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魔法少女は死んだ  作者: 茶竹抹茶竹
1章・too hard to hard to me
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【2-2】

2-2



 上野に到着した逸賀灼‐いちか あらた‐と麻希‐まき‐は近くで車を降りると上野駅近くの地下駐車場に向かった。

 今回呼び出された理由。その駐車場で殺人事件が起きたのだという。

 現場の入り口は野次馬の人混みが出来ていた。舌打ち一つをして逸賀灼は麻希と一緒にそれを押し退けていく。入り口を封鎖している警察官にコートの胸ポケットからIDカードを取り出して突きつけるように見せる。警視庁公安部公安第六課規格外事象特殊捜査係‐けいしちょうこうあんぶこうあんだいろくかきかくがいじしょうとくしゅそうさがかり‐という文字があった。


「ガイソウの逸賀です」


 警察官に通して貰いながら逸賀灼は麻希を連れて中に入る。薄暗い地下駐車場には現場検証を行っている沢山の警察関係者が詰めていた。麻希が探していた人物を見つけて

逸賀灼の肩を叩く。逸賀灼が顔を向けると、向こうも同様に逸賀灼達に気が付いたようであった。

 白髪交じりの薄い髪。額には皺の跡がある。銀のフレームの丸眼鏡の向こうには鋭い瞳が覗く。背は低くビール腹が厚手のコート越しからでも分かった。

 そんな彼が公安六課の課長、稲墨弘之‐いなずみ ひろゆき‐であった。此処に逸賀灼と麻希を呼び出した人物でもある。


「やっと来たか。遅いぞ、逸賀」

「ちっとは痩せてくださいよ、おっさん」


 逸賀灼は舌打ちした。麻希が苦笑すると逸賀灼はコートのポケットに両手を突っ込んで現場を一瞥すると、稲墨弘之に不機嫌そうに問いかける。


「で、これ。ガイソウに関係あるんですか?」


 警視庁公安部公安第六課規格外事象特殊捜査係。通称「ガイソウ」。

 公安部公安第六課は通常捜査だけでは対処の出来ない、政治、宗教、思想等が絡んだ特殊な事件を扱う部署として位置づけられ設立された。その中でも殊更特殊な部署である警視庁公安部公安第六課規格外事象特殊捜査係、規格外の「外」と捜査係の「捜」を取ってガイソウと略されるそこは、他部署では捜査困難とされた事件が回されてくる。物理的に不可能であると判断された場合や、証拠証言があまりにも不足している場合等である。

 そして。先日のカフトワンダー譲渡の阻止に動いたように、秘密裏に魔法絡みの件を追うのがこのガイソウであった。



【2枚目・かつて否定した存在】



「関係がありそうだから呼んでいる」


 ガイソウの捜査管轄なのかを聞いた逸賀灼の問いかけに稲墨弘之はそう答えた。通常の殺人事件であればガイソウに出番はない。

 現場は上野カプレビルの地下駐車場内。被害者の持っていたクレジットカードから身元が判明している。名前は芦ヶ場誠ーあしがじょう まことー、男性、年齢は34歳。現場写真から分かるほど身長が高く捜査資料には186センチとある。

 遺体は既に現場からは運び出されており、地面に被害者を縁取った白い線がテープで記されているだけであった。

 稲墨弘之が簡潔な捜査資料を読み上げる。

 死亡推定時刻は昨日の夜10時から12時の間。死因は大量出血によるショック死で、特に争った痕跡は無く背後から銃撃された形跡があった。上半身に二発、頭部に一発と銃弾を受けている。弾丸の貫通具合から5メートル以内から射撃されており、恐らく背後からの不意打ちであったと考えられた。体内から見つかった銃弾はいずれも9mmパラベラム弾で、現場に落ちていた薬莢は三つのみであった。

 銃が凶器に使われていると聞いて逸賀灼は腕組みして聞く。


「被害者の周囲の人間関係はどんな感じですか」

「調査中だ。暴力団関係ともあまり思えない」

「手際が良いですし、9mmパラベラムですか……」


 被害者の遺留品の写真を稲墨弘之は逸賀灼に見せた。アタッシュケースと財布に携帯電話、ハンカチ。スーツ姿で、脱いだコートを手に持っていたらしい。アタッシュケースの中は空であり、中身は奪われたと思われる。

 アタッシュケースは内部保護用のウレタンスポンジが入っており、くり抜かれた形状から大判の書籍位の物が入っていたようだった。スーツのポケットの中にあった財布の中身はクレジットカードや現金は残っており手付かずの様であった。

 写真を見て逸賀灼は何か思い付いた様に駐車場を見渡す。そしてもう一度遺留品の写真を一瞥して言った。


「この地下駐車場で誰かと待ち合わせていた被害者は、突然の背後からの銃撃を受けた。そして死亡した。恐らく被害者は、その待ち合わせていた相手にアタッシュケースの中身を渡す手筈だったんでしょう」

「被害者は誰かと待ち合わせていたんですの?」


 逸賀灼の断言した物言いに麻希が呆けた声で問い返す。逸賀灼が麻希に問いかける。


「地下駐車場とは何をするとこですか」

「車を置くとこですわ」

「遺留品に車のキーがないんです」


 逸賀灼は稲墨弘之の持っている遺留品の写真を指さした。


「遺留品の中に車の鍵がないですし、それにコートを脱いだまま手で持ってきてます。車で来たならコートは車内に置いてくると思いませんか。

 被害者は徒歩で此処まで来たんですよ。わざわざ地下駐車場なんていう徒歩で来る必要が無い場所に。少なくとも此処で誰かと会おうとしていたのは間違いないと思います」

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