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異世界にて捨てられました  作者: 乃愛
快晴時々雨雲-ファインの二人-
13/18

精霊の意思

「君たちが私を助けてくれたのだな。ほんとうに感謝している」


 ベッドの上から声を掛けてきた老人は、まだまだ60歳ぐらいにしか見えない。細身でたぶん身長は180ぐらいだろう。エルフ特有の耳と整った顔立ちの成果、今まで見てきたエルフよりも神秘的な感じがする。といっても今まで見たエルフは混血かリーナしかいないのだが。


「体は大丈夫ですか?まだ病み上がりなんですし無理しなくても…」


「なに、魔力を回復できたので大丈夫だ。それにあの薬…相当な魔力を込められていたからの」


 長老の魔力の限界がどの程度かも分からなかったし、手間が少し増えるだけなので限界まで魔力を込めたのだ。あれならレナでも使いきった魔力を回復できる。


「あの薬を作ったのはレオン君という名前のようだが…君かね?」


 俺の目を見ながら長老は確認をしてくる。その目に威厳のようなものを感じ萎縮してしまったが、はっきりとした声で返事をすることができた。


「はい、薬を作ったのは俺です」


「君は相当な腕があるようだな。私ですら足元にも及ばないぐらいに」


 さすがにそれは言いすぎじゃないか?調合すらできればあとはそれをいかに無駄なくできるか、魔力をどれだけ込めることができるかという2点でしか実力を測れない。


「長老様の薬を見たことがないので実力差はわかりませんね。まあ魔力に関しては劣ることはないと思います」


 俺の返事に面白うそうに笑う長老。お爺ちゃんのような優しい笑顔が印象的だ。


「レオン君にレナさん、今回の件を私は忘れない。何か必要なことがあれば何でも言ってほしい」


 大袈裟な長老に慌てる俺たち。ただ薬を調合しただけでここまで感謝されるのは予想外だ。俺達としてはできるからやったのであって、できなければそれまでだったのだし。


「い、いえ。お気になさらず。私達も儀式に挑戦させてもらうっていう報酬を貰えてます」


「それはそれだ。私が今回で死んでしまっていたら、色々伝えなくてはいけないことをそのまま森へ持っていくはずだった。それを防ぐことができたのだ、これだけでも少ないと思っている」


 森まで…?普通墓までだと思うが…エルフは何かしら違うのだろうか。

 そんな時、リーナとは違うエルフの女性が部屋に入ってきた。


「レオン様、レナ様、この度は長老を救っていただきありがとうございます。突然で申し訳ないのですが、長老様の回復を祝って宴を開きます。ご参加していただけませんか?」


「別に大丈夫ですが、エルフの皆さんはそれでいいのかな?」


「先程は失礼しました。御二人が悪いのではありませんが、やはり人間を快く思っていない者もおりまして…ご迷惑でなければご参加お願いします」


「分かりました。今から宴は始まるのですか?」


「宴はまだ準備が終わっておりませんので、その前に御二人に儀式を受けてもらおうと考えています」


 お、儀式か…。エルフの文化も見れそうでおもしろそうだ。


「分かりました。色々とお世話になります」


 そうレナが締めくくり、長老への挨拶をして俺達は部屋を出た。呼びに来たエルフ、イリルさんに案内をしてもらい儀式の場へと行く。先ほどと違い、エルフ達も隠れるのを止め俺達が見えると感謝を表すためかお辞儀をしてくる。中には嬉し泣きをしている方もいて、俺達も嬉しくなった。


「儀式は約30分ほどで終ります。その間に精霊からの接触があるかないかで選んでもらえたかそうでないかがわかります」


 儀式の場は他よりも大きな木が5本建っている場所の中心だった。位置関係で言えば星を書いた時その頂点に当たる場所に木があるような形だ。中心には大きな切り株があり、その上で精霊の接触を待つらしい。


「御二人に精霊の導きがあるよう願っています」


 そう言ってイリルさんは儀式場の外へ出て俺達の様子を見守ってくれた。

 




 突然、頭のなかに声が響いた。


(君はきれいな魔力を持っているね。それに桁違いな魔力量…)


(誰だ?)


(誰って言われても困るな。僕ら精霊には名前がないから)


(精霊…俺は選ばれたってことか?)


(そうだね。まあ普通は会話まではしないけど。君は精霊の加護をもらっているからどんな者か気になってね)


(抱いていた精霊のイメージと違うな。まあ現実はそんなものか)


(僕が精霊の代表ってわけではないんだけどね。中には荒っぽいものやおっとりとした精霊もいるよ)


(名前がなくても個人個人で意思はあるのか。それで、会話をしたのはなんでだ?)


(たんなる興味本位だよ。僕の治める地に面白いものが来たんだ。遊ばなきゃ損じゃないか?)


(…そうか。そう言えば聞きたいことがあるんだが、いいか?)


(別に答えられることならいいけど。精霊といっても万能じゃないしね)


(魔法は俺達の持つ魔力を精霊に与えて発動するものであってるか?)


