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俺と魔法と超能力と  作者: 緑川もまこ
第一章 中学
2/10

高校と推薦状と不安と

(高校どこにしよう、俺)

 授業を聞き流しながら、裕樹は進路について考えた。

 結局、その話題に落ち着いてしまうのが中学三年生という年頃。

 裕樹は、高校でやりたいことを考えてみた。

(剣道は続けたいし…剣道部に入りたいってわけじゃないけど、大会には出てみてぇんだよなぁ…)


 剣道部を選ぶか、知っている奴らを選ぶか、そう考えていた。条高にも条総にも、剣道部はなかった。条三中の剣道部は、設備の整った私立に行くか、剣道部のある都立に行くかだろう。最も、この辺りには剣道部の強い高校が一校もないのだが。


(どうせ、ここに通ってる奴ら、だいたいそっちに行くんだろうし…)


 ヘタレである彼は、どうやら新たな友達を作る、というのが面倒なようだ。中学までは学区制なので、小学校の頃からのいつメンがいるのだが、高校だと訳が違う。みな、将来の夢のため、高校でやりたいことのために高校を選ぶ。

 この前だって、その説明のための進路説明会なるものが開かれたくらいだ。いよいよ、本格的に考える時期がやってきたのだ。


 そんなことを考えていると、裕樹は当てられた。

「おい、相澤。この問題答えてみろ」


 聞いていなかった裕樹は、わかるはずもない。


「…聞いてませんでした」


 と、こう言うしかないのだ。正直に言ったからと言って、それで許す教師はいないだろう。


「立ってろ」

「…はい」


 バケツを持たされ、廊下に立たされるのは体罰とされている。都内でも田舎なこの学校では、流石にそこまでは行かないものの、教室の後ろに立たされることが時々ある。

 裕樹も結局、後ろに立たされた。

 教室の後ろ、つまり、見られるわけで…クラスメイトに笑いものにされている裕樹だった。


 今は六限目。国語の授業だ。

 (学校終わったら気晴らしに、道場行くか)

 懲りずに授業も聞かず、これからの予定を考えていた。



 ~~〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 下校し、玄関を開ける。

「ただいま」


 パタパタと、母のスリッパを引きずる音が聞こえてくる。母は時々せっかちなのだ。


「おかえりなさい。今日は早かったのね」


 何をしていたのだろうか。母の手には、2本の鋏があった。裁縫用の鋏というところから、なんとなくは予想ができるが、裁縫用の鋏といえば大きい。普通に危ない。

 しかし、裕樹はごく当たり前かのように靴を脱ぎ、その靴を揃え、家に上がる。


「うん。道着に着替えて、道場行くわ。

 あと、母さん。鋏を持って、家の中歩き回るな」


 呆れたようなため息混じりの声で、いつもの事のように、ごく自然と注意した。

 母はしょんぼりとした。まるで、怒られたあとの子供のように。事実怒られていたのだが、これではまるっきり立場が逆転している。


「ごめんなさい…。鋏は、ちゃんと戻しておくわ。

 それで、何時ごろに帰ってくるの?」

「夕飯前には帰ってくるよ」


 そう母に言いながら、裕樹は二階にある自分の部屋に向かう。


 ドアノブに手をかけ、腕を捻ると簡単にドアは開く。ごく当たり前のことだ。


 ─────ガチャ…バタン


 ドアを閉めて着替えようとすると、自分の勉強机の上になにかあるのを見つけた。

 それを手に取って、観察してみる。


「手紙…か? でも、切手が無いな」


 表には【相澤裕樹様】と書かれており、裕樹の言う通り、あるはずの切手がなかった。裏に返してみると、普通なら書いてあるはずの差出人がそこにはない。

(…ないものだらけだな)

 心の中で苦笑し、恐る恐る開封してみると、一枚のカードと、手紙があった。


 裕樹は、その手紙を読んでみた。

「えっと、なになに…?



『御目出度う御座います。


 貴方様は、当選いたしました。


 同封されているそのカードは、部屋のカードキーとなっております。


 又、そこにお金の変わりであるエルドが入っております。

 それは、学園内でしか使えません。


 日本円は学園内では、使えません。

 ご注意ください。



 尚、これはただのご招待ですので、断ることも可能です。

 ご両親と、よく話し合ってから決めてください。




 緑峯学園理事長、緑峯栄』



 ………緑峯学園? どこだそこ」



 心の奥で疑問に思いながら、裕樹は道着に着替えた。

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