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異世界にて捨てられました  作者: 乃愛
捨てられた二人
7/18

攻略と空元気

 ダンジョン内は王都ダンジョンと同じように、ゲームなんかでみるような場所だ。ただ違うのは出てくるモンスター達の強さだろう。

 現在ダンジョンに入って4時間ほど経過している。現在位置は5Fだ。

 現在戦っている5Fのボス《シャールリーダー》もほとんど虫の息。果敢に攻めるレナの攻撃を避けようと、ワニに羽をつけたような体で必死に逃げている。

 俺の魔法数発とレナのチャージ(魔力で肉体増強)突きも食らっているシャールは再度放ったレナのチャージ突きに耐えることができずあっさりと四散した。


「レナ、無理しなくていいぞ?」


「…何が?私は普通だよ」


 嘘をつけ…明らかに無理してるだろ?

 だがそんなことを言ってもレナには届かない。昔もこんなことがあったので経験則だ。

 無駄な説得を止め次のフロアへと向かう。

 このダンジョンは王都なんかと比べることができないようなモンスターが闊歩している。1Fのモンスターが王都の20F近くのボス並みの強さなのだ。

 さすがにここまで強くなると一撃とはいえず必然的に一体にかかる時間もかかる。それによりボス部屋の発見も遅れなかなか進むことができない。

 6Fのモンスターは飛行型が多かったため、俺がほとんど範囲魔法で蹴散らした。無理をしているレナを休ませることができるのでなかなか良いフロアだ。

 20分ほどでボス部屋への扉を見つけることができた。ここにいたモンスターには《サダード》という孔雀のようなモンスター(残念ながら似てるだけでありきれいではない!)が多かったため、ボスもこれの巨大版だろう。

 扉を開けネイドリと戦った時と同じようにレナがボスの出現する前に奥へと進む。

 光が四散し出現した《サダードジェネラル》は予想に反して俺に速攻で突撃してきた。

 

「ッチ」

 

 発動していた風魔法をそのまま利用し風の防壁を出現させる。サダードはその壁に突っ込み威力が足りなかったのかふっ飛ばされている。

 吹っ飛んだ先には、レナがお得意の一撃を準備していた。


「転瞬斬!」


 足と腕に魔力を最大限まとい、一瞬で相手を斬るレナのお気に入り。

 直線でしか使えないし、慣れていないのでまだまだ使える距離が決まっているが与えられるダメージはレナの中でトップクラスだ。

 転瞬斬が直撃したサダードは一分もしない間に既に左翼を失っていた。

 飛べないからといって攻撃ができなくなるわけではないが、大幅な戦力低下にはなるはずだ。

 

