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魔法少女は死んだ  作者: 茶竹抹茶竹
4章・I've eyes of ice to fly
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【9-2】

9-2


 逸賀灼-いちか あらた-がお台場のホテルに到着した時には、都宏-つひろ-議員はもうホテルに入っているようであった。麻希-まき-もそれを追って潜入したようで、逸賀灼はホテルの外観を眺めながら麻希へと連絡を送る。お台場湾に面する20階建てのリゾートホテル。

 程なくして麻希から連絡が来た。ホテルの703号室で会合は行われるらしい。


「麻希さん、今何処ですか」

『同じ階の707号室を確保しましたの。都宏議員には盗聴器-バグ-を仕込みましたわ』

「たまに思いますが、麻希さん一人いれば事件が解決するんじゃないでしょうか」

『そうですわね』

「否定して下さいよ」


 逸賀灼はヘッドセッドを耳に付け直し、コートを脱ぎながらホテルに踏み入れる。

 先進情報伝達研究機構は独立行政法人であり20年程前に成立している。国内における情報産業の総括的存在である。情報産業の評価、情報収集・提供を主業務とする。

 それが何故、都宏議員からヘイムスクリングラの書を受け取るというのだ。ヘイムスクリングラの書は、上野で起きた芦ヶ場-あしがじょう-殺人事件の貴重な捜査資料に成りうる。いや、それだけではなく。被害者の芦ヶ場が強奪されたヘイムスクリングラの書を持っているのなら事件の関係者である可能性も大いにあるだろう。


『灼さん』

「動きがありましたか?」

『浮瀬南陸斗-うきせな りくと-の姿を確認しましたの』

「浮瀬南陸斗ですか!?」


 逸賀灼は階段を駆け上がりながら腰のホルスターに隠してあったハンドガン「p9」を引き抜き、その手でコートを抱え隠す。浮瀬南陸斗がこの場に居ることに逸賀灼は舌打ちをする。やはりこの一件は、機関ミズガルズによるカフトワンダー極秘譲渡から始まった一連の事件に関連性がある、と逸賀灼は確信する。浮瀬南陸斗の存在がそれを物語っている。


「この場に浮瀬南陸斗が居るってだけで理由は十分です。もう全員怪しいんですよ」

『指示を』

「突入しましょう」


 707号室の前で麻希と合流して逸賀灼はハンドガンの安全装置を外す。この会見は極秘らしくホテル側は何も知らされていない様だ。警察手帳で部屋のマスターキーを借りることが出来た。

 護衛も恐らくごく少数であろう。七階の廊下には部屋の前に男が一人いるだけである。

 浮瀬南陸斗を連れてきたのは、恐らくごく少数の人数に留めたかったから。浮瀬南陸斗と接点があるのは都宏議員か先進情報伝達研究機構なのかは分からないが、浮瀬南陸斗には幾つもの傷害容疑がある。それだけでも理由は十分であった。

 ゆっくりと部屋の前の男へと近付くと、麻希が素早く身を押し付け手にしたスタンガンで気絶させる。手際よく無力させた麻希を横目に逸賀灼はマスターキーで部屋のロックを解除する。

 ドアを開けて突入すると部屋に踏み込むと同時に逸賀灼は引き金を引く。銃声が鋭く響いた。中に居たのは写真で見た都宏議員とその正面に座るスーツの男だけだった。麻希の言っていた浮瀬南陸斗の姿が無いことに気が付いて逸賀灼は舌打ちする。


「ガイソウです! 全員その場に伏せて下さい!」


 逸賀灼が怒鳴った瞬間に視界の端で影が動いた。咄嗟に身を屈めてそれを回避する。浮瀬南陸斗の振るった大鎚が直ぐ側を掠める。躱した大鎚が窓ガラスを砕いた。背後の陰に潜んでいた浮瀬南陸斗の姿に逸賀灼はハンドガンの引き金を引く。


「浮瀬南陸斗!」

「どうして、てめぇのやり方はいつも荒っぽいんだよ!」


 浮瀬南陸斗の動きを見て逸賀灼が反応したしようとした瞬間。足下が揺れた。かなり大きい地震で、逸賀灼はよろめいて床に手を付く。浮瀬南陸斗が転げたのが見えて逸賀灼は咄嗟に麻希の方を見た。壁にぶつかった麻希を見て逸賀灼は咄嗟に叫ぶ。


「麻希さん! スモーク! ヘイムスクリングラを!」


 その言葉に揺れによって床に倒れた都宏議員が勢いよく顔を上げて机の上のアタッシュケースを見た。地震の大きな揺れによって、麻希以外の人間は散り散りに倒れていた。それを見て麻希がスモークグレネードを投げる。部屋の中心に落ちると同時に煙幕が上がる。麻希が足下が激しく揺れる度に躓きながらも都宏議員とスーツの男の間の机に置かれたアタッシュケースへと駆ける。

 天井の消防装置が反応してけたたましいベルの音を鳴らす。スプリンクラーが起動して勢いよく水をまき散らす。揺れが徐々に小さくなっていく。麻希がアタッシュケースを抱え込んだのを見て、逸賀灼は叫ぶ。


「麻希さん! 窓へ!」


 逸賀灼が身を起こすと同時に駆けだして、窓の側に立った麻希の腰を抱えるとそこから飛び出した。七階のホテルの部屋の窓から外へと飛び出した先は何もなく、逸賀灼には小さな地面が見えた。


「麻希さん、カフトワンダーを! 急いで!」

「ツェット・オクタ、解放しますわ!」



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