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魔法少女は死んだ  作者: 茶竹抹茶竹
6章・I plan on her's plan
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【11-2】

11-2



 麻希-まき-が強奪したアタッシュケースの中に入っていたのは分厚い書籍だった。布地の表紙と黄ばんだ洋紙から年代物だと麻希は思った。しかし、逸賀灼-いちか あらた-はその本自体にはあまり興味がないようで、表紙を思い切り破いていく。下地の厚紙の隙間から逸賀灼が何かを引きずり出してきた。何の変哲も無いmicroSDカードだった。

 逸賀灼は浮瀬南陸斗-うきせな りくと-から預かった携帯電話からmicroSDカードを取り出すと、その二枚を麻希へと渡す。

 麻希が肩から提げたバックからタブレットpcを取り出す。microSDカードの中身、内部データはどうやら膨大な量のテキストデータであるようだった。ヘイムスクリングラの書とされているそのテキストデータをざっと眺めながら麻希は唸る。


「これ、本当にヘイムスクリングラの書なのでは? テキストデータの内容は本当にただの文章ですわ」


 逸賀灼はヘイムスクリングラの書に目を通したことは無かったが、そのテキストデータを見る限り麻希の言葉は確かであるように思えた。神話の様な内容である。それを見て逸賀灼はヘイムスクリングラの偽書の方のデータを開くように指示を出した。ヘイムスクリングラの偽書の方も変わらずテキストデータであり、そちらは無数のアルファベットの羅列となっている。文字に規則性も無く、単語にも文章にもならない。それがひたすらに続いているだけだった。麻希が何ページにも渡る無意味なアルファベットの羅列を目で追いかけながら渋い声を出した。


「文字化けでしょうか」

「いや、暗号ですよこれ。多分、ストレウム式の」


 逸賀灼がメモ帳を手にアルファベットの羅列を目で追いかける。ふと気が付いてヘイムスクリングラの書の方のテキストデータを見直した。そうしてもう一度アルファベットの羅列の暗号文を見直した。

 ヘイムスクリングラ冒頭の文章を暗号文に当てはめてみる。文字数が一致した。ヘイムスクリングラの偽書の暗号は、解読すればヘイムスクリングラの書と同じ文章になるのでは、と逸賀灼は感づく。

 だが、それに何の意味があるのだろうか。


「いや、違う。二つで一組なのか。麻希さん。今から言うようなプログラムをこの場で組めますか」

「何ですの急に」

「一つは僕が言う法則に基づいた暗号解読。ヘイムスクリングラの偽書の暗号文を解読します」

「暗号が解けたんですの」

「ストレウム式なら、数十のパターンを計算すれば解けます。いくつかのヒントがありますから」

「そんな無茶苦茶な」

「もう一つはヘイムスクリングラの書の内容と、暗号解読したヘイムスクリングラの偽書の内容。この二つを比較して欠けている文字列を拾うためのプログラム」


 麻希が首を傾げたので、逸賀灼が腕を組んだまま言葉を続ける。


「恐らくヘイムスクリングラの偽書を解読して出てくる内容はヘイムスクリングラの書と同じです。けれど、一部の文字が欠けている筈。恐らくヘイムスクリングラの書の本文とヘイムスクリングラの偽書の差分、偽書で欠けている文字が分かればそこに記されているメッセージが分かるはずです」


 逸賀灼が何を言っているか分からず月夜風花-つや ふうか-は蚊帳の外であった。麻希が何かを打ち込み始めると逸賀灼が月夜風花の方を向いて話し出す。それは逸賀灼の知っている今まで起きた全てであった。


 機関ミズカルズと呼ばれる秘密組織がある。全てが謎に包まれたその組織は人工的に魔力生成を可能とする機関と、特殊な魔法術式が組み込まれたカードと呼ばれる古代文明の遺産を発動させる機能を持った武器、通称カフトワンダーの開発、製造を成功させた。