「エアーカット」


 俺の一番切断力のある魔法、狙いは残った右翼だ。

 攻撃に反応したサダードが俺の攻撃を避ける。だが甘い。


 ッシュ


 一瞬の攻撃…体勢を崩していたサダードには避けることはできない。

 魔力をまとっていないので翼を切断するほどではないが、それでも翼を使えなくするほどの威力だ。

 苦しい時間を短くしてあげるため俺が最後の一撃を放つ。


「メテオストリーム」


 隕石をイメージするこの魔法は、レナのメテオを大きく上回る攻撃力を誇る。

 メテオが8つも発射されるのだから当然といえば当然だ。

 歩くことしかできないサダードは避けることができずすべて直撃する。

 生きることを許さない高火力の攻撃は予定通りかすかに残っていたサダードの命を燃やし尽くした。

 お馴染みとなった光の粒を眺め、俺達は次の階層へと向かう。

 その後もこれといったピンチもなく8Fまで攻略しダンジョンを出た。

 レナがずっと笑っているが、俺には無理してるのが分かる。

 いつこの空元気が終わるかと思うとダンジョン内でふざけることなど出来なかった。

 「大丈夫だよ」と言い続けるレナを無理やり寝かし、その日の活動を終えた。





「…」


「無理するなよ?」


 俺の言葉に頷くレナ、彼女は現在ベッドで療養中だ。

 予想していたとおりレナはとうとう高熱を出してしまい動けない状態なのだ。

 俺の回復魔法でも傷を治すのとかならできるのだが、熱となるとサッパリ効果がない。

 レナの魔法なら効きそうであるが、本人がこの状態じゃ使えるわけもなく、今日はゆっくり療養することになったのだ。


「昔みたいに俺を守らなくていいからさ、自分の体調を守れよ?」


「…でも」


「こんな世界に来て俺が壊れるとでも思ってたのか?それならちょっと傷付くぞ」


「…ごめん」


 ようやく分かってくれたかと一安心しつつ、更に休んでおけと念を押して部屋を出た。

 プームさんにレナのことを頼み、一人でダンジョンへと向かう。

 さすがに10Fのボスは危険そうなので扉の確認までするのが今日の目標である。

 俺のために頑張ってくれたレナのためにも頑張らなくてはいけないな…





「調子のってんじゃねーよ!」


 いつもと同じ台詞。さすがに聞き飽きてしまった。

 放課後家へと帰り道で待ち伏せをしていた3人組のリーダー格が意味の分からないことを言ってくる。


「無視すんなよ。なめてんのか?」


 物理的にも拒否したいし、そう思ってるなら突っかかってこないでほしい。

 だがこいつらはほぼ毎日俺に絡んでくる。学校内ではなく学校外でだ。


「口開くとお前すぐ怒るじゃん。同じ事しか言えない奴と話すのもさすがに飽きるし」


 ニヤニヤしていた3人が苛ついたようで、さらに声を大きくして騒ぎ始める。


「っざけんなよ!」


「玲奈と仲いいからってうざいんだよ。いつものように殴ってやろうか?」


 またか、俺が玲奈と仲のいいことは既に周知の事実だ。というか毎朝一緒に登校するのだから当然だ。

 それがこの3人には気に入らないらしく、こんな面倒くさいことをしてまで俺を殴りに来るのだ。

 

「ただの逆恨みだろ。そんなに玲奈と仲良くなりたいならあいつの所行けよ…それとも女子の前では喋れませんとかシャイな性格でもしてんの?気持ち悪いんだけど」


 俺の言葉にとうとう我慢できなくなったようで3人が俺をリンチしようと囲い始める。


「はあ…」


 この3人組は学校で最も有名な3人だ。別に格好良いとか成績が良いというわけではなく、先生に反抗して悪ぶってるわけでもない。どちらかというと悪ぶってるのだが、タバコや酒なんかを隠れてやっているだけで学校ではめったに何もしない。

 それでも有名なのは学校外での服装や制服の着方がずれているからだ。

 中学校に上がって間もない頃、この3人は一度改造制服で登校した。その制服はいわゆる「短ラン」というやつで、それを恥ずかしげもなく着るこいつらに周りの生徒は青ざめた。

 それ以来この3人組に近づく生徒はいないし、皆極力避けているのだが、それをどう勘違いしたのかこの3人は「恐れられている」と認識しているである。あながち間違ってはないのだが…

 そんな3人が仲良くなりたいと思っているのは、俺の幼馴染である玲奈である。

 平凡な奴が仲良くしているのにイケてる?俺たちが仲良くないのはどういうことか?

 たぶんそんなことを考えているのだろう。全く意味の分からん奴らだ。

 そんなことを考えているうちにいつもと同じよう3人が飛びかかってきた。

 おまけ二人が俺を後ろから羽交い締めにし、リーダーが俺に制裁を加える。

 最初は抵抗もできずに殴られるだけだが、こっちは学習能力があるのだ。毎度同じ手なんかくらうと思わないでほしい。

 

「逃げんなよ!」


 後ろから来た二人を無視しリーダーに殴りかかる。

 悪ぶってはいるが所詮もどき。喧嘩は個々で見れば平均以下だろう。

 驚いているリーダーをおもいっきり蹴り飛ばしさらに追撃を加える。

 数発殴った所でおまけ二人に捕まりボコられる。

 

「…鼻血出てるけど転けたのかい?」


 殴られても口だけは減らさない。余計殴られてしまうがずっとリーダーをからかい続ける。

 時々近づいてきたリーダーに蹴りを放って攻撃もする。10分ほど俺を殴って3人は何処かへ逝行った。


「…そろそろかな?」


 これでもう8回目だ。さすがにそろそろ玲奈にばれてしまう。その前にあいつらに反撃を与えて俺の前から消えてもらわなくては…

 翌日俺は考えていた作戦を決行した。

 放課後家へ帰宅せず今度は俺が3人の後をつけたのだ。

 3人がまず向かったのは近くの公園だった。俺は草陰に隠れる3人にばれないよう接近し証拠写真をゲットしようと息をひそめた。

 予想通り3人はコソコソとタバコを吸い始め何やら雑談を始めた。

 内容はどうでもいいので写真だけを撮って奴らが動くまでじっとしていた。

 

 ガサガサ!