(おお、物知りだね。君の言うとおり魔法は僕達が魔力をもらって発動している。ここら一体で魔法を使えば僕に魔力を与えることになるね)


(場所によって担当が違うのか。じゃあ転移なんて魔法は使えないのか?)


(使えるよ?)


(だがここの精霊に魔力を与えても移動先の精霊には与えられないじゃないか)


(空間を繋げるのは受け取った精霊の仕事だからね。別に移動先の精霊が動くわけでもないし必要ないよ。ちなみに君は空間魔法を使えるから転移もできるはずだよ)


(何度か試したができなかったな。移動先を思い浮かべたり、何か目印になるものを想像してやってみたができなかった)


(魔法陣も発動させないと効果はないよ。魔法陣を想像すればそれだけで十分で、あとは僕達が勝手に形を整える。君が必要なのは魔力と行く場所の想像、移動させる範囲の3つだ)


(魔法陣の場所を繋げるというわけか)


(そうだね。他に何か聞きたいことはあるかい?)


(俺も持っている属性以外のことについて。あとなぜ属性がわかれているのか教えてくれないか?)


(君の持つ属性以外にも「木・氷・石・精霊・毒」があるね。属性が分かれているのは当然だよ。魔力をどう変化させることができるのかは魔法師自身の能力だからね。火属性を使うときには火を想像するだろう?あの時に魔力は少し変換させられているんだ)


(じゃあ発動前とその後では魔力の質が違うというわけか?)


(簡単にいえばそうだね。言うなれば変換前は「無」属性って感じかな。君は時々魔力を無属性のまままとっているけど、あれは自分自身で発動するものだから魔力の消費は激しいはずだよ)


(今回俺は木属性を得られると聞いていたんだが、後からでも属性を増やすことはできるんだな?)


(まあ精霊の力だからこそだけど。君は僕の力を使って全属性に変換できるようになっているからこれ以上は増えないけどね)


(木属性以外にも増やせたのか?)


(君だからね。僕達も意思をもっているから贔屓ぐらいはするのさ。それに君が魔法を使えば使うほど精霊としては魔力を満たせて嬉しいしね)


(そうか…ありがとう。レナにもお願いできないか?)


(彼女にはなにも与えることはできない。精霊の声をある程度聞けないと渡すことはできないんだ)


(そうか…)


(悪いね。でも君が彼女を守れば良いだけだし、守る機会が減ってよかったとでも考えてね。僕はもう木に戻るけど何かあったら精霊魔法を使ってみるといいい。その場所を治める精霊が助けてくれるはずだ)


 そう言い残し名のない精霊との接触は終った。自分的には10分ほどの時間だったのだが、気がつくと既に空がオレンジ色に変わっていた。


「あ、レオン!やっと反応した!!」


 ずっと待っていたのだろうか、レナが俺の目の前で笑っている。


「精霊と話してたんだ…宴会は始まってるかな?」


 俺の質問に同じように待っていたのであろうイリルさんが答えてくれる。


「まだ始まっておりません。やはり主役の一人がかけては勿体無いですから。それにしても精霊と会話ですか…」


「特別だとか言ってましたね。色々教えてもらっていい時間でした」


「それで、魔法はどうだった?私は貰えなくて…」


 俺は返事の代わりにステータスを開き、レナに見せてみた。



名前:レオン・カミシロ

所持金:60730


-職業-


魔法師

スキル:「火・水・風・土・木・石・光・闇・雷・毒・氷・空間・回復・精霊」魔法


錬金術師

スキル:様々な道具の調合


召喚士

スキル:召喚獣の使役が可能


鍛冶師

 スキル:様々な道具の作成


-称号-


神の魔法師:【知識の上昇】


加護を受けし錬金術師:【調合の効率の上昇】【道具の情報を見られる】


精霊の恩寵:【全能力の上昇】


賢者:【知識の上昇】



「ん、確かに増えてるな。でも賢者ってのは聞いてないが…」


 俺の呟きにステータスを覗きこんだ二人は答えてくれない…固まっているのだ。


「…」


「…」


「おーい」


 それから数分間俺の呼びかけも虚しく二人は固まったままだった。先に意識の戻ってきたレナが色々と更に規格外になった俺を見ている。少し恥ずかしい…。


「レオン…精霊ってどんな感じだった?」


 …今ですか!?俺が話したって時はスルーだったのに!?


「…んー、割りと普通。精霊によって性格も違うって言ってた」


「そっか。これでまたダンジョン攻略が簡単になったね」


 一応そうなのだが、少し会話が飛んでいるかのような…。別におかしくはないのだが…なんかな。レナも完全には戻ってきてないのだろうか?

