表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

作者: 木宮卓



たった、数センチ。数センチ。たった、数センチ。たった、少し。少しだけ。少し。コインをはじく。その程度。その程度の力で。その程度の力を、指先に、こめる。少しだけ。ほんの、少し。その少しで、俺は人の命を、奪った。

がちがちガチ。この音は、なんだ。耳を済ませてみる。自分の歯がなっている音だ。電気を消して居る。音が聞こえる。いろんな音。俺の汗が、床に落ちる音。俺の歯の音。俺の呼吸の音。俺の服が擦れる音。俺が出してる音ばかりだ。

本当に、そうか?俺しかいないのか?この部屋には、本当に俺しかいないのか?

辺りを見渡してみる。髪が、俺の耳を撫でる。音がする。俺の音がする。人の生きている音。人。

そう、俺は人を殺した。たった数センチ、指を動かして。たった少しの力を指先に入れただけで。それだけで、人が死んだ。たったそれだけで、俺は犯罪者。

つばを飲み込む。音だ。音が。音が恐い。いつか来る。いつか、俺は終わる。俺を捕まえに、誰かが来る。動かなきゃ。でも、動いたら、音がする。

それが怖い。それが。それが。音。そうだ、俺は音が怖いんだ。音が怖い。それだけ。それだけ。俺は音が怖いだけ。だから、平気だ。俺は音が怖い。それでいいじゃないか。忘れよう。俺は何にも怯えていない。音におびえているだけ。俺を追いかけてくる人なんか、居ない。俺は俺の音が怖いだけ。そうだろ。それでいいだろ。それだけで、良いだろ。


俺は、何も悪くない。すべては、この音が悪い。そうだろ。

応えないはずの黒い冷たい塊に、俺は人差し指を添えた。



クロクロクロック、面白かったです。拳銃物の小説をマジで書いてみたくなりました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