魔法の練習と帰ってきたアルベルト
「そうそう、もう少し風の魔力を強くして...あ!多すぎ多すぎ!減らして!!!きゃぁ!!!」
氷魔法の訓練を始めて1時間、泉の周りは霜で覆い尽くされ、2人も体のあちこちに霜が付いていた。
「うぅ...申し訳ありませんわ。」
「いいよいいよ。出来る人の方が少ないし、少なくとも、何回かは出来てるんだから、練習すれば必ず出来るようになるから!」
「...あまり、自信ありませんわ。」
「まあまあ、とりあえず、休みましょうか。ちょっと体も冷えてるし、陽の当たるところで休みましょう。」
氷魔法の練習の影響で気温が下がり、霜で覆い尽くされた泉を離れ、森の中の開けた広場へと移動し、焚き火を焚くと、焚き火の側に座り、暖まる。
「はい、水分補給だよ。」
温かいお茶をミストへ渡す。
「ありがとうございます...はぁ、生き返りますわ。」
「ふ~本当、生き返る~」
2人で温かいお茶を飲みながらホッコリする。
「ララノアさんは、氷魔法を使えるようになるまで、どれくらいかかりましたの?」
「ん?えっとね、どれくらいだったかな。ある日、突然、氷を出せるようになって、それから練習を始めたから...2年くらいかな?」
「2年ですの?結構、かかるんですのね。」
「いや、これでもかなり早い方だよ?普通は5年から10年はかかるんだからね。」
そんなにかかるんですか。驚きです。では、ララノアさんはかなり努力されたんでしょうね。それとも、エルフなら人間より早く習得出来るのでしょうか?
「さて、体も暖まってきたし、練習を再開しようか!」
その後も、失敗も繰り返しながら、延々と練習を続け、体が冷えたら、休憩を挟み、日が暮れる前に町へと戻った。
「あぁ、疲れたわね。でも、終わりの方は、結構、バランス取れてたし、言ってるうちに氷魔法も得意になりそうね。」
「ありがとうございます。ララノアさんの教え方が上手だからですわ。」
「もう、ミストちゃんの努力と才能よ。私、ほとんど横から見て、口だしてるだけだもん。」
会話をしながら、宿の1階で夕食を食べており、今日の練習で、魔力を均等にそれぞれの手から出せる確率が少し上がりました。これを続けて、氷魔法を使えるようになるなら、私、毎日、頑張ります!
「あ、そう言えば、アルベルトさんはどこへ行かれたんでしょうか?昨日の朝から見てませんわ。」
「あぁ...しばらく帰って来ないかな~ちょっとこの辺り(大陸全土)を一周してくるらしいから。」
そうなのですか?この辺り(領都周辺)を回るなら、1週間程でしょうか?
「そうなのですか、では、しばらくララノアさんと2人ですわね。」
「うん、ソウデスネ.....」
何だか、ララノアさんが気不味そうな表情で目線を反らしながら、片言で話されている気がしますが、よくわからないので、気にしないことに致します。
「さて、じゃあ、今日もよく動いたし、早く寝て、明日に備えようか!朝は走り込みをして、それから、魔法の練習ね!」
「はい!明日からもよろしくお願いいたします!」
それから、1週間ほど朝起きて、朝食前に走り込みをしてから、朝食を食べ、森の泉の辺りで魔法の練習をして、夕暮れ前に宿へ帰り、夕食を食べてから寝ると言う生活を続けていると、アルベルトさんが帰ってきました。何故か、やつれていて、ボロボロですが。
「...あぁ.....疲れた...二度とやりたくねぇ.....」
大陸を1週間ほどで一周してくると言う時点で、意味がわからないが、アルベルトには一周するくらいどうってことないのだが、一周する間に、戦場へ迷い混んでしまい、追いかけ回されたり、登っている山が噴火して、迫り来る土石流から逃げたり、おかしな原住民に「○○○ヨコセー!!!」と追いかけられ、危うく、女の子になりかけたりと、散々だった。
「あ、アルベルトさん、お久し振りでございますわ。お疲れのようですが、大丈夫でございますか?」
「ああ...ミストか.....元気にしてたか?...」
「はい。何とか復活いたしましたわ。」
「そうか...悪かったな、無理させちまってたみたいだ.....」
「いえ、お気になさらないでくださいまし。お陰で、体力は少し増えましたので。」
「そうか?...なら、良かった.....ちょっと、俺は、部屋で休ませてもらうぞ...もう、くたくただ.....」
「はい。ゆっくりお休みくださいまし。」
幽鬼のような様相で、部屋へとゆらゆら進んでいき、途中でアルベルトを見かけた他の客が「ぎゃぁぁあ!!!」と悲鳴をあげていた。




