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魔法少女は死んだ  作者: 茶竹抹茶竹
5章・cry more than night's color
55/70

【10-4】

10-4


 月夜風花-つや ふうか-が空中で気絶しても、その身体がゆっくりと落下していくだけなのを見て衛都楼水希-えとろう みずき-は月夜風花の持っているカフトワンダーによって空中制御を行っているのだと感づいた。月夜風花に踵を返し衛都楼水希は浮瀬南陸斗-うきせな りくと-まで一気に加速する。

 それに気付いた逸賀灼-いちか あらた-が叫ぶより速く、衛都楼水希は浮瀬南陸斗の背後を取る。衛都楼水希が柄を握り締め加速をかけたまま浮瀬南陸斗の背後から勢い良く肩を背中にぶつける。身体に引きつけた刀が鋭く上を向いたまま浮瀬南陸斗を刺し貫く。


「なっ」


 衛都楼水希は刀身を浮瀬南陸斗の身体から引き抜いた。浮瀬南陸斗の口から水気の混じった空気を吐き出す声が漏れる。引き抜いて払った切っ先が宙に血糊を散らす。赤く染まった刀身が微かに鈍い煌めきを見せた。


「君は、新しい世界に要らない人間だよ。色々と知りすぎているんだよね」

「完成品は死んだ筈だ」

「そうだね」


 浮瀬南陸斗がその身に空いた穴から血液が溢れ出すのも気にせず大鎚を構えも無く一気に振り下ろす。ノーモーションで繰り出された一撃は、それでも、刀で受け止めた衛都楼水希をよろめかせる程の力強さがあった。浮瀬南陸斗が続けて繰り出した一撃は衛都楼水希を完全に捉えていた。

 これは躱せない。それを浮瀬南陸斗は確信した。一撃を防ぐには衛都楼水希の刀は細すぎる。


「やっちゃおうよ。コード・クヴェレ」


 衛都楼水希が静かに引き金を引いた。

 その瞬間を、空中で目を覚ました月夜風花ははっきりと見た。その瞬間に、世界は止まったように見えた。

 浮瀬南陸斗の動きは緩慢で、まるで水中にいるかのようで。それが彼女だけでなく、自身の認識もそうであることに月夜風花は気が付く。瞬きをしようとしても、ゆっくりとシャッターを絞るかのように視界はスロウモーションで暗転して。身体を動かそうとしても、指先一つを動かす内に世界が終わってしまうかのような緩慢さで。

 世界の時がまともに進むことを止めていた。

 その中で衛都楼水希だけがまるで滑るように動いていた。浮瀬南陸斗が緩慢に振り下ろす大鎚を難なく躱して刀を突き立てに行く、その速度はこの世界を超越していた。緩慢に時間の流れる世界で、彼女だけがその時間に囚われていなかった。

 衛都楼水希が求めたコード・クヴェレ「星」のカード。

 時間制御の魔法。そう気が付く。そんなものがあり得るのか、と。

 止まった世界の中で彼女だけが止まらない時間で動いている。

 衛都楼水希がその刀を、浮瀬南陸斗へと突き立てた。赤い血液が吹き上がる。ゆっくりと舞うその赤が、その一滴一滴が散っていく。


「水希ぃっ!」


 月夜風花の叫び声が、その静寂を断ち切る。止まった世界を動かす。

 衛都楼水希へと向かって弾かれた様に月夜風花が突っ込む。その行く先に石膏像が立ちふさがる。それを見た月夜風花が剣を振り抜く。


「邪魔なんだよっ!」


 目の前にふさがる石膏像を一太刀で切り裂く。切り裂いた石膏像が砕け散り、そこからカードが露出してそれを切り抜く。その瞬間、カードから光が弾けてそして引き寄せられるように光はカードへと戻る。石膏像の姿が消え失せる。

 その瞬間だった。


「なんだこれ、なんだよこれっ!」


 月夜風花の周囲に浮遊してカードが展開する。所有している全てのカードが意に反して展開している。月夜風花のそれと同時に浮瀬南陸斗の周囲、衛都楼水希の周囲、そして逸賀灼の周囲に同様にカードが空中に展開していく。

 それを見て衛都楼水希は嬉しそうに言う。


「あぁそういうことなんだ。カードが全部揃えさえすれば良いんだね。持ってる必要なんかはなかったってことなんだねぇ」


 カードがそれぞれに呼応するかのように光り輝く。カードが一本の光線を放って別のカードに触れると、それもまた別のカードに光線を放つ。それを繰り返し光線で結ばれていくカードを前に月夜風花は困惑する。全てのカードが結ばれた時、カフトワンダーが呼応した。剣の液晶画面に文字が浮かび上がる。意味の分からない数字の羅列であった。衛都楼水希はそれを見て頷く。


「約束の地は開かれた」



【10枚目・その光は空白の隙間に見える 完】


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