 その一機は浮瀬南陸斗という所属組織不明の謎の少女の手に渡る。そして機関ミズカルズはもう一機のカフトワンダー「イクス・ガンスノッドスエルツェ」の製造に成功した。そのカフトワンダーを極秘裏に譲渡する計画がある。表向きには公表されていない魔法を追う公安部の特殊捜査課の「ガイソウ」の元に、そのような情報の身元不明なタレコミがあった。

 ガイソウの逸賀灼と麻希はそれを阻止するために新宿駅で行われていた機関ミズカルズの取引を襲撃するも、浮瀬南陸斗の妨害を受ける。その戦闘中、突如出現したカードの効果が暴走して、機関ミズカルズが譲渡しようとしていたカフトワンダー「イクス・ガンスノッドスエルツェ」とそれを持っている少女を見失う。

 その少女は祐希奈-ゆきな-という名前で、祐希奈は月夜風花という少女の元に転移された。月夜風花は魔法の素質を生まれながらに持つ希有な存在であった。月夜風花は状況に流されるまま祐希奈と協力し、暴走状態にあったカードを封印する。

 暴走したカードは危険な物であり、祐希奈はそれを封印しようとしていることをしった月夜風花はその協力を申し出る。その頃、上野で芦ヶ場-あしがじょう-という男が殺害される。彼はヘイムスクリングラの書と呼ばれる何かをロキというあだ名の人物に渡そうとしていたが何者かに殺害されヘイムスクリングラの書を強奪される。

 芦ヶ場が機関ミズカルズの人間ではないかという推測をした逸賀灼達はその事件を追うが、「イクス・ガンスノッドスエルツェ」の譲渡のタレコミメールの送信元が児童養護施設ひまわりであると判明する。ひまわりから特に証拠は出なかったが、ひまわりの代表上幹はかつて山盤寺-さんばんじ-医師による脅迫事件の被害者であると麻希は気付く。ファシロペウムと呼ばれる謎の物質の公表をネタに上幹-かみもとき-代表を強請っていたこの一件は山盤寺医師の自殺で幕を引いていた。山盤寺医師はかつて中野区の総合病院に勤務しており、彼が受け入れた救急患者の少女「水希」が死亡した一件で、一時、各メディアに登場していた事があった。ひまわりの職員が過去に暴行事件を起こし、ひまわりの支援者である都宏議員の口添えで釈放されたという週刊誌のリークを怪しく睨んだ逸賀灼は麻希にその調査を依頼した。

 逸賀灼の捜査が行き詰まっている頃、浮瀬南陸斗と遭遇した月夜風花は彼女にヘイムスクリングラの偽書を渡すよう脅しを受け交戦となる。祐希奈が持っていたヘイムスクリングラの偽書であるが、浮瀬南陸斗が何か私利私欲とは違う目的でそれを欲している事を知った月夜風花は彼女にヘイムスクリングラの偽書のコピーを渡した。

 都宏議員を張っていた麻希によってヘイムスクリングラの書が都宏議員の元にあること、そして先進情報伝達研究機構という団体にヘイムスクリングラの書を渡そうとしていることが判明した。その取引現場のお台場で衛都楼水希と麻希はヘイムスクリングラの書の強奪を図り、その逃走中に浮瀬南陸斗との戦闘に入る。

 その頃、同お台場で月夜風花は、友人である衛都楼水希が魔法少女であることが判明しカードを巡って衝突。逸賀灼と浮瀬南陸斗が戦闘中、その場で三枚のカードの同時発動が起きた事で衛都楼水希はその場に介入。

 衛都楼水希は浮瀬南陸斗を殺害し、月夜風花はカードを封印。それによりカード全てがその場に揃い、謎の座標がその場のカフトワンダー全てに表示された。口振りから推測するに衛都楼水希はこの結果を予測しておりその為にカードを集めていた様であり、彼女はこれをラグナロクと呼んでいた。


 月夜風花からの情報を統合して一連の事件を整理した逸賀灼は舌打ちする。訳が分からない。麻希がキーボードに触れた手を止めて、そんな逸賀灼に言う。


「それで、どうするんですの。その子」



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