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魔法少女は死んだ  作者: 茶竹抹茶竹
7章・Let's singing with me,for changing for anything for something for everything.
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【13-2】

13-2



 衛都楼水希の振り切った刀、真横に薙払われたそれを身を仰け反らせて回避する。衛都楼水希が一瞬見せた動揺へと剣を叩き込む。それを咄嗟に身をずらし躱して刺突の要領で衛都楼水希が右手だけで突きだした刀が目の前を掠める。


「どうしても、水希さんのやり方じゃなきゃ駄目なのか!」

「他にどうすれば良いか、言ってみてよ! 国は敵で、世界はもっと敵! ならあたし達の居場所を作れる人間が何処にいるのかをさ!」

「そうやって造った世界に、本当に水希さんの居場所はあるのか! 世界を壊して沢山の人を死なせて!」


 英雄という存在は、その功績の可否に犠牲は問われないかもしれない。全く違う価値の世界が出来た時、その成立のきっかけは私の思うような評価では語れないのかもしれない。

 けれど、それは今ではないし、それを私は知らない。そうやって否定するしか出来ない。

 それに。本当に衛都楼水希が求めているのは、その言葉通りのものなのだろうか。


「なら月夜ちゃんには何が出来るの!」


 叩き込まれた一太刀、受け止めた刃から伝わってきた衝撃が私の両手の感覚を麻痺させる。だが。太刀筋は見えている。足を踏み込んで勢い良く剣を振り抜き、衛都楼水希が再び振ってきた刀ごと弾き飛ばす。

 聴覚が金属音を認識しきれない。呼吸もままならない。振り下ろされる一閃に全神経を向ける。けれども、言葉だけはこぼれそうで。


「水希さんを止めることくらいだけど! でも!」

「そんなんじゃ、それが月夜ちゃんじゃ駄目なんだよ!」


 衛都楼水希が刀を一瞬かち合わせると目の前を勢い良く蹴り上げる。腹部に食い込んできた衝撃に私はよろめいたまま後ろへ下がる。その間に衛都楼水希が腰のホルスターを弾いた。蛇腹状に展開したホルスターからカードを引き抜くと刀の装甲部へと差し込んだ。内部で重なり合った様な金属音が鳴る。

 その一枚が、私が望んでいた一手であること可能性に期待する。衛都楼水希に残された一手。破ることなど不可能な最後にして最強の一手。


「星のカードは」


 私の言葉に衛都楼水希の動きが止まった。彼女は星のカードを選んだのだと確信する。


「星のカードは、時間を制御する魔法だ。時を止め、カードの使用者だけが自由に動き回ることが出来る。世界を止めるなんて魔法、水希さんがどうしても渡せないと言った理由も分かる」

「そうだね。カードを持っている他の魔法少女と戦うことを想定したら、それだけ強力なカードは見逃せない」

「世界を意のままに出来る最強の魔法」

「そう、だから、あたしが此処から世界を変える! コード・クヴェレ!」


 そう、だから、この瞬間を待っていた。

 最初の一枚を仕込んだ時からずっと、その一手を打つことを。私はそれだけを待ち望んでいた。彼女が必ず使ってくるであろう最強の一手を。

 前回の戦闘で見せたあの奇妙な魔法。衛都楼水希があんなにも執着した星のカード。コード・クヴェレ。止まった時間の中で彼女だけがそれに囚われずに動き回る時間制御の魔法。

 世界を変える為に衛都楼水希が求めた、「魔法」。


「だけど! 世界は止まらない!」


 衛都楼水希が引き金を引く瞬間に私は剣の切っ先を向けて引き金に指を触れる。引き絞ろうとした指先に力を込めた瞬間、衛都楼水希が引き金を引いた。視界が一瞬、暗転して世界は静止する。身体が動かない。指先に込める力が遅れた感覚として返ってくる。

 ただ一人。衛都楼水希だけが変わらずに。その世界の中で動いていた。衛都楼水希が私に向かって進んでくる。その刀を振りかざし構えて。その一歩が地面を叩くのが見えて。

 認識だけは追いかけてくる。だが行動が間に合わない。力を込めても、その感覚すら付いてこない。


「残念だよ、月夜ちゃん」


 衛都楼水希のこの一手に対して、私はカウンターの一手を残していた。故に一枚のカードを手の内に隠し続けてきた。彼女の「星」の魔法を打ち破る術はそれしか無く、それを打ち破ることこそが衛都楼水希へと突き立てる最良の一手だと判断したからである。

 だが。

 間に合わない。計算通りとはいかなかった。衛都楼水希が刀を振り下ろす方が先であろう。駄目だった。そう確信をした瞬間。

 一瞬、衛都楼水希の動きが止まった。私の顔を見て、その手は止まる。振り上げた刀の切っ先が宙で迷う。

 それが私に与えられた奇跡。私に残された最後の好機。ただその一瞬が私の最後の一手を打たせる。

 私の指が引き金を引き切った。最後の引き金の音がした様な気がした。



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