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魔法少女は死んだ  作者: 茶竹抹茶竹
2章・stay in forward for world
22/70

【4-2】

4-2


 ファシロペウムの世間に公表する。それを取りやめて欲しければ1000万円を用意しろ。その様な文書が上幹‐かみもとき‐代表に届いた。要求は単純、だがその脅迫事件はもう少し複雑な様相である。

 一人の医師が自殺したのが発見された。投身自殺であり、深夜にビルの屋上から飛び降り即死。彼の遺留品等から分かったのは、彼が山盤寺‐さんばんじ‐という人物で、なおかつ上幹代表を脅迫していた事が露呈する。


「その、ファシロペウムとは何ですか」

「分かりませんが、薬物の類ではないかと」

「薬物?」

「ファシロペウムという物質は存在しません」


 存在しないものの公表を脅迫のネタにした。それはどういうことなのだろうか、と逸賀灼‐いちかあらた‐は麻希‐まき‐に続きを促す。


「ファシロペウムという謎の用語、山盤寺医師が児童養護施設の代表上幹を脅迫。そこから推測されたのは、施設の子供が何らかの薬物に手を出していたことを山盤寺医師が知り、その事実で脅したというものですわ」

「実際は?」

「上幹代表は山盤寺医師との一切の関係性を否定しました。脅されていたのは事実でしたが、ファシロペウムというものには一切の心当たりはないと証言したのですわ」


 当時、自殺した山盤寺医師の所持品に上幹代表に宛てた脅迫文書が見つかったことからその脅迫事件は発覚したのだ。けれども、上幹代表は脅迫のネタであるファシロペウムについて一切を知らず故に無視を決め込んでいたと述べた。

 心当たりが無いのに脅迫されたら、より一層無視を決め込めるものではないのではないだろうか、と逸賀灼は思いながら腕を組む。


「何か今回の一件に関係はあるのでしょうか」

「ちょっと調べてみますか」



【4枚目・罪の名を呼んでみよ、空に描いた境界線】



「これ、怪しいですね」

「今日のお昼ご飯を食べたかどうかですの?」

「違いますよ、食べましたよ。なんでちょっとそのネタを気に入ってるんですか」


 警視庁に戻って文書室のソファで寝転がって雑誌を読んでいた逸賀灼は身を起こす。読んでいた六年前に発行された週刊誌のページを麻希に見せる。その週刊誌について調べてみると、発行部数は大手週刊誌と比較も出来ないマイナーな週刊誌であり、四年前に休刊となっていた。


「確かに怪しいですわね、持ってるだけでお金持ちになれる宝石なんてあるわけありませんわ」

「広告の話じゃないですよ」

「わざとですの」


 逸賀灼が手を止めたのは「ひまわり」の職員の不自然な釈放という記事であった。傷害事件を起こした職員が執行猶予付きで異例の早さで釈放されているというのだ。扱いとしては小さなものであるが「ひまわり」の名前が出ている。職員の名前は伏せられ「T」というアルファベット1文字で書かれている。職員名簿を思い出す。少なくとも今の職員に「T」で始まるのは、その時には外出しており会えなかった東占‐とうじめ‐しか居なかった。

 週刊誌で小さくしか取り上げられなかったが、「T」の執行猶予付きでの釈放は「ひまわり」の経営者である上幹代表と国会議員の都宏‐つひろ‐議員が深い関係にあるせいでは、との事だった。都宏議員は「ひまわり」の協賛者であり多額の出資をしているようである。


「麻希さん、国会議員の都宏について何か知っていることありますか」

「いえ」

「ちょっと調べてみてください」


 幾つか捜してみたが、その週刊誌以外にその一件について触れている記事は無い。注目を引きそうな内容であると思うのだが。また、その週刊誌の次の号でも、「ひまわり」と「T」、そして都宏については一切触れられていない。

 どうも気にかかる。


「どうもトラブルの多い組織らしいですわね。調べるんですの?」

「ひまわりの職員であるこのTという男の起こした傷害事件は、どうやら拳銃による負傷者を出したみたいです。それがこれだけの扱いというのも妙ですよね」

「確かにそうですわね」


 逸賀灼は少し考え込む。

 どうするか。「ひまわり」から発信されたメールが、機関ミズガルズのカフトワンダー極秘譲渡の情報源である。この「ひまわり」に絡んだ過去の二つの事件は、今回の一件に何の関係性が有るわけでもなかったが、逸賀灼にはどうも引っかかった。本当に偶然で、メール送信元の偽装先にこの「ひまわり」が選ばれたのだろうか。何か意図的なものが存在してもおかしくないような気がしていた。国会議員の都宏という存在も気にかかる。


「麻希さんは、ひまわりについて調べて下さい。僕は芦ヶ場‐あしがじょう‐の殺害について追います」


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