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異世界にて捨てられました  作者: 乃愛
捨てられた二人
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狩れる者には福きたる

 王都ダンジョン10F。

 10の倍数にあたるフロアはその1つ前の階層よりも数倍難しくなるということで有名である。

 それはダンジョン攻略歴3日目の俺達ですら知っている。

 普通のモンスターはもちろんのこと、フロアボスはさらにその数倍強くなるという。

 最も死亡率が高いのは10Fのフロアボスだと言われるほどである。

 その死亡率トップの有名ボス《アクアネイドリ》に俺達は今日挑むことになっている。というかすでにボス部屋の前なのだ…ここから引き返すのもめんどうだ。


「初めての飛行モンスターボスか。魔法使えてよかったね」


 レナはすでにこの世界に慣れ始めている。

 そういう俺もほとんど地球のことなんて思い出さないが…


「鳥だしなー風で攻撃すれば落ちてくるんだっけ」


 異世界に来てまだ数日目だが、そのほとんどをダンジョンで過ごしているのだ。もともと地球では楽しくやっていなかった俺達でもこの世界では違った。

 周りの視線を感じなくなったレナはそれだけでも幸せそうだ。何が大切なのかも分からない、誰もが何も考えず一日を過ごしていく世界から、日々命がけで誰もが苦しいながらも幸せそうな日々を送っているこの世界へ来た俺達。俺達にとってはとても良い出来事だったとすでに思っている。

 親が同じ事故で死んだ俺達は偶然にも親戚がご近所さんに住んでいたため、それ以来ほとんど毎日一緒に過ごしている。

 血のつながっている兄弟よりももしかしたら強い絆を持っているはずだ。あっちが姉でこっちが弟みたいな感じだ。

 …少し緊張感がなさすぎるな。一応ボスなんだし注意しないとな。


「よし、行こうか」


 扉をためらいもなく開け堂々と進んでいく。

 いつもなら中央の手前で止まるのだが、今回はレナだけ魔法陣が出ている上を走り反対側まで回った。ボスが出るまで時間があるダンジョンならではの作戦である。

 数秒で出現したアクアネイドリはすぐさま空へと舞い上がり安全圏だと思われる場所から俺たちを見下ろしている。

 ただあくまで俺達が「近接戦闘職」だったらだが。

 残念ながら魔法を範囲は広く俺なら数百メートルどころか数キロメートル(目の届く範囲限定)ぐらいなら攻撃魔法を放てる。

 ダンジョンが大きく、ボス部屋が大きいといってもせいぜい数百メートルほどである。魔法の届かない場所がない。

 俺達は予定していたどおり同時に風魔法を発動する。


「「トルネード」」


 名前の通り風魔法で作ったのは竜巻である。

 竜巻の発生メカニズムは地表付近回転している風に上昇気流が重なってできると聞いたことがあるが、今回はそんなメカニズムなどしったことかである。ただたんに魔法で空気を回し竜巻と言えないような竜巻もどきを作っているのである。

 だが十分な強風ができたようで、上から巨大な鳥が墜落してくる。

 

 ッドサ!


 大きいだけあって音もなかなかのものだ。

 感心しつつ予定通り次の魔法を発動する。今回は俺しかできない魔法だ。


「アイスプリズン!」


 色々な魔法を組み合わせ、水魔法でネイドリを包んだ後それをそのまま冷やし氷へと変化させる。ネイ氷の完成だ。

 俺の魔法の成功を見て、レナが作戦最後の魔法を唱える。これで倒せなければ一斉攻撃するだけだ。

 

「メテオ!」


 魔力の少ないレナでも発動できるよう作った魔法。俺の場合メテオシャワー…つまり同じの物をできるかぎり作るのだが、現在のレナは一個しか作れていない。本当はミーティアと言うはずだがやはりゲーム風の言い方のほうがしっくりくる。

 レナのメテオはネイ氷に真上から衝突し氷を溶かし水蒸気を発しながらネイドリを押しつぶす。

 ようやく途絶えた魔法から逃れるように再度空へ逃げるネイドリ。


「おお、まだ生きてる」


「初めてだね。あそこまで攻撃して死なないモンスター」


 今までのボスは最高でも数発で死んでしまい攻撃すらしてこなかったのだ。

 俺達がそんなことを言ってる間にネイドリは攻撃態勢に入っている。

 上空からの急降下攻撃、巨大な鳥だけに当たったら痛そうだ。俺は数歩魔法を使って大幅に下がりカウンター魔法を発動する。

 

「アイスランス!」


「キュルルルルル!」


 どうやらネイドリも魔法を使えるようである。アクアとつくだけあって体に水をまとっている。その先端がくちばしのように尖っていて常人なら当たった瞬間大きな穴が空きそうだ。

 それに対して俺の魔法は氷の槍だ。火の魔法を石突付近で爆発させ凄まじい速さで発射する。

 放った5本中3本がネイドリを貫通する。それでもネイドリは突撃してくる。


「ッチ!」


 避ける暇もなく俺はネイドリの攻撃を受け数メートルもふっとばされる。


「…痛いじゃないか」


 魔力コーティング済みの肉体と魔法付加装備である制服のおかげで全く怪我はなかったが…

 実際の所魔力をまとわせた肉体ならその辺の中級冒険者よりも強いはずだ。

 レナが剣士なので作ってすぐ教えたのだが魔力足りず10秒ほどしか発動できなかった魔法だ。

 それでもその間は数十倍の筋力を得るのでここぞという時に使えるだろう。

 漫画や小説の技が再現できるのは幸せだ…これぞ男の夢!


「メテオ!」


 レナが再度攻撃を放つ。ネイドリは反応することができずまたも直撃する。

 ネイドリは今度こそ光となって四散し俺たちの勝利が確定した。


「ナイス!レナ」


「そっちもね。それにしても…魔法師の設定を覆す防御力ね」


「まー結構怖いけどな」


 初めて実力を出せた相手に敬意を示しつつドロップ品を拾いに行く。


「ん、これ剣か!」


 アイテム名「アクアソード」。水属性付加でもかかっているのだろうか?

 だがこれで剣を確保できた…魔法剣士の一歩である。


「ほんと!?私使っていい?」


 とてもうれしそうだ…売るとか冗談でも言ったらメテオが降ってきそうだ。


「お前以外いないしな…おめでと!」


 はしゃぐレナに剣を渡しつつ次のフロアへと進む。

 その後はレナが「私が!」なんて言って華麗な剣技で敵を倒していった。さすがに才能があるだけあって扱い方が美味い。たぶん精霊の加護とか言うやつで天職の技は体に覚えさせられているのだろう…俺がすぐ魔法を使えたように。

 その後11Fのボスも倒しお開きとなった。

 宿にて装備に1時間以上かけて魔法を付加させられたことは一生忘れないだろう。

 やると言ってるのにずっと脅し続けるレナは相当怖かった…

 




 


 

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