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魔法少女は死んだ  作者: 茶竹抹茶竹
2章・stay in forward for world
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【4-4】

4-4


 決着はゲームで付けよう。そう言って彼女が取り出したのはトランプであった。首を傾げる衛都楼水希‐えとろう みずき‐の前で、手際よく数回カットしてからその手のひらに収まった一組の山の一番上を彼女はめくった。表に返った一枚目のカードはダイヤのエースでそれを衛都楼水希に良く見せつける。

 そうしてから一番上のカードになるよう、また裏返しに戻すと彼女は片方の手のひらで手の内のトランプの山を隠した。そうして何度か撫でるような素振りを見せてから再びトランプの山を衛都楼水希へと向ける。


「これで一番上のカードがダイヤかどうかを当ててみな。確率は四分の一だぜ」

「ダイヤのエース」


 私は、彼女の言葉を最後まで聞かずに答える。即答した私に向けて勢い良く衛都楼水希が振り返った。衛都楼水希が驚いているのも気にせず、私は手を伸ばしてトランプの一番上を表に返した。ダイヤのエースのカードが変わらず其処にあった。私はカードを元に返しながら言う。


「ああやってあたかも何かマジックをしているような動きを見せれば相手は警戒するし、しかもゲームの内容を後出しで持ちかけられれば何かをされたと疑心暗鬼になる。だから割の良い二択。イカサマをしたというハッタリ」


 衛都楼水希が興奮気味に問いかけてくる。


「何で分かっちゃったの、凄くない」

「別に、外れても良いかなって」


 トランプを仕舞った女性は、ケーキのフォークを指先で回して笑う。堪えきれずといった感じで笑い出した彼女を見つめると、回していたフォークの先を私に向けてきた。


「あんた良い度胸してるよ」


 ゲームに勝った私達は彼女からケーキを分けて貰えることとなった。目一杯にケーキの積まれたテーブルを囲む。

 何だろうか、この展開は。と私は思うがそんなこと衛都楼水希は気にもせずケーキを全て食べ尽くしてやろうと意気込んでいるように見えた。ケーキの女性は、フォークを回しながら私達に聞く。


「お前ら、名前は」

「あたし、水希。こっちは親友の月夜‐つや‐ちゃん」

「親友なんだ、私」

「あたしがケーキを食べれるなら、そのきっかけを作ってくれた人はもう親友だよ」


 衛都楼水希の言葉に女性はひとしきり笑って言う。


「じゃあ、うちも親友なのかい。浮瀬南陸斗‐うきせな りくと‐、宜しく頼むぜ」

「浮瀬南ちゃんは大学生?」


 衛都楼水希の問いに浮瀬南陸斗はフォークを回して答える。先程から気にかかっていたのだが、どうも彼女は手癖が悪い。指先がじっとしていること何て殆ど無い。


「いや、働いてんだ」

「何の仕事?」

「危ないお仕事」

「えぇー」


 衛都楼水希が大袈裟に驚いてみせた。モンブランの山をフォークで切り崩しながら私は黙って二人のやりとりを聞いていた。ケーキを食べている衛都楼水希は満足げでいつもの倍はお喋りであった。

 浮瀬南陸斗は短い髪やその乱暴な言葉遣いからまるで少年の様に見えたが、よく見れば顔付きはあどけなさの残る少女のもので。衛都楼水希の言葉に忙しく表情を変えていた。

 二人の会話を聞きながら私は勝手に感心する。衛都楼水希はこうやって人間関係を構築していくのか、と。初対面にも関わらずこんなにも打ち解けた風になっている。私にはとても真似できない。

 そういえば、浮瀬南という苗字をどこかで聞いたような覚えがある。どこでだっただろうか。


「衛都楼達は高校生だろ? この辺なのか?」

「キタヨだよ」

「キタヨ……、あぁ北代々木‐きたよよぎ‐高校か。じゃあ、頭良いんだな」

「あたしは全然だけどー。月夜ちゃんは、めちゃ頭良いよ」


 大きな栗の実をケーキの中から掘り当てていた私は、突然話を振られて驚いて顔を上げる。浮瀬南陸斗が半分に切った1ピースのケーキをそのまま口に放り込んだ。二人の手と口によって物凄い勢いで減っていく卓上のケーキに私は一個目のケーキで段々と食欲を無くしてきた。


「浮瀬南ちゃんはケーキめちゃ好きな感じ?」

「好きだぜ、っていうか身体が求めちまうんだよ。こんな美味しいケーキがあるなんて良い街だな、ここは。暫くこっちで生活する事になったんだが幸先が良いぜ」

「引っ越してきた感じ?」

「仕事の都合で暫くな。暫くこの辺に居るからよ、どっかで会ったら宜しくな」


 そう言って最後のケーキを平らげた浮瀬南陸斗は店を出ていく。衛都楼水希に連れられて私も店を出た。変な人と会ったな、と思う。面白い人だった、と彼女を表する衛都楼水希の話に相槌を打ちながら、駅の前で水希と別れる。


「浮瀬南ちゃん。絶対良い人だったねぇ」

「そう? 変な人だと思うけど」

「フツーさ、全くの他人からケーキ食べ過ぎって文句言われて相手にしないよ。しかもそれを寄越せ、なんて言ってくる人なんてさ」


 自覚はあったのか。私は変な人という評価の対象を浮瀬南陸斗でなく別の人間に与えるべきだったか、と考え直した。


「でも浮瀬南ちゃんはゲームで決着を付けようって言ってきたんだよ。それってスゴいよ。争ってでも争わない選択肢を選んだんだもん」

「争ってでも争わない選択肢?」


 自己矛盾を孕んだ様に聞こえるその言葉に私が首を傾げると、衛都楼水希は笑いながら私に手を振って改札を潜っていく。言葉の正解は教えて貰えなかった。

 時間を確認する。思ったより遅くなってしまっていた。今から戻る、と家に居る祐希奈と姉に連絡しようと思った時。足下が大きく揺れた。咄嗟に身構える。周囲からちょっとした悲鳴が上がった。地震だった。震度は3くらいだろうか。ここのところ、本当に多い。

 携帯電話が鳴ったので出ると、祐希奈‐ゆきな‐の慌てた声がした。


『風花‐ふうか‐ちゃん、今どこ!?』

「新宿駅の近く」

『カードが出現するかもしれないの! 駅に居て、祐希奈もそっちに行くから』


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