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魔法少女は死んだ  作者: 茶竹抹茶竹
3章・enjoying death,just like this
28/70

【5枚目・世界改変の音が聞こえたら】

5-1



「魔法少女ってことは、そこのちっこいのは祐希奈か」


 浮瀬南陸斗‐うきせな りくと‐が其処にいた。

 白煙を抜けて姿を現した彼女は、その手にした大鎚を地面を突き立てる。鈍い音がして穿った痕が残る。祐希奈‐ゆきな‐が一歩後ずさる。咄嗟に彼女を隠すように月夜風花‐つや ふうか‐は一歩前に出る。手にした剣の柄を強く握り締める。

 浮瀬南陸斗は魔法少女という単語を口にした。彼女は魔法について知っている。それがどういうものかを理解し、そしてそれを自分の物としている。彼女の奇妙な格好も簡単に説明が付く。あれは魔防膜だと。

 黒のワンピーススタイルで細部には金の装飾が施されており、腕には金のバングルが幾つも填めてある。腰回りには金の鎖が巻いてある。肩には派手な金の刺繍が入ったマントを羽織っており、そのマントの背には盾を模した紋章が刺繍となっていた。

 祐希奈を睨みつけて浮瀬南陸斗は言う。


「ちっこいの、ヘイムスクリングラの偽書を持ってんだろ。それをうちに寄越せ」

「嫌!」


 その声に浮瀬南陸斗が不機嫌そうに眉を上げた。彼女はゆっくりと大鎚を持ち上げる。その目は冷たく感情が読みとれない。

 ゆっくりと浮瀬南陸斗が大鎚を持ち上げたまま祐希奈の元へと向かう。祐希奈の前に立ちふさがって月夜風花は怒鳴る。


「何なんだ、こんなの。陸斗さん! 祐希奈ちゃんを怖がらせて。ヘイムスクリングラの偽書って何なんだ」


 月夜風花の言葉に浮瀬南陸斗は苦虫を虫歯で噛み潰した様な顔をした。浮瀬南陸斗がその視線を月夜風花に向ける。


「邪魔すんなら、何だろうと潰す」



【5枚目・世界改変の音が聞こえたら】



 対峙していた浮瀬南陸斗が地面を蹴った。走り込むと同時に背後に回した大鎚を勢い良く振り上げる。荒い足音を聞いて咄嗟に月夜風花は前に出る。剣を地面と刃が平行になるように突き上げた。前に出てきた月夜風花へと浮瀬南陸斗が咄嗟に大鎚を振り下ろす。その一瞬の隙を突いて月夜風花は大鎚の柄の部分に刃をぶつけて勢いを殺し柄を受け止める。激しい金属音が鳴って、その耳障りな音に月夜風花は顔をしかめる。鍔迫り合いの形となった状況に浮瀬南陸斗が口の端を上げる。

 大鎚の柄の長さからリーチを考慮して、突進を避けることをせずに咄嗟に前に出てきた。その判断力に素直に感服する。あの一瞬で懐に飛び込む方が安全だと判断したというのか。


「素人じゃねぇな」

「いきなり、一体何!?」


 月夜風花が刃を傾けて浮瀬南陸斗の押し込んでくる力を去なして受け流す。浮瀬南陸斗がよろけてつんのめる。彼女の服の鎖がぶつかり合って細かな金属音を立てる。咄嗟に剣を振るおうとして月夜風花は真横からの衝撃を受けた。浮瀬南陸斗の回し蹴りが脇腹に直撃してその衝撃に呼吸が遠退く。

 咄嗟に身を翻して距離を取ろうとした所に浮瀬南陸斗の放った拳が月夜風花の頬をぶち抜いた。揺れる視界の中で浮瀬南陸斗が大鎚を振り上げたのが見えて、月夜風花は剣を振り抜く。鈍い空気の音に浮瀬南陸斗が一歩身を引く。退いた所に真正面から剣の一太刀を振り下ろす。大鎚に阻まれて甲高い金属音と共に剣が弾かれる。浮瀬南陸斗が動くよりも早く、一歩踏み込んで斜めに剣を振り下した。浮瀬南陸斗が手首を返して大鎚の柄を向けて刃を真横から弾いて切っ先をずらす。咄嗟に月夜風花はしゃがみ込む。頭上を浮瀬南陸斗の蹴り上げた足が通過する。剣を振り抜くことが出来ず立ち上がると共に刃を押し込むように浮瀬南陸斗へと突進する。大鎚の柄に刃は阻まれて硬い音が響く。

 目の前に浮瀬南陸斗の顔があった。息苦しくなって荒い息を吐き出すと、その音に無意識の内に呼吸が止めていた事に気が付く。


「なんだその動き。剣道じゃねぇし。何処の流派だ、見た事ねぇ」

「陸斗さん、何なんだこれは!」

「ただこいつはお稽古じゃねぇ」


 浮瀬南陸斗が動いた。咄嗟に月夜風花は足下を蹴って宙に跳ぶ。空中に飛んだ月夜風花に浮瀬南陸斗が小さく口笛を吹いた。左手を腰に持って行き指先を弾く。腰に備えてあったホルスターが蛇腹状に展開し、浮瀬南陸斗がその手にカードを持っていた。


「カード……魔法!?」

「そりゃ魔法少女だからよぉ! イュプスィロン・エイロード、コード・リヒャルト!」


 浮瀬南陸斗が大鎚に備え付けられたカード読み取り部にカードを挿入して手元の引き金を引く。大鎚が呼応すると浮瀬南陸斗がそれを思い切り真下に振り下ろした。轟音と共に地面を叩くと同時に彼女の周囲に何かが出現する。

 それは刃であった。刃は酷く特徴的で縦長の六角形をしている。刃は分厚く銀色で1メートルはあろうかという大振りの物。柄に当たる部分は見あたらない。それが同じ形状で四つ出現していた。浮瀬南陸斗の背後にまるで羽の様に展開した四つの刃は、何にも触れずに宙に浮遊したまま静止している。


「なんていうかよ、こんな武器がさ。ガンダムにあったよなぁ!?」


 浮瀬南陸斗の言葉と共に刃が反応した。嫌な予感がして月夜風花は宙を蹴って距離を取る。浮瀬南陸斗が手を動かすと静止していた刃が一斉に動き出した。加速して勢い良く刃が月夜風花へと向かっていく。飛翔してきたそれを見て月夜風花は飛行制御に集中する。高速で直線的に向かってきた刃。四枚の刃は並んで一様に切っ先を月夜風花へと

向けていた。飛翔している刃に動力らしきもの見当たらず、動力は魔力によるものかと判断する。


「念動力?」


 月夜風花が空中で身を捻って飛んできた刃の射線から一気外れる。狙いを外された四枚の刃が彼方へと飛んでいった。月夜風花は彼方に見送った刃に背中を向ける。

 速度はかなりのものであるが、注意していれば避けるのはさほど難しくはない。刃は大きく視認しやすいし、切っ先を向けて突っ込んでくるなら範囲も一点。

 刃を直線的に射出する魔法であろうか、と推測する。あの刃は恐らく魔力で形成されたものであろうとも。コード・リヒャルトと言っていた。どの様な効果のカードであるのかを推測する。


「終わり?」

「そう言うときは、大抵上を見るもんだぜぇ!」


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