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異世界にて捨てられました  作者: 乃愛
快晴時々雨雲-ファインの二人-
11/18

ひょうたんから駒?

 この世界に来て何ヶ月が過ぎただろうか?

 来たばかりの頃は色々と心配事もあった気がするが、今ではこの世界の生活を地球にいた頃以上に楽しんでいる。いや、それは最初からそうだったかもしれない。

 半年ほど前、お風呂入りたさにクエストに明け暮れ、家を借りお風呂を満喫した後も、家具や道具の調達、当面の資金確保など慌ただしかった。

 今ではそんなことも終り、日々ゆったりと過ごしている。


「レオン。今日はクエストを受けに行く日だよ。準備できてる?」


 そう声をかけてきたのは、俺と一緒にこの世界へ来た幼馴染みのレナだ。黒髪が来た時よりも長くなり、今では背中の半分を覆うほどだ。

 最近俺達の生活スタイルはきまっており、月曜から水曜はダンジョンへ潜り、木曜日はクエストを受け、金曜日には2ヶ月ほど前に開いた二人の店「雲量いちいか」を営業している。他の日は基本的に休みだ。

 「雲量いちいか」は予想以上に繁盛し、週1という少ない営業時間ながらも貴重な薬などを販売するため十分な利益を上げている。

 今日は木曜日、つまりクエストの日のためレナは鎧を着込んでいる。

 最近俺達は王都ダンジョン160Fまで攻略し、ギルドランクもBに上がったため有名ギルドにひとつになりつつある。どっちも黒基調の鎧のため「快晴時々雨雲」などと言われることもある。

 

「はあ…最近ギルド連合行くと絡まれるからいやなんだよな」


「準備はできたのね?みんな優しくしてくれるんだしいいじゃない」


 優しく…ね。それはレナに対してであってただの若造である俺には酒を無理矢理のます野郎ばっかしか集まらない。はっきり言ってクエストの報酬をもらう度にそのまま飲み会になるのは勘弁だ。たとえそれがおごりでも…


「…そうだな。サクッと終わる奴選んで捕まる前に帰ろう」


 俺の提案に苦笑しながらレナが家を出る。

 俺はその後を追いながら俺の心も「雨雲」だと考えていた。




「え…討伐クエストですか?」


 レナの質問にメルさんが答えてくれる。


「この依頼は一昨日届いたのですが現状お任せできる方が王都にいらっしゃいません。討伐の依頼のため早めに行かなくてはいけないのですがいつ来るか分からない方々を待ってもしかたがありません。それならと王都にいるクリアできそうな方々を探し出しファイン様に決まったのです」


 討伐ね。街を離れなくてはいけないのはあまり受けたくないのだが。


「俺達はB級ですよ?B級なら他のギルドでもたくさん居ますよね?ダンジョンなら分かりますがPTの関係がない街外なら俺達より良いギルドがあるはずです」


「今回の討伐場所は森のため大人数で囲んで戦えるほどの場所がないと想定されます。そのため人数は少なめで実力のあるファイン様が一番だろうというのが連合の意見です」


「わかりました。クエスト内容を教えてくれませんか?」


 すべての質問に答えが用意されていますというようなメルさんの表情に気づいたのか、レナがとうとう受けることに決めてしまった。

 その顔が少し楽しそうに微笑んでるのを見て俺も逃げるのを諦めるしかできなかった。


「ありがとうございます。クエストの依頼を出したのはレルベル村です。最近村の近くのモンスターが活発になり、とうとう大型モンスターが目撃されたとのことです。姿はクマのようで大きさはだいたい5、6メートルほど。目撃者によれば大きさの割に素早く動いていたそうです」


「目撃者は襲われなかったのですか?」


「報告の限り未だ被害者はいません。ただしそれがいつまで続くか不明で村人が怖がっているようです。森の仕事にも影響するため早めに依頼を出したようです」


 クマのような姿、早くて人が近くにいても気づかない、または襲ってこない…か。


「レルベルは王都から北東に4時間ほどでしたね。今からそのまま出発しますね」


 詳しい情報も無さそうだしこれ以上は無駄か…

 

 


「レナ。俺は後ろから援護だけするから攻撃は頼んだぞ」


 既に王都を出て30分が経過している。

 ギルド連合を出た俺達は家にいたライトを連れてきて、現在その背に乗ってレルベルに向かっている。

 これなら後30分もかからずに辿り着けそうだ。


「ん、攻撃系は光でお願いね。メテオなんて使われたら私ごと燃えちゃいそう」


「ダンジョンと違って外は戦いづらいからな。ライトと頑張ってレーザーで攻撃するさ」


 俺の言葉が聞こえたのかライトも走りながら吠えてくれた。


「ライトは攻撃しなくても大丈夫よ。私と一緒に敵を翻弄しようね?」


 ボス戦などライトとレナは敵を翻弄することをメインとしている。時々転瞬斬でも攻撃したりしている。

 ライトはこの言葉にも吠えて答えその後は全員だまり一瞬で後ろへ消えていく景色を見続けた。


「…探すの苦労しそうね」


 結構広そうな森を前に、レナは戦う前から疲れていた。

 

