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異世界にて捨てられました  作者: 乃愛
快晴時々雨雲-ファインの二人-
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狼の戦い

「久しぶり、ウルフェンさん」


 三回戦の二戦目の相手は「狼の牙」。

 名前は何度も聞いているし、少しとはいえ話したことがあるため特徴は分かっている。今まで魔法師のいるギルドと多く戦ってきたが、狼の牙は逆に魔法師がいない。

 加入条件として魔法が使えないことあるからだ。


「レオンが相手なのか…なら、ベルメトで俺らがどんくらいできたのか試させてもらうか」


「なら、試してみますか?」


 俺は少し微笑みながら、この先起こるであろうことを想像し問いかける。それを挑発と見たのか、ウルフェンさんも笑っている。


「おもしろいな、最初から本気で行くぞ」


「三回戦第戦目ファイン、レオン対狼の牙、ウルフェンの戦いです」


「出てこい、ライト!」


 戻しておいたライトが光りとともに召喚される。

 ウルフェンさんの希望通り、どこまで通用するのか試してもらおうと思ったのだ。


「ライトはベルメト最後のボス、ハイウルフレイの召喚獣。ボスの時より数段強くなってますが…まあ試すには良い敵でしょ?」


「そいつが…?」


 少しの間俺の小さな笑い声だけが響き渡る。これじゃあ俺がどこかの悪役…しかも雑魚い奴みたいじゃないか。


「ライト、本気で行け!!」


 俺の命令に忠実に答え、ライトは一メートルほどの体からどんどん大きくなる。


「ッガウ!」


 ようやく状況を理解したのか、ウルフェンさんは笑っている。

 ライトの声が合図となり剣士とモンスターの戦いが始まった。

 戦線攻撃を繰り出したのはウルフェン、普通より明らかに大きい大剣を軽々と振り下ろし、ライトを真っ二つにするべく斬撃を放つ。それをライトは少し動くだけで回避し、すれ違いざまに尻尾で攻撃をする。


ビュン!


 後ろにいる俺にまで風圧が届き、その攻撃の威力を知らしめる。

 ウルフェンは焦ること無く、素早く持ってきた剣の平らな部分で滑らすことで躱した。二人の位置が始まりの時と逆になり、お互い相手の隙を伺いながら円を描くように動く。

 

「ワオォォン!」

 

 ライトが遠吠えと同時に光魔法を発動する。以前のように口から出すのではなく、あたり一面の上空から無差別に光線が降り注ぐ。幻想的でありながら、死へ誘う光線がたっぷりと降り注がれるが、ウルフェンはその一つ一つを致命的なもの以外躱しながらライトへ接近する。

 大魔法を発動していたためにライトは一瞬隙が生まれ、その一瞬を逃すこと無くウルフェンが斬りつける。


「ッハ!」


 腹に傷を負い、どちらかと言えばライトのダメージが大きい。

 それでも動きが鈍ることはなく、再度高速の演舞へと戦闘が移行する。

 噛み付き、斬りつけ、叩き、蹴る。

 どの攻撃も無駄がなく、少しずつ両者の動きが鈍る。

 

 ウルフェンの剣先を少し斬りつけられながらも躱し、その隙を狙ってライトが自分に魔法を発動する。俺たちが使うのを見て使うようになった身体能力強化魔法を。

 白い毛並みに加え、時折発動する光魔法、そして元々の速さと強化した驚異的な速度のおかげか、ライトの動く様子はさながら光の演舞のようだ。それは気品あふれるライトにとても似合っていて、いつもより活き活きとしているように思える。

 光となったライトに、ウルフェンは少しずつ押されていく。

 

「ここまで強かったのか!!」


 ウルフェンは悔しそうに、だがおもしろそうに笑っているようにも見える。

 ライトが相手へと最後の攻撃に選んだのは、光となった速さでの居合い切り…。

 すれ違いざまに手で相手を切り裂き、堂々と着地をする。

 ウルフェンもなんとか倒れること無く着地するものの、最後は笑いながら倒れ、戦いが終わった。

 

「ワオォォォン!」


 ライトの遠吠えと同時にテレポートし、そのままライトは指輪へと戻る。

 レナは既に勝負を終えていたため、これで2回戦は終りだ。


 次の戦いではしっかりと俺が戦い、決勝戦へと駒を進めた。

 相手は残っていたA級を一ポイントも落とすこと無く、俺達と同じように無敗で勝ち残ってきたA級ギルド、「サクラ」。

 最後の戦いなのだから、やはり戦うならマスター…アテナスさんと戦いたい。


「貴方がエルフの友、そしてファインのマスター、レオンかな?」


 考え事をしていたので、いきなり名前を呼ばれてびっくりしてしまう。

 しかもそれがこの世界でも屈指の美人なら尚更、それに加えエルフ…。


「はい…アテナスさんですか」


「『サクラ』のリーダー、アテナスだ。少し貴方にお願いがあってきた」


「こちらも少し聞きたいことがあったので好都合です」


「では、私から言わせてもらおうかな。レオン、決勝戦で私と戦わないか?」


 不敵に笑って、負けることなんてありえないと主張してくる。だがそれが当たり前のような実力をもっているのだ、馬鹿にはできない。


「…いいですよ。俺も貴方とは戦ってみたかったですし。それに、もしかしたらレナでは勝てないかもしれません」


「君なら勝てるとでも言うのかい?」


「それは明日わかりますよ。それよりも、自分からの質問です」


「なんだい?エルフの友として出来る範囲答えよう。もちろん、ライバルとしてもね」


「ギルド名『サクラ』の由来はなんですか?」


 俺の質問に少し驚いたような顔をする。まああまりこんなことを聞く人はいないか。


「由来に関する物は初代マスターしかしらない。初代の知るきれいな花の名前だそうだ」


 桜はやはりこの世界にはない…俺達の同じように何度かこちら側に来てるのか…。

 だが、それなら理由はなんだ?偶然か、誰かの陰謀か?

 …だめだ。情報がさすがに少すぎるな…もともと俺は頭も良い訳じゃないし。


「どうした?いきなり怖い顔して…」


「ん、大丈夫だ。それより、明日は俺達の試合を二試合目にやろう」


「おおとりというわけか…。エルフの友に認められた者の実力を試させてもらうよ」


 最後まで堂々としながらアテナスさんは去っていく。

 戦わなくても分かる…あの人は今までの誰よりも強い。

ライト君を出してみました!!

今まで活躍がほとんどなかったし出番すら無かったから…。


そして今度は最終決戦です。


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