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魔法少女は死んだ  作者: 茶竹抹茶竹
2章・stay in forward for world
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【3-2】

3-2


 無数に分裂していく逆さ天秤。これは恐らく実体がない偽物だ。魔力による干渉を受けると分裂する。言うなれば身代わり。本体のカードが何処かにいて、この偽物達を生み出しているのだと考えられる。

 なら、本体は何処にいるのだろうか。と私は思案する。

 私の攻撃をすり抜けて、何も変わらずに直進していった逆さ天秤は私とすれ違った後も進行し続け、その姿は私の遙か後方にあった。やはり、こちらの存在を全く意図していない動きの様にやはり思える。

 塔のカードの時、あの「雷もどき」は特定の行動パターンによって動いていた。カードには魔法発動の為の術式を組み込まれているのが関係しているのかもしれない。周囲の状況に左右されない進行ルートから、今回の逆さ天秤も何らかの行動パターンがあると考えるのが自然だろう。

 逆さ天秤のスピードは一定の様に感じられた。基本、逆さ天秤は直線的に動いていくだけであるが微妙に、その軌道は曲がっている。高度に一切の変化はなく進行方向に障害物があっても考慮しない。

 今度のは何だ。


「身代わりの本体か」


 ふと思い付いて、私は袴の腰の辺りに手を入れて携帯電話を取り出す。設定画面でGPS機能を起動して地図用のアプリケーションを呼び出す。逆さ天秤の方を見て宙を蹴った。

 空中飛行のコツが段々と掴めてきた。思い切り宙を蹴る、そしてそれと同時にそのイメージを作り出す。急加速して逆さ天秤の、その後を追いかける。正面からぶつかってくる風圧に私は腕を翳す。毛先が暴れて視界の端を邪魔する。眼下に新宿の街が見える。いつも見上げるしかなかったビルに切り取られた空、そこから見るビルの天辺。

 逆さ天秤の速度は変わらないまま移動を続けていた。分裂して増えても一糸乱れぬ横一列の隊列を組んだままである。下を見て距離感を測る。高度が変動しているようにはあまり感じられない。逆さ天秤の方をまた見つめる。


 逆さ天秤は、やはり少し右向きに進行方向が傾いているように感じられた。私は逆さ天秤に銃口を向けた。照準から逆さ天秤をわざと外して引き金を引いた。撃ち出された弾丸が逆さ天秤同士の間を通り抜ける。

 特に何も反応がなかった。私は銃を収納すると飛ぶことに専念する。

 逆さ天秤を追いかけて飛びながら私はふと考える。私は今まで魔力という物は持っていた。けれど、それを使いこなす事が出来なかった。こんな風に自在に空中を飛行するなんてこと、考えたこともなかった。それが、今。こうして簡単に叶っている。それは恐らく、カフトワンダーの影響であると思う。

 祐希奈‐ゆきな‐はその真偽は定かではないにしろ、カフトワンダーの為に造られたと言っていた。それはどういう意味なのだろうか。彼女が人工物、例えばクローンの類の様なものだというのはあまり想像できない。それだけの技術力が、この現代に存在しているというのだろうか。

 いや。

 手に握ったカフトワンダーを見つめる。これだって大した技術力だ。知覚すら出来ないはずの魔力を人工的に生成し操ることが出来る兵器。そんなものが極秘裏に造られていた。祐希奈に乗せられるままこの一件に本当に首を突っ込んでいいのだろうか。

 けれども、ここで剣を手放す気も無かった。


「これで一周」


 逆さ天秤の後を飛び続けいていた私はその軌道が一周した事に気が付く。元いた位置まで戻ってきた。目星を付けておいたビルが私の丁度真下の位置にあった。私はそこで空中での静止をする。視線を向けると、逆さ天秤は変わらず飛び続けていた。


 逆さ天秤の動きは一定だ。障害物を考慮せずに回避しないで動く。此方からの攻撃にも無反応だ。ビルの排気ダクトにぶつかったとき、逆さ天秤はすり抜けたように見えた。私の剣も当たらなかった。

 故にあれは何らかのホログラムの様な物だと考える。空間に投影された映像であり、故に物理干渉は一切受け付けない。ただし、魔法のカードによって生じている物であるために、あれは魔力によって構成されているようである。剣に内蔵された銃で魔力の弾丸を撃ち込んだ際に逆さ天秤は反応した。分裂という形で。

 そしてあの一定の動きには特徴がある。変わらない高度と、直線軌道では無いと言うこと。飛行という移動経路の為に意識しづらいが、逆さ天秤は直線方向に対して右斜め十数度に向かって飛んでいる。その角度で長距離を飛ぶと、結果的にその軌跡はとある巨大な図形となる。逆さ天秤は、円を描くように移動しているのだ。

 私は携帯電話を取り出した。起動しておいた地図アプリを確認する。GPS観測による私の移動した経路が記録されていた。


「正解ってことか」


 私の移動していた経路は、地図の上で綺麗な円を描いていた。歪みの一切無い完璧で巨大な円形。カードは何らかの行動法則が設定されている。それが意図的なのか偶発的なものなのかは分からないが、今回のカードも同様に何らかの行動法則があると睨んでいた。そして、今私の前に完全な丸が出現した。

 逆さ天秤は偽物で、本体つまりカードを存在しているのはべつの場所だと考えていた。そして。


「完璧な円。途中の障害物を一切考慮しない動き。恐らく、その中心」


 逆さ天秤の移動経路は完璧な円であり、その中心に当たりを付ける。私は宙を蹴った。円の中心、そこにあるエンスカイアー新宿ビルの屋上。向かい風を無理矢理押し退けて私はその場所にたどり着く。


「見つけた」


 逆さ天秤が其処にいた。


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