「いや、ライトがいるし大丈夫だ。な?ライト」


 俺の言葉にまたも頷くライト。強いものの気配を探れるのかためらいもなく森に入っていく。

 それから1時間俺達はライトの後に付いて行きようやく討伐対象らしきモンスターを見つけた。


「あれか…それにしては傷ついてるが」


「でもあの大きさだし間違いないと思うよ」


 俺達が見つけたモンスターは《ドベーブーア》という名前で聞いたとおり大きさは7メートルほど。

 だが明らかに弱っている。所々血を流しているし動きづらそうだ。


「誰かが戦ってるな」


 傷ついた体には矢が刺さっている。明らかに戦闘でもしたのだろう。


「そうね…まあ倒しやすくていいけ…ど!」


 そう言ってレナはブーアに攻撃を仕掛ける。

 傷ついたブーアはレナの攻撃に反応できず転瞬斬を受ける。続けざまにレナが攻撃を仕掛けブーアはどんどん傷ついてく。

 

「レイ・ガン!」


 俺が光線で追い打ちをかける。もともと傷ついていたブーアの心臓を貫いた光線はその生命を刈り取り戦闘は数秒で終了した。


「うーん。だいたい120Fぐらいのボスよりも弱そうね。それに死にかけてたし…戦った人は生きてるのかな?」


 死んだかもしれないな…その言葉が俺の口から飛び立つことはなかった。

 なぜなら…


「生きてるわよ。冒険者さん」


 俺達に声を掛けてきたのは20歳ほどのエルフだった。俺が175センチメートルほどで、彼女は俺より数センチ低い。腰まで伸ばした金髪が森の少ない光を受けて輝いている。


「私が狙っていたモンスターだけど、あなたたちは依頼できたの?」


「そうです。えっと…あなたは?」


「フフ。自分から名乗るのが普通だと思うけど」


 軽く笑いながら言うエルフはそう言いつつもしっかりと名乗った。


「まあどうでもいっか…私はリーナ。あなた達は?」


「私はレナでこっちがレオン。リーナさんは依頼で?」


 レナの質問にリーナさんは笑ったまま首を振る。笑顔の似合う人だ…。


「私はこいつが森を荒らさないよう倒しに来たの。まあ実力がないから遠距離から弓と魔法で攻撃してたんだけど」


 それから死体はどうするのか、何をもらうかを話し合い大方処理が決まった。

 

「あ、リーナさんは森を守るって言ってたけど、少し森に生えてる草を採っていいか?」


 初めて声をかけた俺に驚いたのか、リーナの笑みが少し抑えられている。

 

「えっと、レオン君だっけ。草をとってどうするの?」


「薬に使おうかなと思ったけど…だめか?」


 俺の言葉に今度こそ笑みを引っ込め、真剣な顔になるリーナさん。何か怒らせるようなことを言っただろうか?


「レオン君は薬師なの?魔法も使っていたようだけど」


「いえ、錬金術師ですよ。魔法も使えるので戦闘もできますが」


「そう…なら、私の依頼を受けてくれないかしら?報酬は出すわ」


 怒ったのではなく考えていたのか…笑みがなくなるとまるっきり人が変わった気がして怖かった。

 俺がレナに目で確認をすると、レナも目で大丈夫と送ってきた。


「…分かりました。でも何を作ればいいのですか?」


「ハイエーテル。材料は揃ってるのだけどどうしても調合できる人がいなくて…」


 少し悲しそうな顔をしながら、できるかどうか心配そうな顔をしている。

 ハイエーテルか…。たしか魔法師が年老いて魔力が衰えて動けなくなった時に使う薬だったな。もともと魔法師自体が少なく、この病気にかかる人も少ないので存在自体古い文献にしか残っていないはずだが…。俺も偶然本で出てきたのを読んだだけだ。


「材料があるなら作れると思う。詳しい作り方はわかりますか?」


「作り方は文献に残っている。できそう?」


 希望を得たのかさっきより少し笑い顔になったリーナさんに俺は頷く。


「そっか。それなら着いてきてくれ…エルフの里へ案内する」


 そんなのもあるのか…ただのクエストからエルフの里などという場所に行くとは…。

 隣のレナが久しぶりに満面の笑みを浮かべているのを見て笑うしかない俺だった。

 

説明など少ないとコメントをいただいています。

直せる限りは直すので…。


今回も自分的に淡々としてる感じがするので反省です…

次回はいざエルフの里へ!

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