 俺が考えている間にようやくイリルさんも戻ってきたようで、こちらは見なかったことにするのか何も言ってこない。


「…それでは宴会の場所へ行きましょう」


 その後宴会にて、以外にも話しやすかったエルフたちと盛り上がりつい流れで酒を飲んでしまった。その時は楽しくてよかったのだが、翌日そのことに気づいたレナに説教されてしまい公開することになってしまった。エルフたちは全員がほとんど魔法師の才能があるらしく、ほとんどの者が3属性ほど扱えるらしい。寿命が長いのも魔力をもっているかららしい。


「長老様、一つ聞いていいですか?」


 宴会の翌日、レナに説教された後、俺達は挨拶をするため長老の部屋へと来ていた。この長老病みあがりのくせに一番多く酒を飲んでいたのだが、二日酔いなどせず普通にしているのだから恐ろしい。エルフは酒に強いとのことだが、それはドワーフの設定だろうと突っ込んだのは内緒だ。


「何かね。恩人の頼みならば出来る限り答えよう」


「昨日の宴会であるエルフは『魔力を持つものは寿命が長い』と言っていたのですが…あれは本当でしょうか?」


 聞いたときは酔っていやこともあり対して気にも止めなかったが、今思い出すと相当重要なことだ。なにせ俺とレナ、どっちも膨大な魔力をもっているのだから。


「ふむ… それは本当だ。魔力を持つものは大抵一番丈夫な時期で老化が止まる。人間なら二十年やそこらだろう」


「そう…ですか。ありがとうございます」


「そう落ち込まんでも良い、ゆっくり生活すれば時は過ぎるものだ。どうせなら楽しく生きたほうが幸せだろう」


 レナはさほど落ち込んでいないが、むしろ嬉しそうにしているが俺としては大問題だ。魔力を多さで寿命が伸びるのなら明らかに俺はレナより長生きする。この世界で、いや地球でも、知ってるものが老いていき自分だけが若いままだということに俺は耐えられるだろうか?


「レオン、まだまだ私は生きるから。焦らなくてもいいんだよ?」


 俺の心でも読んだのか、レナが優しく声をかけてくれる。その言葉を信じ、今は考えるのをやめる。


「そうだな…まだまだ長いよな」


「うん。まだまだ一緒だよ」


「…君たちなら幸せにやっていけると思うぞ」


 俺達の様子を見ていた長老が少し笑いながらそう言ってくる。恥ずかしくなった俺達は顔を赤くして俯く。


「…今はそんなことよりも、お礼の話だ」


「もうお礼なら十分貰いましたよ?」


 レナの言うとおり俺達は儀式の他にも、125000ユールに薬のレシピ、色々な素材などをもらっているのだ。


「これは特別な贈り物だ。エルフが認めた者に授ける友好の証のようなものだ」


 そう言って渡されたのは2つの首飾りだった。糸の代わりに蔦を使っており、きれいな銀の飾りも付いている。


「それを身につければここだけでなく、他のエルフの里でも歓迎される。無くさないように注してくれ」


「あ、ありがとうございます」


「二人にはまだまだお礼をしたいのだが、受け取ってはくれそうにないからな」


「いえ、もうすでに十分もらってますから…」


「このままではずっと平行線だ。その首飾りを大事にしてくれ…本当にありがとう」


 その後里のエルフからも感謝の言葉をもらい、十分すぎる贈り物をもらった俺達はエルフの里をあとにする。そしてエルフの里の出口にリーナの姿を見つけた。


「ありがとう。二人とも」


「お礼も貰ったし、リーナはモンスターも弱めてくれたから、もう十分だよ」


「そう言えばなんであの時、一人でモンスターを倒してたんだ?」


「私たちは森の守り手。世界樹の葉の生まれ変わりって伝説があるんだよ。森を荒らすモンスターを倒し、森の手入れをする。それが私たちの仕事だからね」


「そっか。それで戦ってたんだね…私達も何かあったら助けに来るから。必要なときは絶対呼んでね?」


「私達も同じ気持ちだよ、時々でいいから遊びに来てね」


 また会いに来ると約束し、森を出る。なぜか指輪に戻っていたライトを呼び出し初めての転移魔法を発動する。行き先は我が家の玄関前…魔法陣を展開し空間同士を繋げる。魔法陣の中に沈み込んだ俺達は、気がつくと既に玄関前に立っていた。


「…便利すぎるね」


「我ながら簡単すぎてびっくりだ」


 今までできなかったのに言われたとおりにやるとあっさりとできてしまった。突っ立ってても意味が無いのでギルド連合へと歩いて行き、依頼の報酬を受け取る。


「エルフの里ですか…人間で行った人は少ないと思いますよ」


「そうですよね。まあ俺達も最初は警戒されてましたし」


「…本当に不思議な人ですね。それより、御二人は準備終りましたか?」


「ん、準備って何のですか?」


 レナの言葉に「やってしまった…」と言うメルさん。何か重要なことでもあっただろうか?


「御二人には言うのを忘れてましたね。あと一週間でギルド連合主催のイベント、ギルドバトルトーナメントが始まります。御二人…というかファイン様はBランクですので参加が決定しております」


「え…出なくてもいいじゃないですか」


「いえ、イベントといっても冒険者の実力を見せつけるのが狙いですので、B級以上のギルド、連合の選んだ3つのギルド、C級以下の予選大会で優勝した代表1つは強制参加です」


 ああ、これ以上目立つのは嫌だったのに…。


誤字脱字ありましたらご報告ください。

一気にレオンをパワーアップです!!

そして次回からはギルド戦!!バトルバトルバトル!の展開ですので書くのが大変そうです…

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