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魔法少女は死んだ  作者: 茶竹抹茶竹
3章・enjoying death,just like this
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【6-5】

6-5


「陸斗-りくと-さん?」


 私の言葉に顔だけを向けた浮瀬南陸斗-うきせな りくと-が、口の端を思い切りあげて笑顔を見せた。彼女に窮地を救われたという事実と、その行動が理解できず私は身動きが取れなくなる。大鎚を構え直し前を向いた彼女の後ろ姿に私は口を開けて呆けてしまっていた。

 彼女はこの状況を楽しめるだけの余裕があるというのか。


 鉄の虎が吼えた。それと同時に周囲に散らばっていた鉛色の液体が無機物では無いかのように動いた。見えない力で吸い寄せられるように飛び出して鉄の虎の元に集まると、互いに融合していく。

 そして一度、集まった鉄の虎の身体は液体のようになると、それは瞬く間にあの鉄の虎の元通りのフォルムへと姿を変えた。


「再生した……ってよりは」


 特殊な金属を集約し操る効果だろうか。

 姿を取り戻した鉄の虎が再び吼える。その背が液体のように一瞬滑らかに動くと棘が

生える。身体を構築している金属の一部の形状を変化させたようだった。

 鉄の虎が動いた。咄嗟に浮瀬南陸斗が大鎚を構える。飛びかかってきた鉄の虎を大鎚の柄で受け止めた浮瀬南陸斗は、その勢いに圧されるもなんとか踏みとどまった。それを見て私は咄嗟に鉄の虎の背後を取る。無数の棘が生えた鉄の虎の背に、魔法のカードがあるのが見えて私はそこへ剣を突き立てようとした。


「え?」


 しかし、剣が弾かれた。カードの表面に何か、そうバリアの様なものが見える。色彩の混じった六角形の硝子の板に見えるそのバリアに、私の剣の切っ先が意図も容易く弾かれる。

 鉄の虎の尻尾が動いた。それが一瞬で、まるで、鎌の様な形状へと変わり私に向かって振り下ろされる。咄嗟に身を翻しそれを寸前で躱して、鋭い鎌となった尻尾を弾き返そうと剣を振り抜く。刃が通らない筈の剣に確かな手応えがあって、切断された鎌の先が宙を舞っていた。


「変化した直後は軟らかいのか」

「だぁぁっ!」


 浮瀬南陸斗が怒声と共に大鎚を振り抜く。鉄の虎が宙を舞うようにして飛び退いた。鉄の虎の唸り声がして切断した尻尾の一部が液体化すると鉄の虎の元へ吸い寄せられるようにして飛んでいく。鉄の虎に吸収された身体の一部はまた再び尻尾へと姿を変えた。その形態変化の一瞬にカードの表面のバリアが消えたのが見えた。その瞬間なら狙えるということだろうか。

 何も言わず浮瀬南陸斗と並び立った私に向けて、鉄の虎から視線を外さずに彼女は言う。


「あの金属が再構築した瞬間にバリアが消えたように見えた。何か策はあるかよ?」

「いえ」

「試してみたい手がある。うちに協力する気はあるかい?」


 その言葉に私は彼女に視線を向ける。私には浮瀬南陸斗の思考も、狙いも分からない。前回、対峙した時。彼女の狙いは祐希奈が持っているというヘイムスクリングラの偽書だった。とはいえ、浮瀬南陸斗が私たちの前に現れるまで祐希奈の存在を認識していなかった。最初は、彼女もカードを見つけたからあの場に現れたのではないだろうか。

 判断するには状況はあまりに複雑で、そして判断するには材料があまりに不足していた。

 だが。今、最優先でやるべきなのはあの危険な鉄の虎を止めることだ。

 なら、浮瀬南陸斗と協力してカードを止める方が得策であると私は判断して頷いた。


「何をすれば?」

「見た感じ、あいつは分離した一部を吸収して姿を再構築する時に多少の隙が生じる。その一部が巨大なほど時間がかかるはずだ。うちには分離した一部に小細工出来る魔法がある。だから何とかあの一部を切り離してくれさえすれば、やつが再構築にかける時間を増やしてやる」


 確かに浮瀬南陸斗が半身を吹き飛ばした時、大きな隙が出来ていた様に見えた。だがあの身体はかなり強固であり、動きも俊敏である。浮瀬南陸斗の不意打ちでも無い限り大きな痛手は与えられそうにない。

 形態が変化する、金属が液状化した直後を狙えれば斬れるだろうか。


「液状化。状態変化をしているなら、あれが使えるかも」

「手があるんだな?」

「いけると思う」


 私の答えを聞いて浮瀬南陸斗が指を鳴らした。


「なら決まりだ。うちが背後を取る」


 浮瀬南陸斗が飛び出した。鉄の虎が動く。私はホルスターを指先で弾くと展開したカードの一枚を引き抜くと、剣に読み込ませる。

 浮瀬南陸斗が咄嗟にスライディングをして、真正面から飛びかかってきた鉄の虎の下を滑り抜ける。鉄の虎は着地と同時に浮瀬南陸斗を無視して、素早く私へと向かってきた。浮瀬南陸斗が私の名前を叫ぶ。

 それよりも先に私は剣の引き金を引いていた。鉄の虎はその四肢はまるで生物であるかのように動くが、その体表は金属そのもので非常に硬く刃は通らない。それならば、と私が思い付いた一手があった。

 剣に装填したカードの名を叫ぶ。


「コード・ヴィクトア!」



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