非平凡が、平凡
僕の全てを、君に捧げてもいいと思った。
見慣れたグラウンドは、異常な光景に変わっていた。
「何だこりゃ」
自分の口から発せられた言葉に緊張感はない。制服を着て、カバン(他人のものだが)を持って立っている、平凡な高校生を代表するような僕が、異常なグラウンドに立つのはおかしいような気がする。
目の前に広がるのは赤黒い物体の山。近づいてみると、それらは人の形をしているようにも見える。
その中心、山のてっぺんに、彼女は立っていた。
「今日は派手にやりましたね」
グラウンドの端から彼女に声を掛ける。
「私が派手にしようとしたんじゃないわ。相手が派手に攻撃を仕掛けてきただけよ」
僕の言葉が不満だったらしい。逆光の為、こちらから彼女の顔は見えないが、いつものように眉間に皺が寄っていることだろう。
彼女が山から降りてくる。彼女が歩くたび鳴る、水分を多く含んだ何かを踏む音だけは、まだ慣れない。
「はい、着替え!」
僕は手に持っていたカバンを彼女に渡した。彼女はそれを受け取り、カバンのチャックを開けた。その音を合図に、僕は後ろを向く。
「見ないでよね」
「言わなくても見ないよ」
これが、僕と彼女の日常である。