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魔法少女は死んだ  作者: 茶竹抹茶竹
3章・enjoying death,just like this
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【6-4】

6-4


 祐希奈-ゆきな-と共に廃ビルを駆け下りて敷地まで出るとあの鉄の虎はまだ居た。全身が鋼色の金属で出来た「鉄の虎」の前に立って剣を構えると、それはこちらの存在に気が付いた様だった。

 顔をこちらに向けてくる。やはりそのフォルムは虎をイメージして形成されているようであった。その顔は表面が金属特有の光沢と質感で分かりづらいが虎の様に見えるし、四肢の細部の曲線もそれそのものであった。

 逞しい四肢で四足歩行しており、地面を踏み締める音には金属音が混じる。尻尾に当たるであろう部分も鉛色の鋭利な針の様な形状が伸びていた。

 顔を模したと思わしき部分は、表面の隆起によって目や鼻、顎が表現されている。ただの窪みでしかない目に見つめられて、私の喉と、私の背を勝手に冷たい物が伝っていく。


「虎か……?」


 今まで私が対峙してきたカードの暴走の時とは、少し様相が違うように思えた。明らかに生物的で、何らかのモチーフを感じられる。「雷もどき」や「逆さ天秤」、「一つ目帽子」なんかとは全く違う。

 そこまで考えて私は思考を切り替える。

 いや、今までの異様な形状で気付けなかっただけで今までの物も意味があったのだろうか。

 魔法のカードはその枚数や効果が、タロットカードの大アルカナに対応して模したものとなっているのなら、そのフォルムも恐らく、大アルカナに描かれたその寓話画に対応しているのではないだろうか。

 虎がモチーフとなっているタロットカードなどあっただろうか。


「もしかして戦車か?」


 鉄の虎が動いた。大きく跳躍して私へと飛びかかってくる。その殺気迫る勢いに本物の虎の姿を重ねてしまう。

 その強靱な四肢はハリボテでは無いようで、そこから放たれた瞬発性に目を見張る。私は咄嗟に身を退くと、重たい音を立てて着地した鉄の虎をすれ違いざまに剣で斬りつけた。


「硬い!?」


 金属音が弾けて私の剣は届かない。咄嗟に避けるように擦れ違った鉄の虎の背には、その背に埋め込まれているカードが見えた。やはりカードの暴走であったようだ。今回のカード、恐らく戦車のカードは何の効果かは分からない。しかし、あの鉄の虎には敵意がある様に思えた。反応性の行動には見えなかった。一つ目帽子の時と同じで無差別な攻撃性を有していると考える。

 それを放って置くわけにはいかない。


「それに、速い!」


 鉄の虎が着地と同時に地を蹴って横っ飛びする。その俊敏性に私の視線が一瞬遅れた。飛び込んできたその巨体が繰り出した前足の一撃で構えた剣ごと私は吹き飛ぶ。地面を転がって素早く身を起こすと駆け出す。一瞬遅れて背後で重たい着地音がした。

 カードは既に露出している。あれに触れさえすれば良い。鉄の虎の体表は恐らく金属製でかなりの硬度がある為、簡単に攻撃は通りそうにない。いつものように破壊してカードを露出させるより、何とかカードに触れることを考えた方が良さそうだった。

 体勢を整えると、再び向かってきた鉄の虎に向き直る。真正面からその突進を剣を立てて受け止める。予想以上の衝撃と勢いに圧されて私は体勢を崩して、地面に背中から倒れる。肺が跳ねて息が詰まる。


「しまっーー!?」


 私にのしかかる鉄の虎の姿があった。目の前で鉄の虎の振り上げた前足の鋭い爪が迫ってくるのが、まるでスローモーションであるかのように見えた。鉄の鈍い色をした鉄の鋭い爪先が、残像を翻して私の視界を一杯にする。私の喉が呼吸すら拒絶して。


「っーー!」


 脳の奥が鋭い痛みを放ったその瞬間。

 目の前の鉄の虎の姿が弾け飛んだ。まるで空で黒い影がはためいた様であった。

 視界から勢い良く消えた鉄の虎は吹き飛ばされた衝撃で地面を転がった。吹き飛ばされたその身体の一部は、周囲に弾け飛んでいた。身体の「破片」として、地面には鋼色の粘着性のある液体が散らばっている。融解した金属が冷え固まる手前にひどく酷似した様態であった。

 上半身だけ残った鉄の虎は二本の前足だけで身体を無理矢理支えようとしていた。下半身が吹き飛び、それは寸前まで、地面に落ちている液状の金属で構築されていたということであるなら、鉄の虎の身体を構築しているのは何か特別な力が働いているのであろう。


「んだよ、面白そうな事になってんじゃねぇか」


 私の前に着地した後ろ姿。盾を模した紋章が金の刺繍で入った黒いマント。それから覗く、これまた金の装飾が施された黒のワンピース。腕や足には金のバングルが填めてあり、ワンピースのスカートから覗く白い肌の表面には微かに魔力の光が見えた。身の丈程はある金属製の柄に、よく似合った巨大な頭を持った大鎚。グレーのメッシュの入った癖毛混じりの黒いショートヘアー。男勝りな言葉遣い。あれほどの質量を持つ巨体を弾き飛ばす重たい一撃。


「なんで、また。こんな」


 浮瀬南陸斗-うきせな りくと-が其処にいた。



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