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魔法少女は死んだ  作者: 茶竹抹茶竹
3章・enjoying death,just like this
40/70

【7-2】

7-2


 壁際に追い詰められて咄嗟に月夜風花-つや ふうか-は壁に設置されている消火器へと剣を振る。切っ先がぶつかって金属音が鳴って、勢いよく白煙が舞う。目の前で散った粉塵に浮瀬南陸斗-うきせな りくと-は口元を腕で庇う。煙の向こうで動く気配に浮瀬南陸斗は咄嗟に引き金を引いて魔法を発動させる。

 浮瀬南陸斗には、展開したバリアに魔力の弾丸が直撃して弾ける様子が半透明の世界越しに見えた。月夜風花が銃口を真っ直ぐ向けてきており、そこから次々と放たれた弾丸を見て浮瀬南陸斗は動く。コード・ドーラ、皇帝の魔法はその程度の威力では抜けない。そのままバリアを展開したまま月夜風花まで距離を詰めに行く。

 展開したバリアに押し込まれ月夜風花は両足を踏ん張らせる。見えない壁に押し込まれるようで。


「皇帝のカード……!」

「皇帝に攻撃は通らないぜ!」


 咄嗟に月夜風花は足下に目をやる。バリアはドーム状で足下まで展開されている。全周囲に張られており死角はあるようには見えない。単純な物理障壁の形成ではないかと月夜風花は推測する。

 浮瀬南陸斗の周囲に半径約2メートルで展開された透明な壁。浮瀬南陸斗が一歩踏み込む度に見えない障壁が迫ってくる。浮瀬南陸斗が動くとそれに併せてバリアも動く様だ。単純に剣が押し込まれている以上バリアの表面には何もない。


「魔力の塊による力押し」

「小細工ばっかのそっちとはちげぇんだよ!」

「でも」


 月夜風花はバリアの表面を蹴り飛ばすと同時に魔力を噴出し後ろに跳ぶ。

 やはりバリアの表面に触れても問題はない。見えない壁に押し込まれるだけだ。それに。あのバリアの範囲はどうやら範囲を変えることは出来ないらしい。半径約2メートルのドーム状の壁が絶えず自分に合わせて動く以上、相手に近寄ればその壁は否応なしに相手に迫り排除する。

 つまり。あの大鎚でぶん殴る為に近付こうにも、近付けば近付く程見えない壁は相手を追いやってしまう。


「バリアを展開したままでは、一撃は入れられない」

「後ろの壁が持つならなぁっ! 壁とバリアに挟まれていっちまいな!」


 浮瀬南陸斗が跳んだ。一気に月夜風花へと距離を詰めに行く。

 それを見て月夜風花は一歩後退る。硝子が割れる音がした。その音に弾かれたように視線を遣る。天井の蛍光灯がバリアの壁に押しつぶされて割れた音だった。その破片が見えない壁沿いに滑り落ちていった。

 咄嗟に月夜風花は駆け出してスライディングで床を滑る。浮瀬南陸斗の下を潜り抜けると素早く立ち上がり駆け出す。「死刑囚」のカードを装填すると切っ先を向けて引き金を引いた。


「コード・ルートヴィッヒ」


 月夜風花の姿が消えて、そうして月夜風花の姿が離れた場所に出現する。カードを引き抜くとコード・ジークフリート「太陽」のカードに入れ替える。そうして浮瀬南陸斗は足下に落ちていた欠けたコンクリートの破片を大鎚で弾き飛ばした。小さな欠片であった筈のそれは大鎚で弾き飛ばした瞬間に二回り程巨大化した。月夜風花の姿にコンクリートの欠片が直撃し、その姿が消えた。身代わりが消えると共に離れた位置に月夜風花の姿が現れて、それが階段を地下に向かって駆けていくのが見えた。


「あいつには、他にもう手がないのか」


 浮瀬南陸斗はカードを引き抜き、「皇帝」のカードと入れ替えながら少し立ち止まり思考する。月夜風花が今まで見せたカードは「死刑囚」「塔」「節制」「愚者」、そして先程封印した「戦車」のカードを持っている筈だった。そして恐らく、それ以外の魔法を有しているようには思えない。

 それならば、一手づつ詰めていけばいい。「皇帝」のカードを突破できる方法は月夜風花にはないのだから。

 全周囲バリア。魔力による強固な壁を形成し物理、エネルギー共に受け止める完全な守りの一手。「皇帝」の名に相応しい、何者も通さない楯の魔法。並の火力で突破する事など叶わない。


「打てる手は、もう降参だけだぜ。月夜」



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