 早く動けと考え始めた頃、俺の後ろのあたりから茂みをかき分けるような音がして焦ったが3人はどうやら気づかなかったようでこちらに来ることはなかった。


「(…ふう)」


 数分後タバコを吸い終えた3人はどこかへと行きようやく俺も帰ることができた。

 この写真をあとは使うだけである。

 それから2日後、前と同じ場所で3人が待ち伏せていた。

 

「よお。今日はどんだけ殴ろうか?」


 おお、初めて最初の台詞が変わった気がする。こいつらも成長したな…


「ん、今日はちょっと忙しいんだよ。これを郵便で送らないといけないから」


 そう言って俺がポケットから出したのは以前撮ったタバコの写真である。

 それをわざとらしく3人に見せ「そこどいてくんないかな?」と言ってみた。

 写真を見た3人は顔を青くして「ふざけんなよ」などと言っている。

 堂々と悪ぶることもできない奴らだ。これだけでも相当脅せるだろうと思ったのだ。

 

「ずっと見てるけどこれ欲しいのか?家にまだあるし上げてもいいぞ」


 「ほれ」といって写真を投げる。急いで拾う姿が負け犬を連想させた。

 これで手を引いてくれるだろうと思っていたのだが、3人がどうやら最後にボコって怒られようと考えたのかいきなり俺に殴りかかって来た。

 それから10分ほど殴られ、さすがに辛くなってきた頃自体は急変した。


「こら!やめなさい!!」


 青い制服を着た人がこちらへ向かってくる。警察官か?

 俺を殴っていた3人は逃げることもできず慌てふためいている。

 3人を俺から引き離し「この子たちかい?」と今きた方へ声を掛ける。


「そうです。助かりました」


 どうやら誰かが警察を呼んでくれたようである。よく見ると近くの交番のおじさんだった。

 お礼を言うため振り返ると、そこに立っていたのは俺の幼馴染…玲奈だった。


「大丈夫?」


 なんだ、気づかれてたのか。


「いつから?」


 俺の短い問いに玲奈は答える。


「んー、気づいたのは一週間ぐらいまえかな。連音を追い始めたのは2日前だけどね」


 隠れている時に草がなったのはこいつだったのか…


「ありがと。…また助けられたよ」


「ふふ、どういたしまして」


 玲奈の手をかりて立ち上がると、既におじさんが3人を説教していた。

 先生ではなく警察の人を呼ぶのがこいつらしい。学校も交番距離は同じぐらいだからたまたまだろうか?

 10分ほど説教をし、あとは交番でと3人を連れて行くおじさん。

 その後3人は警察から連絡があったのか学校でも怒られ俺と玲奈も事情を聞くために呼ばれたりした。

 そこで「玲奈と仲いいからってうざいんだよ」などの玲奈関係の文句をすべて暴露し、タバコの写真も提供したりした。

 ようやく事件が一段落した頃玲奈が熱で倒れてしまった。

 虐められて傷ついたと思ったのか、これでもかと俺につきあったのだ。

 学校どころか登下校まで一緒。果てには休日すら遊びにくる玲奈にありがたいと思いつつも、いつ体を壊すだろうかと心配していたのだ。

 熱の治った玲奈はようやく普通にもどり、俺の中でようやく事件が終った。






「ようやく見つけた…」


 現在位置10Fボス部屋扉前。これで後は明日攻略するだけだ。

 一人だけなのでペースも相当落ち9時間もかかってしまった。

 きた道を戻りダンジョンを出る。

 宿へ戻れば元に戻ったレナがいるだろう。熱を出したということは玲奈も俺が大丈夫だと判断したということだろうし。

 最近ずっと明るく振舞っていた玲奈を見て心配をかけたと思う。これで3回目だ。

 事故の後の一回。いじめの時の一回。そして今回。

 また同じ事にならないよう強くならなくちゃいけないな…

 宿につきプームさんにレナの容態を聞き、治ってると聞いて安心する。

 部屋の扉を開け声を…


「おかえり!レオン」


 かけられた。


「ただいま」


 そこにいたレナの笑顔は昔のままで、もう無理をしていないことが分かる顔だった。

地球→連音・玲奈などのように漢字表記

異世界→レオン・レナのように片仮名表記です。


連音の過去「中学校編」です。

昔から連音は玲奈に助けられてばっかのようです。


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