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魔法少女は死んだ  作者: 茶竹抹茶竹
1章・too hard to hard to me
6/70

【2枚目・かつて否定した存在】

2-1


 逸賀灼‐いちか あらた‐は盛大な溜め息を吐いた。

 金曜日の深夜に起きた新宿駅での一件は二日経った日曜日の今日になっても何の手掛かりもない状態であった。あの場から忽然と姿を消した緑一色のレインコートの少女の所在も見つかっていなかった。故に、彼らが極秘裏に取引しようとしていた魔力生成機の所在も同様に不明であった。

 そう魔力。

 この世界には魔法がある。いや、正確には「あった」らしい。

 今の人類には知覚できない力、魔力と呼ばれる力がこの地球上の大気には存在している。それを用いて不可思議な現象を起こす者、魔法を使う存在、魔法使いの存在を示唆するものは過去の文献の内から大量に見つかっている。だが、それは眉唾なものでしかなく。結局、所詮は、オカルトの領域を出なかった。

 数年前のとある一件が起こるまでは。


 ミズガルズと呼ばれる秘密機関が人工的に魔力を生成させ操る装置、通称カフトワンダーの開発に成功した。カフトワンダーは極秘裏に実証実験が行われたがその性能は瞬く間に政府関係者の中に知れ渡る。魔法という非現実的な話が確かな成果を挙げて現実へと現れた。魔法というあまりに強力な力は、今後の科学技術発展の為という名目でミズガルズの開発したカフトワンダーの一機、大鎚型のカフトワンダーは政府に譲渡された。

 その同時期、民間企業の大鳥重工が奇跡的にカフトワンダーの製造に成功し、そのカフトワンダーは警視庁公安部に試験採用という形で渡った。それが逸賀灼の持つ真紅の弓矢である。

 そして今回。機関ミズガルズがもう一機のカフトワンダーの製造に成功したとの情報が公安部にリークされた。そのカフトワンダーが何処かの組織に秘密裏に譲渡されるという情報も一緒に。

 カフトワンダーの影響力を危惧した公安部はその阻止に動いたが予想もしていなかった、カードの暴走という事態が発生しカフトワンダーと機関ミズガルズの人間を取り逃がした。

 それが一連の次第である。


「今回のイレギュラーは二つです。一つは暴走したカードの出現です」


 麻希‐まき‐の運転する車の助手席で逸賀灼はそうぼやいた。上司からの召集をかけられた逸賀灼と麻希の二人は上野駅へと車で移動中であった。カーエアコンの暖房が煩わしくて逸賀灼はスイッチを切る。それを麻希が横目で見た。


「寒くないんですの?」

「麻希さん、寒いですか?」

「少し」

「皮下脂肪が無さすぎるせいですよ」


 逸賀灼が麻希の細い手首を見ながら嫌味を言うと、エアコンのスイッチを入れた。暖房が唸りを上げる中、逸賀灼は助手席の椅子に深く背中を預け直す。麻希が小さく笑ったので逸賀灼は眉をしかめる。


「大体、麻希さんは病的に痩せすぎです。健康的というのは痩せていれば良いと言うものじゃないんですよ。適正体重ってのがですね」

「もしかして灼さん、太りましたの?」

「急に何を言うんですか。いつも通りですよ。全然いつもとお変わりないですよ」

「お代わり? さっきお昼ご飯食べたのにまだ、何か食べるんですの」

「食べませんよ。何言ってるんですか」

「さっきパスタに加えてドリアまで食べて、それにデザートまで追加したのにまだ食べるんですの」

「いや、だから食べませんよ。それに別に体重変わってませんから」

「大丈夫ですわ。灼さんのお腹を触るの好きですから」


 麻希の言葉に逸賀灼は顔を真っ赤にしてそっぽを向いた。麻希が楽しそうな笑みを見せる。頬杖を付いて外の景色に目をやったままの逸賀灼に、麻希は白々しく問いかける。


「で、何の話でしたかしら」

「カードですよ。前回出現したカードといい最近は妙に連続しています」

「今回はあの場での魔法による戦闘の影響だと考えるべきなのでしょうか」

「恐らく」


 あの場に出現したカード。あれは複雑な魔法術式を組み込んだ詳細不明の古代文明の遺産である。カードは全部で22枚あると目されており、数枚は政府、数枚は逸賀灼の手元にある。その他の所在は不明であった。

 古代文明の遺産としか言いようがない、と結論づけられたカード。それらは休止状態で何処かに隠されており、何らかの切っ掛けで前回のように発動する。

 今回はおそらく、逸賀灼と浮瀬南陸斗‐うきせな りくと‐が魔法による戦闘を行ったことによりあの場に激しい魔力の力場の乱れが生じたことで近くに封印されていたカードを刺激したのだろうと麻希は考えていた。

 カードは発動すれば、それらは強力な力を発揮する。魔法としか呼びようがないほどの不可思議な事象を起こす。それはカフトワンダーで魔力を操る程度では引き起こせない強力であった。

 カフトワンダーはそもそも、そのカード内に組み込まれた魔法術式を読み込み発動させる為のものである。魔法を引き起こす為の術式の組み込まれたカード、その存在が魔法を確かなものとし、それを使用するためにカフトワンダーが開発された。

 麻希は赤信号で止まった前のバンのテールランプを睨みつけながら言う。


「カードは非常に複雑な魔術式を組み込んだものですの。一枚で強力な魔法を発動します。これをこちらが確保しだけでも良しとしなくては」

「ですがカフトワンダーは向こうの手に既に落ちているかもしれないわけです」


 機関ミズガルズがカフトワンダーを何処に譲渡する気であったのかは不明であったが、あの場にカフトワンダーを所有する浮瀬南陸斗が現れた事でそれは何となく推測が出来そうではあった。カフトワンダーの一機は政府関係者に渡っている。そのカフトワンダーを持つ人間があの場に、公安部を排除するために現れた。つまり新しいカフトワンダーは政府関係の手に渡ろうとしていたという事であった。


「ですが、今回のカードによる戦力増強は大きいですわ。これなら敵の魔法少女に対抗できるかもしれません」

「浮瀬南陸斗ですか」

「えぇ」


 あの場に現れた大鎚の形状をしたカフトワンダーを持つ少女。詳細不明であるが浮瀬南陸斗という名前を名乗っており、政府関係者であることまでは分かっていた。

 カフトワンダーは使用者に大きく左右される。魔力が人体を通った時、魔力の波長と呼ばれる性質が変化する。それにカフトワンダーは反応する。その波長は個人差が大きく出る上に、カフトワンダーは一部の波長にしか反応しなかった。

 カフトワンダーに適合した数少ない人間。カードによって魔法を公使する事が可能な者。

 自在に魔法を用いる者を「魔法使い」と呼ぶのに区別し、カフトワンダーによって人工的に魔法を使える者をこう呼んだ。

 「魔法少女」と。

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