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魔法少女は死んだ  作者: 茶竹抹茶竹
3章・enjoying death,just like this
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【7-5】

7-5


 戦闘が終了した。祐希奈-ゆきな-と合流した月夜風花-つや ふうか-は浮瀬南陸斗-うきせな りくと-の話を聞く。浮瀬南陸斗の口は軽くはなかったが、沈黙を挟むことなく等々と言葉を語る。


「ヘイムスクリングラの偽書は、どうしても必要なものなんだ。内容は明かせない。けど誰かを悲しませる為に使ったりはしねぇ。それを信じてくれ、としか言えない」

「そんなの信用できる訳ないよ」


 祐希奈の言葉を月夜風花は制した。


「陸斗さんは祐希奈を狙わず私の誘いに乗った。譲れないものがあっても、それでもなんて言うか、仁義みたいなものを通してくれた。だから私は信じたい」


 浮瀬南陸斗はその言葉に小さく笑う。

 祐希奈という存在をあの場では一切考慮せず、月夜風花は浮瀬南陸斗を廃ビルへと誘導し、そして彼女はその誘いに乗った。その事実が月夜風花にそんな言葉を言わせたのだった。

 浮瀬南陸斗は少し俯いて悩む素振りを見せてから顔を上げた。


「取引だ。うちが掴んでるカードの居場所を教える。それと交換だ」

「情報のコピーなら渡す、それで良い?」


 即答した月夜風花に浮瀬南陸斗は少し目を丸くする。浮瀬南陸斗の取引情報を精査する気も無かったかの様で。嘲るように乾いた笑い声を出して浮瀬南陸斗は呟いた。


「ありがとう。

 台場駅近くのマンション建設予定地だ。カードの気配は察知できたんだが発見できなかった。月夜の機転なら上手いことやれるかもしれない」

「別に教えてなんて言ってないのに」

「うちの中でのケジメみたいなもんだよ」


 浮瀬南陸斗がそう言って。月夜風花は問いかける。


「なんで最初から武力なんて手段に頼ったの」

「逆に聞くぜ。なんであの時言葉で解決できると思った」

「陸斗さんが良い人だと思ってたから」

「見知らぬ誰かを信じるなんて馬鹿な事、うちには出来ねぇよ」

「私がそう決めたんじゃない。陸斗さんの事をそう言った人が居たから。だから信じてみようと思った」

「あの衛都楼-えとろう-ってやつか」


 月夜風花と初めて会った時の事を思い出し浮瀬南陸斗は、衛都楼水希-えとろう みずき-という人物を記憶から手繰り寄せる。

 浮瀬南陸斗が渡してきた携帯電話を受け取って月夜風花は祐希奈に向けて手を出した。祐希奈は、まだ少し躊躇している様であったが頷いてSDカードを月夜風花に渡した。ヘイムスクリングラの偽書、とされているデータをコピーする。データコピーの進捗を示すバーが延びていくのを見ながら月夜風花は言う。


「水希さんはいつも世界の正解の方に居る人だから。だから水希さんがそう言うなら陸斗さんはきっと良い人だろうなって」

「世界の正解の方ねぇ」


 浮瀬南陸斗が立ち上がる。祐希奈が少し後ずさった。データのコピーが終わって彼女の携帯電話を月夜風花は返す。それを受け取った返事として、浮瀬南陸斗は渋い声で問いかける。


「なら、月夜は間違っているのかよ。なら、うちは間違っているのかよ。そいつが正解なのは、人格か行動か存在か。その何れかであるなら、その基準は何処にある。それは何によって形成されるんだよ」

「それは」


 浮瀬南陸斗は携帯電話を仕舞うと月夜風花に背を向ける。


「自分の選択した事くらい、何よりも正しいんだって胸を張ってみろよ」


 月夜風花はその言葉に何も応えなかった。大鎚を引きずりながら廃ビルを後にして浮瀬南陸斗は近くの大通りまで出ると立ち止まる。何処に隠れていたのか、浮瀬南陸斗の元に走ってくる高嶺-たかね-の姿があった。高嶺が浮瀬南陸斗に抱きつくと泣き出した。


「なんで泣いてんだよ」

「だって、浮瀬南がぁ。やられちゃうとおもってぇ」

「とりあえずコイツを仕舞ってくれ」


 そういって浮瀬南陸斗は高嶺を優しく引き剥がすと大鎚を振る。高嶺が大鎚に触れると、突然それは金の破片へと変わって、その破片すら消えていく。

 近くで隠れて一部始終を見ていた筈の高嶺が途中であの場に乱入してこなかった事に浮瀬南陸斗は安堵していた。声を上げて泣く高嶺の頭を撫でながら、堪えきれずに笑い出す。


「もう泣くな、って」

「浮瀬南がこれからも絶対無事で帰ってくるって約束するなら良いよ」

「縁起でもねぇ、当たり前だろ」


 高嶺がまた浮瀬南陸斗に抱きついて。彼女の頭を抱き寄せて浮瀬南陸斗は呟く。


「後はヘイムスクリングラの書と、逸賀灼か」


【7枚目・皇帝の最善手-コード・ドーラ- 完】


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