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異世界にて捨てられました  作者: 乃愛
捨てられた二人
10/18

たどりついた居場所

「…です。これで家の説明は以上です」


 そう言って帰っていったのは家を貸してくれたリーブスさんに仕える奴隷メイド、メステルさんだ。俺達が怒涛の勢いで貯めたお金で買った家の詳しい説明をしてくれていたのだ。

 

「結構高くて大変だったね」


 隣でレナが家を見上げながら感慨深そうにそういった。

 合計金額73000ユール。もともと25000ユールほどあったのでためた金額は50000ユールほどだ。

 そう考えると俺も誇らしさや達成感が湧いてくる。


「ずっと薬を煎じてたよ。これでようやく解放だ」


 錬金術師という職業をフル活用し、調合系クエストや薬納品系クエストを受けまくった。もともと薬師や錬金術師が少ない冒険者にはこんなクエストはなかなか受けることができないため結構な数のクエストが残っていた。それを俺が一斉清掃したのだ。そのおかげでギルド連合に感謝されたりもした。


「よし…」


 そう言ってレナが家の扉を開ける。木でできたドアを引く顔はボス部屋の前よりも緊張しているようにみえる。ただそれだけでなく、いつも以上に笑ってもいる。

 ドアを開け中に入るとキッチンまで続く廊下が姿をあらわす。キッチンまでに部屋が2つあり、2Fへ続く階段もある。

 この部屋二つは装備倉庫と薬や食料を保存する倉庫となる予定だ。

 キッチンは4人がけのテーブルが置いてあるもののまだまだ十分な広さをもっている。


「靴どうするんだ?」


 俺としては日本人なんだし家では靴を脱ぎたい。今まで宿屋では脱いでいなかったのでちょっときつかったのだ。


「ん、ここに靴箱も置こうね!」


 レナもどうやら靴を脱ぐと考えていたらしい。でも靴箱は必要ないんじゃ…?

 その後倉庫2部屋を確認して必要な家具を書き出していく。

 キッチンには既に必要な家具がある程度置かれていたので、料理に必要な調理器具やお皿なんかを考える。

 

「うーん…やっぱ料理は私がする!」


 俺が皿を何枚買うのか考えていた時、突然レナがそう言い出した。


「いいのか?別に俺もある程度なら作れるぞ」


「うん。料理人の職とればすぐ作れるようになるんだし無駄に2つ分も埋めないほうがいいよ」


「なら俺のほうがいいと思うが…レナは攻撃を受けることが多いんだしほかの職とった…」


 俺が言い進めるのと比例してレナの視線が冷たくなっていく。


「・・・私の食べたくないの?」


 冷たい視線で攻撃したまま少し悲しそうに言うレナ。これで「はい!」なんて答えたら死が確定するな。


「…食べたいです」


「…本当に?」


「…本当です」


 俺の答えに満足したのか顔を赤くしつつ幸せそうに笑っている。女としては料理ができないということが嫌だったのだろうか?

 

 料理担当も決まり2階へと上がった俺達は部屋の割り振りを決める。

 部屋数合計5つ。同じ大きさの部屋が4つと、その四分の1ほど小部屋が1つだ。

 普通ならこの小部屋に掃除道具や小物を入れるのだろうが俺達はここにトイレを作ることにした。

 4つの部屋のうち2部屋は俺とレナの部屋に決まり、あと1つはお風呂に決まった。

 残った1つは今はまだ残しておこうと決まり家の探索が終了した。


「私の部屋はベットと箪笥、それと机も作って欲しいな」


 ベット、箪笥、机ね…。言われたとおりメモを取っていく俺。嬉しそうに欲しい物を言ってくるレナのせいで俺のほしいものを書く暇がない。

 それからも小物やお風呂の形、お風呂の希望などをどんどんと言い続け、言い終わった頃には軽く息を乱していた。


「んじゃ明日宿から荷物とって戻ってくるか」


 宿に残している荷物とライトを翌日家へ運び込み空き部屋となる予定の場所に置けないものは突っ込んでいく。

 それが終った後はレナは料理人を得るためロレシアさんの所に行き、帰ってくるときついでに必要な物を買ってきた。

 その間に俺は材木から箱を作って鍛冶師の職(ハンマーや釘を使うのが大事)を得てベットや箪笥をせっせと作っていく。

 トイレは様式が希望だったので大きな石を風魔法で削り大体の形を決めた後別で作った蓋やレバーなどを取り付ける。一度鍛冶師さえ取ってしまえば、材料の加工自体は魔法でできる。細かい作業には魔法を使えないのが残念だ。

