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魔法少女は死んだ  作者: 茶竹抹茶竹
3章・enjoying death,just like this
31/70

【5-4】

5-4


 祐希奈‐ゆきな‐が浮瀬南陸斗‐うきせな りくと‐に向けて両手を広げて叫ぶ。


「なんで、こんなことするの。魔法はみんなの事を助けられる力なのに。魔法少女同士で争うなんてこと」

「何、勘違いしてんだよ。魔法ってのは利己的に使うもんだろうが。他の誰にも無いうちらだけの力だ。持っているものをどう使おうが、うちの勝手だろうが」

「でも!」


 鈍い音がした。祐希奈が倒れ込む。蹴りを入れた足をゆっくりと下ろして浮瀬南陸斗は前を向いた。無理矢理と言った感じで立ち上がっている月夜風花‐つや ふうか‐の姿を認める。荒い呼吸、血の混じった声。


「私もそれには同意する」


 月夜風花の言葉に浮瀬南陸斗は拍子抜けした。てっきり祐希奈を蹴り飛ばした事に対して激情でもするか、それとも夢物語の様な言葉を吐くかと思っていた。だが、彼女は浮瀬南陸斗の言葉を肯定した。


「だから、あなたはぶっとばす」

「ちっこいのが持っている偽書の意味も知らないやつが、でしゃばってくんじゃねぇよ」


 浮瀬南陸斗が大鎚で地面を叩いた。地面を穿つ硬い衝突音と、彼女の衣装に巡らされた金の鎖の跳ねる音が重なる。


 その瞬間、月夜風花の脳内で弾ける様に幾つもの光景が巡った。

 制御。好機。余裕。刃。節制。隙。思考。大鎚。遠隔操作。身代わり。本命。金属音。知性。石突。飛行。幻影。映像。カード。衝撃。嘘。反応。空気。衝突。魔力。直撃。空中。空振り。至近距離。行動。魔法。音。塔。雷。


「大体分かった」


 月夜風花が節制のカードを剣に装填して引き金を引いた。何が起こるわけでもなく、剣の装甲部に挿入していた節制のカードが半分飛び出してきた。それを指先で引き抜くと、塔と死刑囚のカードを二枚手にする。死刑囚のカードを差し込み、そうしてまた引き金を引いた。

 今度も何も起こらず悠長にカードをまた入れ替えている月夜風花の姿に浮瀬南陸斗は怒声と共に左手を振るった。大振りな動きと声。


「隙だらけなんだよ!」


 四本の刃が浮瀬南陸斗の側で舞うと切っ先を月夜風花へと向けて突進する。刃が向かってくるのも気にせず月夜風花は塔のカードを差し込む。金属の噛み合う小さな音が確かな手応えとなる。

 隊列を組んで向かっていった刃は、それを気にもせず微動だにもしない月夜風花の直ぐ側を駆け抜けていく。直ぐ側を過ぎていった刃に視線すら向けず月夜風花は剣の引き金を引いた。甲高い金属音が響いて月夜風花は満足げに剣を構える。


「やっぱり」


 月夜風花は刃を避けようとさえしなかった。その事に浮瀬南陸斗は驚く。

 まさか、という仮定が頭を過ぎる。カードの効果、月夜風花は刃の魔法の正体に気が付いたとでもいうのだろうか、と。その考えを浮瀬南陸斗は直ぐに否定する。刃の魔法の正体を見抜ける要素など無い筈であった。慎重である程に、その仕組みに気付くことは難しい筈なのだ。見ただけで気が付けるわけがない、と。


「破れかぶれで避ける事も忘れちまったのかよ!」

「イクス・ガンスノッドスエルツェ!」

「突進しかもう手がねぇってか!」


 月夜風花が剣を持ち上げて突進する。浮瀬南陸斗の手の動きと共に刃が空中で反転し、その切っ先が月夜風花へと向く。真っ直ぐに向かってくる月夜風花の真正面に刃を呼び戻す。浮瀬南陸斗が真正面に刃を撃ち出した。それと同時に駆けだして月夜風花への距離を詰める。月夜風花は変わらず真っ直ぐ向かってくる、その様子に浮瀬南陸斗は勝利を確信する。

 真正面から向かってきた刃に反応すれば、それだけ大きな隙が出来る。躱そうが防ごうが真正面から突っ込んできたこの距離では、大鎚の一撃をどうこうする術は無い。

 四本の刃が真っ直ぐに飛翔する。直撃コースに月夜風花はその勢いを止めない。浮瀬南陸斗が大鎚を振りかぶり地面を蹴って跳んだ。それを見て月夜風花は切っ先を上に向けて浮瀬南陸斗の方を向く。


「刃にぶっ刺される方がマシってか!」


 刃が月夜風花へと突き刺さらんとする。浮瀬南陸斗はほくそ笑む。刃に反応すれば大鎚の一撃を受け止める時間はない。


「さぁどうする! 月夜ぁっ!」

「問題ない」




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