オマール伯爵との謁見
領都のオマールに着くと、冒険者ギルドで事情を説明し、ギルドマスターを介して、領主様への謁見を申し込みました所、直ぐに会うとのお返事をもらった為、領主館へとララノアさんと村長さんと一緒に向かいました。
「では、こちらでお待ちください。伯爵様は直ぐに参りますので。」
領主館の執事さんに応接室へと案内して頂き、伯爵様が来るのをお茶を飲みながら待っていて、ララノアさんは平然としてらっしゃいますが、何故か、村長さんが落ち着きなく、小さく縮こまって、辺りをキョロキョロとしています。
「村長さん?どうかなさいましたの?」
「え、いや、少し緊張していまして。」
「そうなのですか?大丈夫ですよ。堂々として、礼儀正しくしていれば、大丈夫ですわ。」
「む、む~お二人は随分と落ち着いてられますが、経験がおありで?」
「「マ、マアネェ~」」
片方は、長寿のエルフ族で、長い間、高ランク冒険者を経験し、何度も貴族とのやりとりをしてるララノアで、もう片方は、魔物の巣くう貴族の世界を生きてきた元侯爵令嬢であるミストからしたら、一地方の伯爵に話をするだけなんて朝飯前で、平然としていられて当たり前なのだ。
「...私も見習わないといけませんな。」
そんな事をしているうちに、ドアがノックされ、伯爵様が入ってきたので、全員、席を立ち、お辞儀をする。
「そなたらが、私に話があるそうだな。私は、忙しい故、手短に頼む。」
ソファーに伯爵が座ると、一同も席に着き、事情を説明する。
「なるほど、その老齢の地竜が故意ではなかったが、村を荒らしていたと。そして、その地竜の生活を出来れば、支え、お返しに村や領地を魔物から守ってもらうと、そう言うことか。」
「は、はい、私としても、強力な地竜が見方になるのなら、領地の平和も守られると思った次第でございます...」
「なるほど、だが、誰がその巨大な地竜を養えるのだ?我が領はその様な巨大な生き物を養う程の余裕は無いのだ。むしろ、討伐して、売却した素材の利益の方が欲しいな、その方が、他のことに予算を当てることができ、有用だ。」
伯爵は魔物の被害が減る事より、地竜の素材を売った利益の方が良いようで、村長の提案を拒否してしまった。
「お待ちくださいまし。」
「ん?何だ?冒険者が下手に口を挟むべきではないぞ?」
「承知しております。ですが、地竜を討伐して、得る利益より、私は、地竜を"活かして"得る利益の方が多く思います。」
「ほお、そう思った根拠を言ってみろ。」
「はい、先ずは、魔物の被害が減ることによって、田畑の被害はなくなります。つまり、食料の生産量が増えると言うことになりますわ。そして、次に町や村です。地竜を防御に活かすことによって、他の魔物は地竜の縄張りとなる町や村に近付けなくなります。これによって、オマール領は、『魔物の心配がない安心できる場所』となり、移民も増え、商売も活発になりますでしょう。それを考慮すると、得る利益は、地竜1匹を養う費用が端金に思えると思いますの。如何ですか?オマール伯爵様。」
「..ふ..ふ、ふははははは!!!!」
伯爵はお腹を押さえて爆笑し始め、しまいには、ヒーヒー言いながら、息を整え、やっと落ち着く。
「ああ、笑った笑った。まさか、ただの冒険者がそこまで考えてるとは、思いもしなんだわ。なるほどな。それなら、地竜を伯爵家が養っても利益の方が大きいな。そなたらの提案を受けよう。」
「ありがとうございます。」
「うむ。まあ、それはそれとして、本当にそなたはただの冒険者なのか?」
「はい。過去はともかく、今、私は間違いなくただの冒険者ですわ。」
「ふむ、では、その"ただの"冒険者には、褒美をやろう。勿論、あとの2人もだ。まず、そっちの確か、ララノアと言ったな。金貨1枚をやろう。」
伯爵が執事に目配りすると、執事がララノアに金貨を渡す。
「ありがとうございます。」
「そして、ヘルボ村の村長には、村の拡張をそなたの裁量に任せ、開発資金と地竜による被害の補填として金貨8枚を与える。」
「は、ははぁ、ありがとうございます。」
「そして、そなた、ミストには、私が発行した通行手形を与える。この通行手形があれば、国内の町ならどこでも通行料無しで自由に通れる。」
「ありがとうございます。とても助かります。」
「では、私はこれにて退室する。ご苦労であった。」
伯爵様は部屋を出ていき、私達も執事の案内で領主館を後にしました。




