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俺と魔法と超能力と  作者: 緑川もまこ
第一章 中学
1/10

日常と家族と学校と

 ブンッ


「…199」


 ────時は早朝。

 竹刀のしなる音とそれに合わせ、数を数える青年の声がする。


 ブンッ


「200!……朝の素振り終わり!」


 青年は満足げに頬を緩ませる。

 丁度、素振りが終わったところで声がかかった。


「裕樹〜ご飯よ〜」


 裕樹、そう呼ばれた少年は、タオルで汗を拭き、母親がいるであろう台所に向かって言う。


「今行くよ!  母さん!」


 裕樹は、幼い頃から剣道をやっていて、朝、素振りを200回する。それが日課だ。

 今まで一度も欠かしたことがない。雨の日は、竹刀が振れないので、何故か小刀を模した木の棒で、素振りをしている。裕樹にも理由はわからない。



 庭からリビングに繋がる窓を通り、家の中へ入る。

 食卓の上には、白米、味噌汁、漬物、焼き魚、納豆と和が並んでいた。

 自分の席に座ると、手を合わせ、いつものあれを言う。


「いただきます」


 日本人としては、この礼儀は欠かせない。

 お茶碗を左手で持ち、箸を右手で握り、一掴みして口に入れる咀嚼する。

(今日も母さんのご飯は美味いな)


 朝ご飯を食べながら、裕樹はそう考えていた。

 母の味というものは、どこの家庭にもあるもので、裕樹もそれは自慢だった。


 裕樹の素振りが終わったら、彼の母が作る朝食を、家族全員で食べる。家のルールというものだ。


 食べている途中に、母が裕樹に話しかけた。


「裕樹、あんた高校どうすんの?」


 裕樹は帰宅部だ。正確に言えば、無所属。

 元々勉強もそんなに得意なわけでもなし。別段、剣道以外のスポーツが出来るわけでもなし。ぶっちゃけ、剣道以外平々凡々な裕樹は学校の中でも目立たない存在だ。


 心の中でそう思いながらも、母には何も言えないのだ。


「なんとかなるよ。………ごちそうさま」


 裕樹は、朝食をなるべく早く食べる。

 理由は、シャワーを浴び、着替えなくてはならないからだ。まぁ、今日はあの空気にいるのが苦だっただけなのだが。


 裕樹がシャワーを浴びている間、母はお弁当箱に、おかずとご飯をつめる。育ち盛りである裕樹のために、バランスを考えたお弁当だ。


 彼はシャワーから上がると、髪を乾かし、制服に着替え、鞄と弁当を持ち、学校に行く。


「行ってきます」


 もちろん、挨拶は忘れずに、だ。


 条青第三中学校、3年1組。出席番号1番、相澤裕樹。


 それが裕樹の学校での立ち位置である。

 部活は、先にも述べた通り、剣道部ではなく、帰宅部。


 一年の初めは剣道部に所属していたが、レベルが低すぎて退部。ある程度のメンツが決まったため、今更割り込んでいくのも…とヘタレを見事に発揮し、そのまま無所属となった。


「はよ、裕樹」

「おはよう、相澤君!」

「ああ、おはよう」


 条三中前にある坂道で、大体の条三中生と会う。

 クラスメイトは、気さくな人ばかりなので、裕樹にも挨拶をしてくれる。裕樹も忘れずに返答する。ヘタレなので、自分からすることはないのだが。

 裕樹は、その人たちと共に、数分間の間だが、楽しく話しながら学校へ行く。


 その途中、中三であるためか話題は高校の話になった。

「なぁ、裕樹」

「なんだ?」

「高校、どうすんだよ」


 裕樹は、またその話かと、嫌になった。

 不服そうな顔を見せながらも、質問にはきちんと答える。


「流石に中卒はきついからな。受験はする。併願は決まってねぇから、落ちたら落ちたでその時だ。ワンチャン、二次募集とかあると思うし」

「二次募集って」


 裕樹と話している彼は、半笑いで返した。


「んで、そういうお前はどうなんだ?」

「まー、俺は一応条高だな。」

「多分俺もそっちだな。行きてぇ高校ねぇし。偏差値的にも問題ねぇから」



 条青高校、通称条高。

 条青第三中学校卒業生が、多数行く高校だ。偏差値は52。だいたい平均だ。


 夢が決まってない人がそちらへ行くか偏差値が足りなければ条青総合高校。ちなみに、条青総合高校、通称条総は偏差値が大学進学コースで55、総合進学コースで48とまぁまぁなところである。

 特にこれといって夢がない裕樹は、条高か条総の大進コースに行くだろうと考えている。

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