケツ持ちなのよ!」


 ミーティングを終え、部屋を後にしたところでティナは屈辱とも言える編成の不満をレイラにぶつけていた。

 対して、えらく満足した様子のレイラは、その高い鼻を鳴らして堂々とティナの前を歩いている。


「あの基地司令閣下、頼りなさそうに見えたけど私の実力はしっかりと把握していたようね。ティナはせいぜい足を引っ張らないように私の後ろを飛んでなさい」


 何を言っても負け惜しみにしかならないティナは、「ぐぬぬ」と歯を食いしばる。

 階級も実績もほぼ同等の二人ではあるが、二人だけで編隊を組む以上は優劣がつくのは仕方のないことだ。ティナにしてみれば、寮機に選ばれたのは運が悪かっただけと理解してはいるものの、いつもの調子でレイラに煽られては調子が狂う。

 しかし、溜まりに溜まった不満をレイラにぶつけようとしたその瞬間、ティナの怒りを遮るように後ろから声をかけられた。


「お前達。自信があるのは結構だが、ここは飛行クラブじゃない。あまり調子に乗るな」


 ティナの後ろに立っていたのは、昨日にハンガーで出会った〝フェスカ〟のパイロットだった。


「あら、誰かと思えばベッカー中尉じゃありませんか。それとも中隊長殿と言った方がいいかしら?」


 先のミーティングで編成を言い渡された際、男の名がベッカーであるということを二人は知った。加えて、ベッカーは第四中隊の中隊長を命じられていたので、ティナとレイラはベッカーの指揮下に入る形となっている。

 そんな事情もあって、レイラはベッカーに対してはえらく敵対心を燃やしているようだった。

 初対面で注意されたことも気に食わなかったようだが、どちらかと言えば実戦を積んだ男のパイロットに負けたくないという対抗心がその態度を生んでいるようだ。

 ティナはレイラのプライドの高さに呆れつつ、二人の火花が大火事に発展しないよう慎重に見守る。


「俺の呼び方は何でも構わない。はっきり言うが、受け入れて間もないお前達を急きょ編成に組み込んだのは、敵の大規模な作戦行動が近いからだ。正直言って、お前達の実力を見る前に小隊として独立させるのはこちらとしても不本意だ」


「あなたが不本意でも、基地司令閣下の判断でウチの小隊が編成されたわけでしょ? 釘を刺しに来たなら心配しなくても結構。戦果欲しさに暴走するような真似をするつもりはないわ」


「ならいいが……くれぐれも独断専行のないように。あくまで指揮官は俺だ」


 それを聞いたレイラは、悪ふざけのように「イエス・サー」と叫ぶ。

 呆れたベッカーは何も言わずにその場を去ってしまった。

 度重なるレイラの所業に、ティナはため息をつく。


「レイラ、ちょっとツンケンしすぎじゃない? 階級は同じかもしれないけど、ベッカー中尉の言ってた通り、編成上じゃ私たちは彼の指揮下にあるのよ。あんまり突っかかってると問題になるわ」


「あら、ティナも編成上じゃ私の指揮下にあるんじゃなくって? 少しは敬いなさい」


 その一言でレイラに対する怒りを思い出したティナは、軽く回し蹴りを決めてから頭を鷲掴みにして髪の毛をグシャグシャにしてやった。

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