ドレスアーマーと鬼畜なマラソン
あれから、宿に戻りまして、クラフティングテーブルを前に、私は悩んでいました。
まず、クラフト魔法で作る物は、なにも考えずに作ると、デフォルトのデザインで出来上がりますが、デザインのイメージを明確に思い浮かべれば、好きなデザインで作ることが出来ます。
なので、私は折角の高級な革なので、デザインをしっかり考えて作ることにしたのですが、まだデザインが浮かびません。
出来れば、長く使いたいですし、これから北へと活動拠点を移すこともあるでしょうから、防具兼防寒具にもしたいですから、後から鉄の部分鎧をつけれるデザインが良いですね。
「ん~」
「まあ、時間はいくらでもあるから、悩んでも良いが、どうせならドレスアーマーみたいにしたらどうだ?見栄えもいいし、ミストの性格や雰囲気に丁度、良いだろ。」
なるほど、ドレスアーマーですか。では、そうしましょう。
結局、悩んだ末、デザインはドレスアーマーにして、ちょっと調子にのって腰マント付きにしました。個人的には満足のいく出来ですが、折角なので、染色もして、茶色の革を、一部白く染色しました。
「どうですか?似合いますか?」
「まあ、革だけで作ったにしては良いんじゃねぇか?普通は金属を部分的に使うからな。将来的に金属の部分鎧つけるなら、それくらいが丁度、良いだろ。」
はい、合格点を頂きました。流石に布のドレスよりは重いですが、動きに影響はありませんね。実用性も抜群です!
「私も自分で言うのも何ですが、非常に満足いく出来だと思いますわ。」
「まあ、今回も例に漏れず、明らかに王族が身に付けててもおかしくないくらいに質は良いからな。これで、後々、金属の部分鎧が追加されると思うと、先が思いやられるな。」
毎度の事ながら、理不尽です!
「さて、じゃあ、軽く魔物退治にでも行ってみるか。ミストも新しい防具に馴れた方が良いしな。あと、金属の部分鎧をつけるなら、今の筋力じゃ動けんだろ?」
うっ...確かに、この革鎧ですら、1日、着ていたら筋肉痛になりそうですね。貴族の令嬢としては、鍛えている方だとは思うのですが、本職の方々には敵いませんか...
準備を終えると、大人しくアルベルトさんと共に森へと向かいますが、その前に、手前の平原で軽く運動をしようということになりました。
「まず、ミスト。どれくらい体力があるか測らせろ。具体的には、この辺りを倒れるまでマラソンだ。」
「え!?倒れるまでですの!?」
「ああ、限界を見させてもらう。」
「で、ですが、それでは、魔物退治は...」
「それは、俺の気まぐれで中止する。お前の体力とか身体能力を確認する方が先だ。」
え...そんな適当で良いんですの?
「ほら、ここに線引いてやるから、ここから、あそこの岩とあっちの岩の間を、鎧着たまんま倒れるまで走ってこい。しんどいとか苦しいで足止めんじゃねぇぞ。正真正銘、気絶するまで走ってこい。」
鬼畜ですわ!鬼です!断固、抗議いた...ごめんなさい!すぐ走りますから、そんな怖い顔で見ないでくださいまし!
結局、鬼のような恐ろしい顔で、足がプルプルと痙攣して、冷や汗が全身から溢れ出て、汗だくになり、意識も朦朧になり、倒れるまで延々と走らされました。確実に明日は立てません。こんにちわ、ベッドでの生活ですわ...
翌朝、案の定、足が筋肉痛でパンパンです。はい、歩けません。立てません。座れません。こんにちわ、ベッドさんですわ。
「うぅ~...」
「まあ、思ってたよりは体力はあったな。あと、走る早さは並外れた俊足だな...前半だけだったが。ただ、やはり体力が足らんな。明日から...いや、足が治ってからでいいか。治ったら、しばらくは午前中にクラフト系の依頼を受けて、午後からは体力作りと身体能力の把握だな。」
「うぅ~全身が痛いです...」
「そのうち慣れる。体力がつけば、問題ない。」
それは、どうなのでしょう?限界まで走らされるような事をこれから、毎日、させられるなら、私、体力がつく前に生命力を使い果たしてしまいそうですわ。
「じゃ、今日は1日、休養日にするとして、この宿ならミストに手を出そうとするような奴は手を出せないし、俺はちょっと飲みにでもいってくるかな。」
「...昼から...お酒ですか?.....感心できませんわ...」
「これでも、ミストと会ってから飲んでない方なんだぞ?ミストと会うまで最近は毎日、朝から晩まで飲んでたんだからな。」
それは、自慢にはなりません。駄目な人間の典型でございます!
結局、飲み過ぎないよう言い、出掛けていくアルベルトさんを、見送ることしか出来なかった。
だって、筋肉痛で全身が痛いんですもの...止める手段が無い私に、責任はありませんわ...ありませんわよね?




