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新たな教育係はエルフ

「えっと、つまり、アルベルトが護衛兼、教育してる新人の子が訓練が辛くて、引きこもったってことなのかな?」


「まあ、そう言うことだ。」


相談してるのは、俺の先輩冒険者であり、何かと世話を焼いてくれるララノアというエルフの冒険者だ。歳は聞いたことあるが、無言の笑みを向けてきて、氷漬けにされたため、何歳かは知らないが、少なくとも、100歳は越えてるはずだ。

そして、俺は、ララノアにミストの事を話し、どうしたらいいか、どれくらいの訓練量が良いのか相談した。

ララノアは、たくさんの新人冒険者を教育してきたから、きっとこう言うことは詳しいはずだ。


「うーん、どんな訓練内容か具体的に聞いてもいいかな?」


本当なら他人の訓練内容を聞くのは、御法度だ。訓練の仕方一つでも、その者の知識であり、財産であるため、聞くことは本来、してはいけないことなのだ。まあ、俺は気にせんが。


「クラフト魔法が使えるから、午前中はクラフト系の依頼をさせて、午後からマラソンや素振をさせてる.....」


「.....え?それだけ?」


「ああ、それだけだ。」


「あ、時間とか回数は?」


「ん?勿論、気絶して倒れるまでだ。」


バコン!


「ぐふぇ!」


満面の笑みを浮かべたララノアに、魔法で出来た氷塊を投げつけられた。鎧がへこんでんじゃねぇか!殺すきか!


「ねぇ、馬鹿なの?死ぬの?か弱い女の子になにさせてんの?ねえ?」


怖ぇよ!怖ぇよ!周りに氷の杭なんか浮かべんな!そして、それをこっちに向けんな!うぉ!撃つな!


「止めろぉ!理由を教えろ!何が悪かったんだ!」


「へ~分かんないんだぁ~へ~」


うぉ!また飛んできた!止めろぉ!


その後、ララノアの攻撃を避け続け、ギルド内が氷で覆われるまで続いた。





「で、わかった?」


「すみません。分かりません。ですから、教えてください。お願いします。」


土下座でララノアにとにかく謝り、ララノアは笑顔を崩すと、「はぁ...」と溜め息をついて、元の表情に戻った。


「要するにね、気絶して倒れるまでさせるのが問題なのよ。そんなことしたら、体力つく前に死んじゃうわよ。」


なん...だと.....俺の時はもっと厳しかったぞ?それこそ、1週間、延々と素振りしたり、大陸を一周してこいとか言われたぞ?


「あ、因みに、アルベルトの時は、死ねばいいのにって思ってたから、思い付いたことさせてたの♪」


「おいこら!殺すつもりだったのか!?」


「だって、私の下着盗もうとしたり、胸揉もうとしたり、鬱陶しかったんだもの。」


うっ...そう言われると、反論が出来ない.....


「はぁ...あなたにその子を任せるのは危険ね。仕方がないから、私がその子の教育してあげる。」


「ん?、いいのか?今、どっかのパーティー所属してるんだろ?」


「え?この間、夜這いしてきたから、絞めて町の外に晒したわ。」


...何とも言えねぇ.....


「と言うことで、よろしくね~」


こうして、ミストの知らないところで新たなパーティーメンバーが増えることになった。






・ミスト視点

...朝食を食べてから、ベッドで休んでますが、何だか、私が駄々をこねて訓練をサボってるような気分になってきましたわ...でも、あの訓練はどんな人でもついていけないと思うの...だから、駄々をこねてるわけじゃ...ない....はず......


コンコン

「ミスト、いるか?もし、良かったら会って欲しい人が居るんだが、良いだろうか?」


会って欲しい人?誰でしょうか。取り合えず、返事をしないと。


「はい。今、扉を開けます。」


扉を開けると、何だか、気不味そうな顔をしたアルベルトさんと、金髪に緑色の瞳をした垂れ目気味の、綺麗な人がいます。あれ?この女の人、エルフですね。


「初めまして。あなたが、ミストちゃんね?私、Aランク冒険者のララノアって言うの。ちょっと、アルベルトから相談を受けて、あなたの新しい教育係になりました。パーティーにも入るから、これからよろしくね♪」


え?相談?もしかして、私が引きこもったことを相談されたのでしょうか?!何だか、恥ずかしいです...それに、アルベルトさんが相談するほど困らせてしまったなんて...何だか、申し訳ないです.....


「あ、言っておくけど、ミストちゃんは何にも悪くないからね?明らかにアルベルトの訓練方法がおかしいだけだから。」


あ、やっぱり、そうなんですか。


「私は新人の教育をしたことも多いから、安心してついてきてね!これからよろしく!」


「こちらこそ、よろしくお願いいたしますわ!」


ララノアさんと握手を交わし、その横でホッと安心するアルベルトさんだった。

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