表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法少女は死んだ  作者: 茶竹抹茶竹
5章・cry more than night's color
53/70

【10-2】

10-2


 衛都楼水希-えとろう みずき-と対峙していた月夜風花-つや ふうか-が動いた。二人の間は距離にして15メートル程。数度の鍔迫り合いで衛都楼水希の太刀筋は鋭く正確であるのは分かった。衛都楼水希は素人ではないとも。

 距離を維持したまま空中を飛ぶ月夜風花がハンドガンの引き金を引くも、その弾丸は衛都楼水希が刀を振るう度に空中に残る碧く光る靄のような物に触れると一瞬で消えた。ハンドガンの弾丸は魔力の塊である。魔力を無効化しているそれは、カードの効果であると推測する。

 月夜風花がカードを入れ替える。その隙を狙って衛都楼水希が一気に距離を詰めに行く。衛都楼水希の足下で渦を巻く粒子が一種の加速装置の役割を果たす魔法ではないかと月夜風花は推測する。


「まさか、魔法使いだってこと」


 衛都楼水希が今使用しているカードは魔力を打ち消す魔法の筈である。だからこのデタラメな加速は恐らくカードの効果では無いことに月夜風花は驚く。ぎりぎりで彼女の刀を剣で受け止めて、鍔迫り合いの形となった月夜風花は顔をしかめる。

 兎に角速い、月夜風花は衛都楼水希をそう評する。兎に角、直線での加速がデタラメであった。隙を作れば、その一瞬を真正面から突いてくる。

 魔法少女の弱点はカードに依存しているという点である。カードを入れ替える瞬間は必ず隙が生まれ、一度カードを使用してしまえば次の一手はカードを入れ替えるまでは同じである故に動きも読まれる。

 浮瀬南陸斗の時とは大きく違う一点はそれである。衛都楼水希が距離を詰める事を得意とする故にカードを容易には入れ替えられない。


「水希さんの目的がカードなら、どうしてそれを集める」

「月夜ちゃんだって集めてる」

「私は、カードが暴走したら危険だから、それで」

「なら、あれはあたしが止めるから。持っているカードを渡して」


 互いに距離を離して獲物を構え直す。衛都楼水希が動いた。一気に直線的に距離を詰めてくる。振り下ろされた刀を受け止める。


「全てのカードが集まるこの瞬間を逃すわけには、いかないんだよね」

「カードを全部集めてそれで何が起こるっていうんだ」

「ラグナロク」


 祐希奈-ゆきな-の言っていた言葉と同じ言葉が出てきて月夜風花は動揺する。一体、ラグナロクとは何だというのだ、と。

 衛都楼水希に押し込まれ月夜風花は落下する。咄嗟に銃口を向けて引き金を引いた。撃ち出された魔力の弾丸を衛都楼水希は刀で切り払う。碧い光の靄。それが残留して空中に漂うと、それに触れた弾丸がやはり消えていく。それを見た月夜風花はあの靄に触れると魔力が解除されるのではないかと気が付く。

 対魔法の効果を持つカード、そして相手に隙を与えない瞬間的な加速性能。浮瀬南陸斗-うきせな りくと-とは全く違うアプローチの強敵。相手に全ての可能性を廃させてシンプルな斬り合いに持ち込んでくる戦術であった。


「なら!」


 月夜風花が左手を振り払う。雷撃が散ってその一閃が衛都楼水希へと向かう。それをまるで埃を払うかのような軽い仕草で刀で払いのけた。刀身を纏う碧い光の靄。魔法を打ち消す類の物であるなら、それを正面突破する方法が月夜風花に思いつかなかった。カードを入れ替えようとする。それにより動きの止まった月夜風花へと衛都楼水希が加速した。

 衛都楼水希までは5メートル以上はあった。それを一瞬で詰めてきた事に月夜風花は改めて驚愕する。


「その加速、その魔法解除、どっちも魔法じゃないのか」

「魔法だよ。月夜ちゃんと同じ」

「なら、何で同時に使える。カードを入れ替えている動きなんて。魔法少女はカードなしじゃ魔法は使えない」

「魔法少女だよ。でも、それは月夜ちゃんと違うんだ」


 衛都楼水希の手にしている刀が特殊なのか、いやそれとも、と月夜風花は考え直す。彼女は魔法少女ではなく、魔法使いなのではないかという可能性にたどり着く。どちらかはカード、そしてどちらかは自身の魔力によるものなのではないか、と。

 衛都楼水希の刀を剣で受け止めたまま、月夜風花はその刀身を左手で押し上げる。刀のしなりに合わせて押し込んでくる力の角度が徐々に変わる。幅の広い刃故に、月夜風花はその剣を楯とするのを多用してきた。そしてそれは今回も変わらず役に立つようで。

 衛都楼水希の直線での加速は驚異的だ。しかしそれは直線限定の加速のみ。魔法を打ち消してくる光の靄の魔法も、あくまで防御である。遠距離攻撃の類もまだ見ていない。衛都楼水希は単純な斬り合いに特化し斬り合いしか出来ないのではないだろうか、と月夜風花は考える。

 斬りも突きも当たればその殺傷性は高い。だが浮瀬南陸斗の様な重たい一撃ではない。


「水希さん、教えて。こんな事をする理由。私と水希さんが戦わなきゃいけない理由を。ラグナロクって何なのか」

「それを知って月夜ちゃんはどうするの。あたしの起こそうとしているラグナロクの正体が何だったら月夜ちゃんは満足するの」

「満足……?」


 刀を剣で払いのけられて衛都楼水希は距離を放した。空気を裂く重たい音がして月夜風花の振り下ろした剣の切っ先が衛都楼水希の目の前を通り過ぎる。


「水希さんはいつだって、世界の正しい方にいるように見えたんだ。私なんかと違う正解を選べる人なんだ。だから! こんな事、誰かに刃を向けるなんて事、私には分からなくなる」

「あたしは今も正しい事をしてる」

「なら!」

「でも月夜ちゃんは何で此処にいる」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