強制パーティー
おはようございます。ミストリアです。昨晩は、ちゃんとした清潔な毛布で寝れて、ぐっすり眠れました。今日は良い1日になりそうです。
毛布を片付けて、冒険者ギルドへ行くと、見知らぬ冒険者達が近寄ってきました。
「おい。新入り、お前、クラフト魔法使えんだろ?荷物持ちさせてやるから、仲間に入れてやるよ。」
まあ、何て上から目線なのでしょうか。私、そんな方とパーティーは組みたくありませんわ。
「折角ですが、お断り致しますわ。私、1人でも大丈夫ですので。」
「あ?生意気な小娘だな。お前の体に言ってることがわかるまで教え込んでやる!こっちこい!」
「っ!痛いです!」
腕を乱暴に捕まれ、無理矢理引っ張られ、連れていかれるところで、男の手を他の手が掴んだ。
「おい。何してんだ。てめぇら、そんな事していいと思ってんのか?」
「あ?なんだおめぇは。関係ないやつは引っ込んでろよ!」
「いや、関係あるね。俺はこいつとパーティー組む約束してんだ。勝手に連れていかれちゃ困るんだよ。」
「え?!」
え?そんな約束した覚えは...あぁ、そう言うことですわね?
「は、はい。私、こちらのアルベルトさんとパーティーを組む約束なのです。」
「は!?アルベルトだって!万年Bランク冒険者で、『戦場の獅子』のあのアルベルトか!?」
「うるせぇ!誰が万年Bランク冒険者だ!!!」
アルベルトは男へアッパーを食らわし、男は宙を舞い、気絶して、パーティーメンバー達に引っ張られて消えていった。
「え、えっと、ありがとうございます?」
「構わねぇよ。それより、気を付けろと言っただろ。クラフト魔法が、使えるインベントリ持ちは、荷物持ちとして人気があるんだよ。ああやって強引にパーティーメンバーにしようとする奴もいるから、気を付けろよ?」
「はい。分かりましたわ。」
アルベルトさんへと笑顔を向けていると、横から笑顔なのに、般若のような顔が後ろに見える、ギルドの職員が立っていて、アルベルトさんと一緒に後ろへと後ずさってしまった。
「アルベルトさん?ギルド内での喧嘩は止めてくださいとあれだけ言いましたよね?よね?」
「い、いや、あれは、この嬢ちゃんを助けただけで!...あべし!」
ギルド職員の渾身のアッパーが決まり、アルベルトさんは天井高くまで宙を舞ったのであった。
冒険者ギルド怖い!
「なるほど、こちらのミストさんを、無理矢理連れ去ろうとした冒険者から、アルベルトさんは救ったと。」
「...最初にそう言ったじゃねぇか.....」
今、いるのは、冒険者ギルド内にある応接室で、私とアルベルトさんが並んでソファーに座り、若かったので、ギルド職員だと思っていたノットさんと言う、冒険者ギルドオマール支部のギルドマスターが対面に座っています。
「いや~また、アルベルトさんがやらかしたのかと思うと、イライラして、ヤっちゃった♪」
「はぁ...」
凄い適当ですね。それも、反省の色無しですか。
「そう言えば、アルベルトさん。『戦場の獅子』って呼ばれてましたけど、何なのでしょうか?」
「ああ、それはな...」
話を聞くと、冒険者になった頃、戦争に参加して、戦場を駆け回って敵に食らいつく姿がまるで獅子のようだった為、ついた名前だそうだ。
「そうなのですか。では、アルベルトさん、結構、お強いんですね?」
「そりゃそうだよ。公国の騎士団からも勧誘を受けているほどだからね。だと言うのに、冒険者ランクの昇格試験を受けてくれないんだよ。どう思う?」
口を挟んだギルドマスターは「はぁ~」と言いながら肩を竦め、お手上げと言った仕草をしている。
戦場でそれだけ活躍でき、騎士団から勧誘が来るほどの実力なのなら、冒険者ランクもAランクの上か、Sランクくらいにはなっているはずなのですが、何でBランクのまま、昇格試験を受けないのでしょう?不思議です。
「前にも言っただろ。俺は実家の関係であまりランク上げて、有名になるわけにはいかなぇんだよ。」
「はぁ...まあ、何となくわからないことは無いのですが、それでも、ギルドとしては実力ある人材を昇格させずにそのままと言うのは、良くないんですよね.....」
「知るかそんなもん。」
「まあ、いっか。さて、本題だけど、まず、君。」
「私ですか?」
「そ、まず、君に関しては、今後も問題に巻き込まれると我々は考えている。そして、冒険者ギルドはギルド員を守る義務がある。だから、君にはアルベルトとパーティー組んでもらおうかなと思ってるんだ。」
「ちょっと待て!何で俺だ!」
「だって、実力もあるし、最近、昼間から酒ばっか飲んで暇そうだし、ぼっちだし。」
「ほっとけ!」
その後もギルドマスターとアルベルトさんの攻防は続き、ギルドマスターの「働けニート。」の言葉に盛大にHPを削られたアルベルトさんが折れたことによって、私の意思も関係なく、アルベルトさんとパーティーを組むことになった。