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魔法少女は死んだ  作者: 茶竹抹茶竹
4章・I've eyes of ice to fly
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【9-4】

9-4


「言われるまでもないですね!」


 弓を構えた逸賀灼-いちか あらた-が矢を放とうとしたその瞬間。突如、その杖が砕けた。まるで本物の石膏像であったかのように白い粉と破片が散った。逸賀灼は目を見開く。石膏像の杖を砕いたその姿に動揺を隠せない。石膏像を一撃で叩ききったのは、蒼い刀身の日本刀だった。そしてそれを手にしているのは。


「カードが三枚もあるなんて。これはあんまり見逃したくないなぁ。今日は多分ツイてる日だね」


 蒼いゴシックドレスの魔法少女であった。潮風に靡かせるそのドレス姿。快活な内面を表すかのようなポニーテール。美少女と呼んで差し支えないその容姿。そんな、浮瀬南陸斗以外の魔法少女の存在に逸賀灼は困惑する。そんな情報を聞いたこともない。カフトワンダーは機関ミズガルズが開発した一機と大鳥重工の一機のみの筈である。いや、違う。と逸賀灼は考え直す。

 この一連の事件の始まり。機関ミズガルズが極秘に譲渡しようとしていたカフトワンダー、それが一機ある筈であった。そうすれば数は合う。未だ所在の掴めていないカフトワンダーを所有しているのが、この場に突然現れた彼女だとすれば。


「衛都楼-えとろう-、だと」


 浮瀬南陸斗-うきせな りくと-が衛都楼水希-えとろう みずき-の姿を認めて驚愕する。魔法少女であることにも、魔法少女が居ることにも。祐希奈が月夜風花と一緒に居るのはもう分かっている。なら、衛都楼水希という存在は何なのだ。存在しないはずの四人目の魔法少女だった。


「水希さん!」


 新しい声がした。全員が弾かれるように振り返る。空中に雷光が散った。雷光は衛都楼水希へと襲いかかるも、彼女は刀で容易く弾く。雷光の撃ち出された地点にいた一人の少女が、剣を構えなおして宙を蹴って勢いよく飛翔する。

 衛都楼水希へと切りかかっていく月夜風花-つや ふうか-の姿に浮瀬南陸斗は混乱して独り言が漏れる。


「月夜まで、なんだよこれは」


 衛都楼水希へと切りかかろうとした月夜風花の前に石膏像の背中が立ちふさがる。石膏像がその手にしたランタンで殴りかかる。衛都楼水希が宙を蹴ってそれから距離を外す。

 石膏像は衛都楼水希を敵として認識したようであった。

 逸賀灼は舌打ちする。四人目の魔法少女まで現れた。状況がどうなっているのかの理解の範疇を超えている。

 情報に無い二人の魔法少女。どうやら敵対しているのは分かるが、彼女達の目的が分からなかった。片方の魔法少女はこの場に出現したカードを、片方の魔法少女はもう片方の魔法少女を狙っているという事だろうか。どう動くべきかを思案する。麻希の離脱までの時間を稼ぐには好都合かもしれないが、不安要素が多すぎた。

 それに日本刀を持つ魔法少女を、もう片方の魔法少女は「水希」と呼んだ。タイミング良く、ちょうど追いかけていた名前と同じ名前を聞くことにあまり良い気はしなかった。


「何なんですか、あなた達は」


 衛都楼水希の視線に気が付いて月夜風花は視線を返す。弓矢を持った魔法少女。暴走したカードを封印しようとしているに見えるが、浮瀬南陸斗との関係性が分からない。衛都楼水希がカードを奪い去って行ったのを追いかけて此処まで来たものの、奇妙な状況に飛び込んでしまったようであった。衛都楼水希の注目はカードに向いている。彼女と話をするには此処しかないと月夜風花は決意を固める。

 問題はあのカードと二人の魔法少女であった。

 ふと浮瀬南陸斗の言葉を思い出す。彼女は逸賀という魔法少女の存在をほのめかしていた。あの弓矢を持つ魔法少女が逸賀灼なのであろうか、と推測する。彼女は何者なのだ。

 祐希奈はカードが全て集まるとラグナロクが起きて古い人間は全て死ぬと言っていた。それが事実とは月夜風花には思えなかったが、そのように謳われ隠されている何かがあると言うことは確信していた。カードを全て集めるということをトリガーとした何かを、浮瀬南陸斗や逸賀灼、そして衛都楼水希達は狙っているのではないだろうか、と。


「でも、今私が欲しいのは水希さんの言葉だけだ」


 浮瀬南陸斗は大鎚の柄を額に当てた。金属の感触と冬空に晒された冷たさが伝わってくる。浮瀬南陸斗には大きな目的があった。その布石を打ち続けてきた。そして、最後の一手を打ち終えたのだ。浮瀬南陸斗はこの場で。

 故に、彼女にとってはもう取るべき行動など無かった。投げられた賽の目に後手であらがうだけであった。


「ようやっと、動き出してきたぜ」


 石膏像の攻撃をいなしきると、その動きは暫し止まる。衛都楼水希は少し距離を取ってから周囲を見渡す。

 何度も魔法少女の数を数え、そしてその奇遇な遭遇に口の端をだらしなく下げて笑う。

 三人の魔法少女。三枚のカード。カードは全部で22枚存在している。衛都楼水希は自分の所有しているカードの枚数を指折り数えながら諳んじる。先ほど強奪した星のカードを合わせれば此処には四枚のカードが存在していた。残りは18枚。そして四人の魔法少女。

 もしかしたら、全てのカードが此処にある可能性もあるのだ。その可能性に衛都楼水希の心は大いに弾んだ。22枚、全てのカードが集まったとするならば、その時が来たということなのだ。



「善は急げっていうし、じゃあ、始めようっか。ラグナロク」




【9枚目・ガールズ,ギャンビット 完】


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