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俺と魔法と超能力と  作者: 緑川もまこ
第一章 中学
7/10

幼馴染みと恩返しと決意と

「はあ!?」

「朝からうるさい」


 条青第三中学3-1の教室の隅で、朝のHR前に一人の男子生徒が叫んだ。


「おまっ…緑峯行くん!??」

「そうだってさっきから言ってんじゃねーか」


 その男子生徒の言葉を面倒くさそうに流しているのは、相澤裕樹。


「だってあそこ…一般入試の受け付けはしてない超レア高だぜ? そんな学校に裕樹が? ありえねぇ…」


 ありえない、と言われたことに裕樹は腹が立った。


「へーへー別に俺なんて何の才能もない凡人ですよーだ」


 その様子を見て幼馴染み_安良岡凪叶(やすらおかなぎと)_は少し焦った。


「べっ…別にそんなこと言ってねーよ! 何の才能もないって、自分のこと下に見すぎ! …お前、昔から剣だけは頑張ってんじゃん」


 にこやかに笑った彼に対し、裕樹はボソッと言った。


「……イケメンの無駄遣い」

「どういう意味だゴラ」


 凪叶の額には青筋が浮き、眉間にはシワがよっていた。声もワントーン低い。


「そのままの意味だよ」


 挑発するように、裕樹は鼻で笑う。


「ちっ…なんでこんな奴が招待状受け取ったんだか。どーせなら、俺に来りゃァ良かったんによ」

「無理だろ」

「即答の一刀両断かよ」


 はぁ、と溜息をこぼす凪叶の表情は、行動と真反対で笑みが浮かんでいた。


「まぁでも良かったわ。お前の才能も、漸く出番が来たらしいな」


 凪叶の意味深な言葉に、裕樹は頭上にはてなを浮かべる。


「どういう意味だよ、それ___」

「はよー、お前ら席つけー」


 裕樹が問いただそうとした時、タイミング悪く先生が入ってきた。


「相澤ー、HR始めっから自分の席戻れな。愛しの安良岡とは後で楽しく話してろー」

「せんせー、俺、あんな奴の愛しのヤローになりたくないでーす」

「…安良岡、そう言いながらもお前…相澤のことが…」


 教師と生徒のちょっとしたコント。

 だんだん危なくなってきたので、席に戻った裕樹は突っ込んだ。


「いや先生、どーでもいいからHR始めろよ」

「おい相澤、タメ口やめろ」


 場が和んだところで、学級委員が司会のもと、朝のHRが始まった。



 HRの間、裕樹は考えていた。

 もしかしたら、凪叶は_____この刀のこと、先祖のこと…すべて知っているのではないか、と。

 家族以外に俺の過去を知っている…親父のことを知っているのは凪叶だけ。昨日あったことを知っていてもおかしくはないのではないかと…。


 その考えを振り切るかのように、裕樹は首を横に振った。

 だが、やはり不安なのだろう。そっと、指で竹刀袋の上から黒吹雪を撫でた。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「なぁ、さっきのどういう意味だ?」

「ん? さっきのって?」


 昼休み、裕樹達は食堂で昼ご飯を食べていた。

 条三中は、自由な校則なので、お昼は自由に友達と食べていい。放送委員は、昼の放送があるので少し無理があるが、それでもその他の生徒は、各々、適当な場所で食べている。

 多くの生徒は、裕樹達のように食堂に来ることが多い。

 安く、品揃えも良いので、好評なのだ。


 裕樹は、母が朝作ってくれる弁当を食べ、凪叶は、いつも饂飩を食べている。

 裕樹も、最初は飽きないのかと不思議に思ったが、時間が経てば慣れてしまい、なんとも思わなくなった。


「俺の才能がなんとかーって言ってたじゃねーか」


 ズズっと箸で掴んだ饂飩を啜り、2、3回噛んでから、飲み込んだ。


「ああ、そのことか。

 確か…緑峯は"特別な者"しか入れないんだったよな?」


 裕樹は頷く。


「てことは、お前の剣の才能が認められて、強い学校に招待されたって考えれば、俺にとっちゃ嬉しいわけよ」


 また、箸で饂飩を掴み、啜り、2、3回噛んでから、飲み込む。

 その箸で、裕樹をビッと指した。


「幼馴染みの出世を喜ばない幼馴染みが何処にいる」


 裕樹は嬉しくなった。

 心の中では、不安だったのだ。


 バレる、とかじゃない。

 ただただ、知らない学校に行き、"特別な者"が何か分からないまま行くのは怖かった。不安だった。恐れを感じた。


 幼馴染みの一言は裕樹の胸に広がり、味方がいると、助けてくれる者がここに居ると教えてくれた。

 その事が純粋に嬉しかったのだ。


「…ん、ありがと」


 素っ気なく感謝を言ったが、何年も隣にいる幼馴染みは分かっていたようで、


「照れんなよ。…つか、お前が照れると怖いわ。明日槍でも降りそうだな」


 ヘラヘラと笑いながら、冗談を言った。

 その笑顔が、裕樹にとって掛け替えのないものだと、改めて実感した。


 更に、裕樹は考える。

 今まで気付かなかっただけで、こいつは…凪叶はいつでも隣にいてくれた。

 辛くても、嬉しくても、悲しくても、楽しくても…喜怒哀楽を共にした、大切な幼馴染みであり親友なんだ。


 そんな思いを胸に、裕樹は決意した。





 俺は護ろう。俺を支えてくれた全ての人を。

 これから出会う、全ての人を。


 これからは、恩返しの時間だ。

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