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魔法少女は死んだ  作者: 茶竹抹茶竹
5章・cry more than night's color
52/70

【10枚目・その光は空白の隙間に見える】

10-1


 衛都楼水希-えとろう みずき-が空中を蹴ると同時に彼女の足下で光の粒子が渦を巻き、彼女を一気に加速させる。宙に碧い光の粒子が散って、まるで弾丸のように衛都楼水希が飛び出した。一直線に飛翔して一瞬で距離を詰めると、浮瀬南陸斗-うきせな りくと-へと斬りかかる。その振り下ろされた刀を大鎚の柄で受け止める。浮瀬南陸斗が両手で柄を押し上げて刀を去なすと、衛都楼水希へと足を蹴り上げる。それを跳び退いて躱した彼女は腰のホルスターからカードを引き抜いた。

 それで衛都楼水希が魔法少女であると確信して浮瀬南陸斗が渋い声を出す。


「水希という名前、魔法少女。てめぇまさか完成品か」

「やっぱり浮瀬南ちゃんを狙って正解だった。嫌なことを知ってるね」


 二人の間を魔力の弾丸が駆け抜けた。その残光が風に流されて消えて、衛都楼水希の真下から勢い良く飛翔してくる存在があった。太陽の光を瞬かせその一瞬に銀の煌めきが見えた。堅い金属音が鳴って、弾かれた二つの刃がその衝撃でその切っ先を泳がせる。

 衛都楼水希に受け止められた剣を構え直して月夜風花-つや ふうか-が叫ぶように言葉を吐き出す。


「何でこんな、何の為に。水希さん!」

「月夜ちゃんには関係ないよ!」

「関係なくても納得出来ない! それに、カードが暴走してる! あれを止めないと!」

「後でどうとでもなるよ」

「あの威力、これ以上の被害を出すわけには」

「月夜ちゃんがそんな事を言うんだ」


 月夜風花が左手にしたハンドガンを衛都楼水希へと向けて引き金を引いた。衛都楼水希が倒れ込むようにして空中制御を解除して一気に高度を下げるとその射線から外れて弾丸を回避する。

 それを銃口で追いかけて引き金を続けて引く。宙に散っていく魔力の弾丸を躱しながら衛都楼水希はカードを刀へと読み込ませた。そうして彼女の刀、カフトワンダー「ヴィルヘルム・ラジェンランテイル」へと呼び掛ける。


「やっちゃうよ、コード・コンラート!」


 引き金を引くと同時に刀身が碧い光を纏った。それを振り抜くと空中に碧い光の痕跡が残り、月夜風花の放った弾丸がそれに触れた瞬間に消え失せる。

 それを見て月夜風花は引き金を引く指を止めると、背後の浮瀬南陸斗に顔を背中を向けたまま言う。


「陸斗さんはカードを」

「いつから、うちは味方になったんだよ」


 浮瀬南陸斗はそう笑って、月夜風花へと背を向けた。逸賀灼-いちか あらた-と戦闘中の石膏像の姿を捉えて、口の端を持ち上げる。


「ヘイムスクリングラの借りだけは返してやる」




【10枚目・その光は空白の隙間に見える】




 女帝の石膏像を前に逸賀灼は弓を構え直した。衛都楼水希の介入時の一撃によって石膏像の手にしていた杖は破壊されたが、それは何事も無かったかのように復活した。やはりカードを封印しなくてはならないか、と逸賀灼は舌打ちする。

 三枚同時に暴走したカード。女帝の石膏像が有している杖とランタンは「隠者」のモチーフ、その背に展開している機械仕掛けのような歯車は「運命の輪」のモチーフであるように思えた。

 石膏像がその杖を翳す。あのレーザーが放たれる前兆であると確信して逸賀灼は矢を引いた。石膏像の動きが突如加速する。咄嗟に放った矢をそのスピードで躱して石膏像は逸賀灼へと向けてランタンを振り下ろす。それを受け止める黒い影、逸賀灼を庇うようにしてその一撃を受け止めた浮瀬南陸斗に驚いて逸賀灼は声を荒げる。


「浮瀬南陸斗!? 何を」

「封印を手伝ってやる」

「何が狙いですか」

「話は後だ。時間がねぇ。あの完成品を相手に、月夜が長時間持ちこたえられるとは思えねぇ」

「月夜?」


 会話を断ち切って浮瀬南陸斗が大鎚を振り抜く。乾いた音が鳴って、石膏像の右腕が弾け飛んだ。その手にしていた杖ごと吹き飛ばす。舌打ちしながら逸賀灼がその内に一気に高度を上げて飛翔すると石膏像の頭上を取る。


「今だけは乗ってやりますよ」


 左手で空を切って紅い光が一閃を描き矢へと変わる。

 「ツェット・オクタ」。魔力による矢を撃ち出す逸賀灼の所有しているカフトワンダー。カードの術式情報を矢に圧縮して乗せ撃ち出すことで、着弾地点での魔法発動を可能とする代物であった。撃ち出す際に魔力量の制限が大きくかかる故に威力・効果は激減するものの、浮瀬南陸斗の所有している「イュプスィロン・エイロード」の様に、発動者の側でしか魔法発動の出来ないカフトワンダーとはリーチの面では一線を画する。

 石膏像は三枚のカードの同時発動だ。何処かに三枚分のカードがある筈なのである。各カードのオブジェクトが並立して存在しているなら、それぞれを別途露出させる必要があると逸賀灼は仮説を立てる。杖を持つ右手を衛都楼水希が破壊しても再生した。ならば、と矢先を添えた左指を向ける。


「左腕ですか」


 上空から逸賀灼の放った矢が正確に左腕を貫いた。矢が駆け抜けた後に、粉砕された左腕から白塵が散る。左腕のあった位置にカードが出現する。それを見た浮瀬南陸斗が大鎚の引き金を引いた。

 引き金を引く、それと同時に大鎚が呼応する。大鎚の内部から確かな駆動の振動が手に伝わってくる。大鎚の柄に埋め込まれている液晶画面に「Shift over」という文字が表示される。

 重厚な音が鳴って金属の噛み合わせがずれる音がした。大鎚に備え付けられた装甲の細部がずれ動く。装甲がずれ動いたことで内部フレームが露出して、その装甲の隙間から黄金色の光の粒子が大量に溢れ出す。

 浮瀬南陸斗が大鎚でカードをぶち抜く。金属を引っかくような雑音が轟音と化して周囲一体を引っかき回す。カードが滅茶苦茶に発した光が集束していくとそれを素早く掴み取り浮瀬南陸斗は目の前の宙を蹴って石膏像から距離を取る。

 コード・イーダ。「隠者」のカード。

 浮瀬南陸斗が逸賀灼に口の持ち上げて言う。


「良いのかよ貰っちまって」

「良いですよ。どうせ後で逮捕しますので」


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