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俺と魔法と超能力と  作者: 緑川もまこ
第一章 中学
4/10

地下室と封印と刀と

 緑峯学園について調べ終わった裕樹が道場へ戻ると、祖父が目を瞑って、正座で座り、裕樹のことを待っていた。


「ただいま」


 裕樹は、祖父に声をかける。祖父は、片目を開け、裕樹に問う。


「調べ事は済んだか」


 その問に、裕樹は肯定の意を表した。


「済んだよ。で、渡したいものってなに?」


 祖父は、着いてこいとでも言わんばかりに、立ち上がり、右奥の壁へと向かった。

 彼は、徐に、手を壁に当てた。すると、今までなかった扉が開いた。


「っ…なんだ…これは…!?」


 裕樹の表情は困惑に染まっている。


「はようせい」


 裕樹とは対照的に、祖父は驚くのも仕方ないと言った表情だ。

 祖父のその言葉に我に帰った裕樹は、驚きながらも祖父に続く。

 螺旋階段状になった暗い階段を、ただただ下っていく。

 どこまで続くのだろうかと裕樹は不安になる。


「じいちゃん、どこまで続くんだ?」


 祖父からの返事はなかった。

 何処からか取り出した蝋燭を片手に階段を下っていく祖父の後を、着いていくだけしか出来ない裕樹。

 引き返そうと思っても、暗くて足元が見えない。これでは、逆に危険だ。

 大人しく着いていくことにした。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 どれくらいの時間が経っただろうか。

 ようやく着いたその空間は、文字通り"無"だった。

 真っ白な部屋。

 暗いところから一変。真っ暗な階段にいた裕樹にとって、そこはとても眩しい所だった。


「なにここ…」


 ぼそっと呟かれたその言葉さえ、この部屋では響いてしまう。まるで反響板でもあるかのように。

 今までずっと口を閉じていた祖父が、裕樹の疑問に答えた。


「…ここは、封印の間じゃ」


 "封印の間"と呼ばれるそこは、何もなさすぎて、何を封印しているのかがわからない。


「封印…?」


 思わず聞き返すと、祖父がこういった。


「そうじゃ。

 よーく真ん中を見てみろ」


 部屋の真ん中に目を凝らすと、そこには────


「か…刀?」


 白い鎖が巻かれた刀が、これまた白い台の上にあった。恐らく、白で目があまり見えなかったのだろう。


「あの刀は、儂らの家系に伝わる伝説の刀じゃ」


 ここで裕樹が思ったこと、それは、“なにこのテンプレすぎる展開!!?”だ。

 因みに言っておこう。裕樹はある意味、人との思考が違う。

 普通の人なら、“伝説の刀だと…!?”と驚きと男の血が騒ぐはずだ。

 もしくは“まさか…これを俺に…!?”と考えた末、厨二病が爆発するパターンか。

 後者も大概だが、裕樹は、“美味しすぎる設定”又は“平凡でいたいです”としか考えられない。


 なんと勿体ないのだろうか。

 普通なら驚くこの場面で、テンプレと考える裕樹は、残念でしかない。オタクではないのだが、周りにそういう人がいるためだ。


「あの刀がなぜ封印されているかわかるか?」


 祖父が聞く。

 いや、その刀の存在を初めて知った俺にわかるわけねーだろ!! とツッコミたくなった裕樹だが、そこは抑え、首を横に振る。


「…巨大すぎる力故じゃ」


 悲しそうな目で、祖父は刀を見つめる。


「あの刀は、誰もが欲しがるような力が入っている。

 所謂、妖刀というものじゃ。そんな物が世に出回ったら、それこそ世界の終わりというもの。

 じゃから、儂らの先祖、真木鱗之介(さなきりんのすけ)が封印したのじゃ」


 真木麟之助は、裕樹達の先祖であり、また、今で言う“特別な者”だった。

 裕樹には、その名前が聞き覚えがあった。


「……勉学、体術、昔は盛んだった封印術…全てにおいて右に出る者はいないと呼ばれた天才術師」


 幼き頃、父から教えられたことだ。そのことを知らない祖父は、驚く。


「よく知っておるのう。

 そうじゃ。真木麟之介は、大昔、術師であったら誰もが憧れる存在だった。

 儂らの先祖は、"その"天才術師じゃ」


 裕樹は、聞いたことがなかった。自分の先祖のことを。

 思い返してみれば、父に真木麟之助について、沢山教えられた。裕樹は、何故ずっと覚えさせられたのか納得ができた。


「…で、俺にどうしろと?」


 裕樹は本題に切り出す。


「あの刀を継承して欲しい。

「……は?」


(何を言っているんだこの人は)

 そう考えてしまった裕樹は悪くないだろう。誰でも思うことだ。


「つべこべ言わず、触らんかい!!」


 ドンッと背中蹴られ、前のめりになる裕樹。気が付いたら、刀が目の前にあった。

 刀は、この白い部屋に合わない真っ黒だった。さっきは、白の光で上手く色が見えなかったのであろう。

 そんなことを考えていると、後ろから殺気の様なものを感じたので、渋々刀に触れる。



 目の前が刀の色と同じ真っ黒に染まった。

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