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さまよえる聖エルフ  作者: ハイエルフスキー
第三章 空の聖エルフ
50/91

50 聖エルフ、天馬をもらう

「ありがとうねー、また乗せてねー」


 神殿の前で天馬から飛び降り、栗毛の子の首筋をわしゃわしゃとなでた。


 ――ふふっ、やっぱり天馬に乗るとあっというまだね。そうだ、もらえる天馬ってどの子なのかな?


「ねえ、わたしがもらえる……」


 神口の聖エルフに尋ねようとしたとき、突然、青いかたまりが突っ込んできた。


 青いかたまりはぶつかる直前でなんとか踏みとどまり、わたしの顔にぐいぐい鼻を押しつけてきた。


「ちょっとー! なんなのー! この青いのー!」


 あまりに突然の出来事に気が動転して、その子を盾ではじき飛ばし、一歩下がって距離をとった。


 はじき飛ばされた衝撃で転がった青い子は、それでもめげずに立ち上がって、わたしに跳びかかってきた。


 さっきまで乗っていた栗毛の子が割って入り、青い子を盾ではじき飛ばす。


 青い子はふらふらとよろめいたが、青い目をキッと見開き、栗毛の子に跳びかかる素振りをみせた。


 身構えた栗毛の子の前で、鋭く身を躍らせて、わたしを栗毛の子との間にはさみ込んだ。


 そして、またもやわたしに向かって体当たりしてきた。


 ――もー、何なの、この子? うん? 八本脚ということは天馬?


 あれっ? でも、光ってないよね、この子。


 ということは、天馬じゃないのかな?


 わたしは盾ではじかないように気をつけながら、青い子の鼻先に手のひらをかかげて受けとめた。


 青い子はわたしの手に鼻を押しあて、くりっとした青い目を輝かせて、盾をベロベロとなめ始めた。


 ――うん? わたしに襲いかかってるわけじゃないんだ。


 栗毛の子がその隙をついて、青い子に一気に近づいて後ろ脚で蹴り飛ばそうとした。


 ――あっ! あぶないっ!


 思わず青い子を盾で包んで、栗毛の子の蹴りの衝撃を吸収した。


 青い子はその瞬間、盾の中ですべるように動き、わたしを背中の上に乗せて空に舞いあがった。


 青い子は一気に加速して、追って来る栗毛の子をぐんぐん引き離す。


 ――速いね、この子。今までに乗った天馬よりはるかに速い。


 それに、わたしに跳びかかってきたときには輝いてなかったのに、今はまぶしいほどキラキラ輝いてる。


 あっというまに、聖樹様のすぐそばまでたどり着いた青い子は、急に体を反転させ、もと来たほうに向かって一気に加速した。


 追ってきた栗毛の子があわてて方向を変えて逃げていこうとする。


 青い子はあっというまに栗毛の子に追いつき、首筋に噛みつこうとした。


「だめー! 噛んじゃダメだよ!」


 わたしは大慌てで青い子の首をぎゅっと抱えて、大声で叫んだ。


 青い子はくりっとした青い目でわたしを見て、栗毛の子から離れて神殿のほうに向かった。


 落ち着きを取り戻したのか、ゆったりとした余裕のある足運びで空を翔け始めた。


 そして、聖樹様の慈愛をまとう盾いっぱいに浴びてキラキラと輝きながら、神口の聖エルフのすぐそばに優雅に着地した。


「さすがは空の聖エルフだね。天馬をあげると言ったら、さっそく天馬から熱烈な求愛を受けるとはね。うらやましいかぎりだよ」


 青い子に乗ったわたしを、神口の聖エルフがおおげさに両手を広げて、讃えるように見あげた。


「この青い子ってやっぱり天馬だよね。光って見えなかったから、はじめは何が突っ込んできたか分からなかったよ」


 神口の聖エルフは、すぐそばにひざまずいている、緑の服を着た世話係のエルフさんに視線を送った。


「申し訳ございませんでした、空の聖エルフ様。その天馬はアオといいまして、ふだんはとてもおとなしく、どちらかといえば臆病な性格なのです。しかしながら、さきほど空の聖エルフ様を見かけたとたんに暴れ始めまして、厩舎の入り口を蹴破って逃げ出したのです」


 ――アオって言うんだ。うーん、わたしの髪と瞳も青いから、仲間と思われたのかな?


「うん、そういうことなんだ。その天馬はね、きみのことを選んだというかね、きみじゃなきゃダメなんだよ。きみ以外には乗りこなせないし、その天馬はきみのことを離さないと思うよ」


 ――うん? どういうこと?


 小首をかしげたわたしに、世話係のエルフさんがおずおずと話し出した。


「アオはまとう盾があまりにも弱く、ほとんど飛ぶことができないのです。それで他の天馬からも仲間外れにされておりまして、いつも一頭でぽつんと過ごしているのです」


 わたしはキラキラと光り輝くアオの盾を見つめた。


「うん? この子、ものすごく輝いてるよね?」


 神口の聖エルフもまぶしそうにアオを見てうなずいた。


「うん、輝いているね。ただね、それはきみの盾の輝きであってね、その天馬が輝いているわけではないんだよ。その天馬がまとっている盾はほんのわずかなもので、自分だけでは満足に飛ぶこともできないんだ。天馬はエルフよりはるかに重いからね。飛ぶためには盾と風の壁を作るちからと脚力が必要なんだ。今までは気づかれなかったことだがね、その天馬はたぐいまれな脚力と風の壁を作るちからをもっているんだろうね。そこにきみのありえないほどの強さの盾が組み合わさって、さきほどのような驚異的な速さをみせたということだろうね」


 わたしはアオから飛び降りて、すこし離れてみた。


 さっきまで輝いていたアオのからだから光が消え、八本脚のちょっと変わった青い馬になった。


 アオがすり寄って来て、盾に入れて欲しそうに、頭をこすりつけてくる。


「うん、そういうことだね。そもそも天馬が聖エルフを乗せるのは、天馬にとっても自分を守るという意味合いがあるんだと思うよ。天馬の盾と聖エルフの盾が混じり合えば、はるかに速く飛ぶことができるし、防御という点でも強くなるからね。特にその青い天馬にとっては、きみはかけがえのない存在だろうね。うん、そうだね。奇しくもきみの髪や瞳と同じ色をしているしね。これも聖樹様の采配かもしれないね」


 アオを盾で包むと、とたんにアオは光り輝き、表情までも気高く満足そうに変化した。


「えーっと……それは、この子をわたしにくれるってこと?」


 アオの首筋をわしゃわしゃとなで、ワクワクしながら神口の聖エルフに尋ねた。


「うん、そうだね。約束だからね。その天馬はきみのものだよ」


 わたしはアオの首につかまって、ぎゅーっとほっぺたを押しつけた。


「よろしくね、アオ。これからはわたしとずーっと一緒だよ」


 アオは返事をするかのように、わたしの背中にゴシゴシと頭を押しつけた。

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