第8闇 赤き不死鳥とその言葉
音も上げずに燃え崩れる化け物を見つめて、隣に並んだウィンドに聞いた。聞きたいことだった。
「……お前、どうして僕を選んだ」
「何、気紛れだ」
「同化できる確率がほぼ0%だって知っていたのか?」
「もちろん知っていた。わらわとしては、どちらでも困らん」
ウィンドはにやりと笑った。考えてみれば当然だ。僕を助けようとしたんじゃなく、僕の体を乗っ取ろうとした結果、何故か僕は消えずにウィンドは同化してしまったのだ。僕からしてみれば考えられない悪行だが、彼女が黒くなっていないところを見ると、罪悪感というか、「黒」の意識が無いのだろう。便利なもので、不死鳥の場合、重要なのは憎しみや恨み等の感情なようで、殺意や悪意は「黒」の対象ではないらしい。そう考えると、僕が吸血鬼の時に「黒」くならなかったのもおかしく思えるが、僕が彼を憎み切れていなかったのかもしれない。
人間視点から見れば理不尽だけれども、あの時の僕は化け物視点からも見る事が出来たから、化け物視点からしてみればおかしくもない極普通の行いだ。
人が豚を食うのと同じ。釣りをして、捕った魚を持って帰るのと同じ。罪悪感等そこには存在しない。
「お前は悪魔かよ」
「いいや。不死鳥だ」
僕は、人目もはばからず、パソコン室で紅い少女と話をした。不思議と、誰も僕らの事を怖がりはしなかった。まるで、星空を見るような眼で、僕達を見つめていた。
「龍は、僕達と闘いたいのか?」
「さあ。わからん。だが、そうかもしれん。この辺りに潜んでいるのも、自分と戦える者の臭いを嗅ぎつけたからなのかもしれん」
「やっぱり、戦闘か。仕方ないな……ほっとけば、また、こんな事件が起きるかもしれない。……僕じゃ倒せないけれども、お前となら、いける気がするよ」
「フン。期待するな。わらわはいつも通り、お主の中で観戦と行かせてもらう」
「それじゃ、負けるよ……この引きこもり少女め」
「汚れるのは嫌だからな。だが、お主にわらわの力を殆ど貸す」
「そんなことできるのか?」
「なあに、少しばかりリスクはあるがな」
「リスクって?」
「お主とわらわは、今まで複雑に絡み合った魂の糸だった。それが一本になるというだけだ」
「どういう事だ?」
「今と変わらん。ただ、思考が、痛みが、感情がすべて共有になるだけだ」
「うるさくなりそうだな」
「全くだ」
静かに、僕達はパソコン室のベランダから飛び降りた。僕達の世界は、廻っている。