 魔法で水を満たしそれっぽくした後、ギルドで買ってきた魔法石に魔力を込めトイレに設置する。レバーを引くと水が流れるのではなくトイレの仲のものを完全に消し、再度水を入れなおすという魔法を仕掛けトイレは完成した。ちなみにそれに加え温かい便座をイメージして熱魔法を固定したりした。

 最後に残ったのは最難関のお風呂製作で、これには木造建築というのが仇となった。

 水を使うためには床に防水加工を施さないといけないので、部屋全体を魔法付加しようかとも思ったのだが、それだと何度も魔法石に魔力を込めないといけなさそうなので仕方なく部屋を改築した。

 部屋全体に厚さ1センチメートルほどの鉄板を設置しそれに熱魔法を加え、その上から木を再度つけた。これで鉄板に触れた水は蒸発するし、木が常にあたたかくなるのでお風呂が暖かくなるという効果もある。

 次に部屋の半分を使って浴槽を設置し、これも同じように下に熱魔法付加の鉄板を敷き水を入れると暖かくなるという効果を施した。

 最後に水の確保として専用の魔法石とタンクを設置し蛇口もどきを作ってお風呂は完成した。


「ッフ…我ながらすごい完成度だ」


 レナが見せてくれる顔が楽しみだ。ほとんど不便のない生活環境だ。

 完成から1時間後ライトと出かけていたレナが帰宅した。


「おお!おお!」


 トイレや部屋、お風呂を見て騒ぐレナ。ここまで喜んでくれるとやったかいがあるというものだ。


「どうだ?いい完成度だろ」


「うん。全部手作りなんでしょ?」


「鍛冶屋の取り方がわかってて助かったよ。ドワーフのおじちゃんの話を聞いといて良かったな。風魔法で木は加工できて楽だったし」

 

 ベルメトの宿屋で一緒に食べたドワーフのおじちゃんが自分の職について自慢していたのだ。

 その時おじちゃんは「鍛冶師は天職に選ばれなくてもハンマーを使い続ければなれる」と言っていたのを覚えていた俺は、魔法で速度を上げつつハンマーで壁を叩き続けたった10分で鍛冶師の職を得た。その後は魔法で大まかに作り細かい部分を手作業で終わらせた。

 俺の答えに満足したのか更に顔を輝かせるレナ。

 その後数ヶ月ぶりのお風呂を堪能した俺達は、料理人を得たレナの初手料理に舌鼓をうっていた。


「…幸せだね」


「ん、いきなりどうした?」


「ううん。ずっと願ってたことが叶ったから幸せだなって思ったの」


 異世界で家を買うことが夢だったのだろか?あ、お風呂の話か?


「お風呂か?まあ久しぶりに気持ちよかったよな」


 俺の台詞にレナが少し悲しそうな顔をしてるが何なのだろうか?


「レオンはレオンだね…変わらない」


「褒めてる?」


「うーん…3割はね」


 びみょーだ。7割は褒めてないじゃないか!


「このまま二人でゆっくり生活できるといいね」


「ん、そうだな」


 レナは顔を赤くしつつ、俺はそれを見ながらどうしたのかと考える。

 そのまま二人は長い長い夜を静かに過ごしていった。

デレさせたかったけどあんまうまく書けません。

だって恋愛経験まだないし…。



一章「捨てられた二人」完結です。


二章「ファインの二人」はこれから半年後ほどからの話です。

その間二人はクエストやダンジョンなどを攻略しますが、特に職を得たりするわけではないので省かせてもらいます。

「書いて!」との声が多ければ外伝として完結後に書こうかと思います。

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