【13-4】
13-4
ずっと心の何処かに押し込めて、納得したフリをしてきたこと。
私が祐希奈と初めて出会った時、カフトワンダーは起動しなかった。調整がうまく行っていなかった故に初期起動に失敗した。起動に必要な最低限の魔力を確保できなかったせいであった。
魔力不足で起動しないカフトワンダーを見た時に祐希奈は解決する術は無い、と言っていた。なぜなら、祐希奈には魔力が無いから。そう彼女は言っていたのだ。
だが、それには疑念が残った。カフトワンダーが生み出す魔力の光、あれは祐希奈がカフトワンダーを空間から呼び出すときに見せた光と同じだった。
カフトワンダーの起動、そして召還。何もない空間からカフトワンダーを呼び出すなんて芸当。それらは魔法でなければ不可能であろう。少なくとも、現代の科学技術では。
「それを可能に出来るのは」
自分は機関ミズガルズで造られたと祐希奈は言っていた。そういう存在であるのだと。機関ミズガルズの製造したカフトワンダーを所有し、その引き渡しの際に祐希奈は同伴していた。というよりもカフトワンダーの所持は祐希奈にしか出来なかったのかもしれない。
今まで不思議に思ってきながらも、問い詰めなかったこと。自分の中の何処かで勝手に決着をつけてしまっていたこと。
最初に祐希奈は自分に魔力が無いと言った。何故、彼女は迷わずに、あの一瞬で私が魔法使いであると判断できたのか。何故、その可能性を確定することが出来たのか。何故、カフトワンダーは起動しなかったのか。何故、カフトワンダーを呼び出すことが出来るのか。
何故。
「魔力が無いって嘘をついたの」
私は振り返る。左手で引き抜いたハンドガンを構える。銃口を向けた先で祐希奈は大きく伸びをしていた。私の行動を気にも止めない姿に私は奥歯を噛み締める。私が引き金を引いた瞬間に、祐希奈の足下で魔力の弾丸が弾けた。そんな私を見て祐希奈は不思議そうに首を傾げた。
「んー?」
「私の質問に答えて。祐希奈ちゃん」
銃口の先を少し上に向けて私がそう言うと、祐希奈は楽しそうにその表情を明るくした。
「風花ちゃん、本当スゴいね。カフトワンダーの実地データ、全カードデータ、そして魔術回路のロック解除コードまで集めてくれるなんて。予想以上なの。祐希奈、とっても嬉しいよ」
「一体……」
「これだけのデータと魔術回路のロック解除コードがあれば、カフトワンダーの実用化に近付くの。ううん、もう完成だよ。こんなに風花ちゃんがやってくれるなんて、思っても居なかったの。最悪、駄目なら祐希奈が全部やろうかと思ってたけど。でもやっぱり魔法使いって凄いんだね。それに風花ちゃんが凄かったのもあるの。やっぱり才能があったんだよ」
「……何なんだ」
「あのね、祐希奈達はここから世界に反旗を翻すの」
祐希奈はそう言った。その言葉の意味が、祐希奈の求めていた物が、結び付く。祐希奈は今まで私の戦闘をずっと見てきた。そうやって魔法に関するデータを収集してきたというのか。そして、何よりも。衛都楼水希が暴いたこの場で魔術回路のロックを解除する術までも手に入れた。
それはつまり、彼女の手には全ての魔法があると同義であるのだ。祐希奈という機関ミズガルズから逃げ出した少女、いや、しかし、それは真実ではなく。祐希奈は魔法の全てを手に入れて。
世界へ反旗を翻す。
私がその真意を問い詰めるより先に、祐希奈が笑顔で私達にその小さな手を思い切り振った。
「そうそう、安心してよ水希ちゃん。きっと水希ちゃんの望んだ様な世界になるよ。ね?」
そう言って祐希奈が踵を返す。祐希奈のその身体が、足下から突如出現した光の粒子に包まれていった。私は、それが魔力の光だと気が付いた。
跳ばれる。
その足を止めさせるために、私はその背中へ銃口を向けた。
「祐希奈!」




