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不死鳥!-ふぇにっくす!-  作者: 起始部川 剛
第6章 ゾンビ×ハツカ
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第9腐 再生と破壊

「おーぅ、ここは墓地か?」


 アタシ達は、ぶらぶらと山を歩いていて、夜になってしまったので、テントを張れそうなところを探していたところで、墓地を見つけてしまった。


 アタシが所属しているのは自由な事をするがモットーのわからないサークルで、もちろん人数も少ない。

 アタシと

「さすがにここで寝泊まりは嫌だね」

 このメガネのショタ系の少年。流木辰斗(りゅうきたつと)

「いいんじゃね? ホラ、そこの川の近くとかよさそうだし、廃墟だけどそこに建物あるし、丈夫そうジャン」

 金髪で、パッとみあまり品のいいとは思えないが、根はやさしい大樹軽(たいきかるい)

「いいでしょ、ここで。もう疲れたよ、私。おばけなんているわけないんだし」

 茶髪のメガネお下げの委員長タイプのマジメ(しかし何故染めているんだろうか)リーダー。照井(てるい)結城(ゆうき)。この四人だ。


「だな。たしかに幽霊なんていねぇし。墓地の近くってことを抜けば割といい条件じゃね? ここにけってーで」

 軽が軽く決めたのだが、アタシとしては気が進まない。他の仲間は、幽霊はいないと言い張るけれども、アタシは河童にあったことがあるわけだし、それに、幽霊の存在を否定してしまえば、アタシの弟の存在を否定することにもなる。


「テント2つあるので男女別々でいいですね」


 女性陣が簡単な夕飯を作り終わったとほぼ同時に、男性陣がテントを立て終る。小さいので、割と簡単に建てれるタイプだ。


 直に夕食を済ませて、星空を見て、午後11時を回ったところで

「おやすみー」

「ういー」

 男女別れてテントに入った。


「綺麗だったね」

「おーぅ。アタシも久しぶりに見たぜ。星空なんて」


 つかれていたのか、直に、アタシは眠りに落ちた。



 時間は、午前0時。結城に起こされて、目を開ける。

「なんだよ……後7時間……」

「リアルな時間言わないで。……音、しない?」


 確かに、出てすぐの所でゴソゴソと音がする。


「なんだぁ? 男子がホモプレイでもしてんのか?」

「下ネタやめて」

「ごめんなさい」


 何か、大きな動物のようなものが、アタシらの食べ終わったゴミや外に置いてあるものをあさっているようだ。

 気のせいか、異臭もする。

「怖いよ……クマかな?」


怖い。確かに怖い。もっと、別の恐怖を感じる。そうだ、これは……


 突如、動物は立ち上がった。影で何となくわかるが、2足歩行をしている。アタシらの話声に反応したのか――それはどんどんアタシらのテントに近付いてきて――

 テントの中に飛び込んできた。

「アアアアアアアッ」

 男だ。その男の目的が、私達を襲う事なのは確かだが――それは性的な意味ではなく、食らう事が目的だろう。

 彼の体は半分以上腐り、腐敗臭をまき散らしていた。死体。動く死体。ゾンビ。

「キャアアアアアアアアアアアア!!」

「このっ……!」


 アタシはゾンビの頭を上段蹴りで蹴飛ばし、悲鳴を上げている結城をひっつかんでテントから飛び出した。

「んだぁ?」

「うるさいよ……」


 悲鳴を聞いて、のそのそと出てくる男子。

「何のんびりしてんだオメーら! ゾンビだゾンビ!」


 アタシの言う事を信じていないのか、急ぐ気配を見せない二人。そこで、アタシらのテントからゾンビが飛び出してきた。

「うおっ! マジだ!」

「逃げないと!」

「あの廃墟だ廃墟!! 鍵閉めろ鍵!」


 一目散に逃げる男子2人。

「ちょ!おいてくな!!」

 アタシも後を追いかけようとしたが、結城が腰を抜かして、動けない。結城を置いていくわけにもいかず、アタシと結城は二人、死体と対峙した。


 畜生。もうアイツ等とは絶対山に来ない!

「お前ッ、立てよ!」

「腰が抜けて……立てないよぅ……」

 泣き出す結城。

「泣きたいのはこっちだ! うわっ! メッチャゾンビいるぞ!!」


 気付けば、アタシ等は大量のゾンビに囲まれていた。軽く見積もっても20はいる。数字にしてみれば大した数ではないようにも思えるが、実際に囲まれてみるとこれがまた大した数なんだよねぇ。おーぅおーぅ。どうしよう。



「アァァァアアァァアァ」

「うおっ」


 一匹のゾンビが、地獄の底から聞こえてくるようなうなり声をあげてアタシに飛びかかってきた。反射的に左脚を軸に上段回し蹴りをした。腐敗している為、耐久力が低いのか、簡単に頭が捕れた。


 某ゾンビゲームの「頭をやられるとゾンビは死ぬ」と言う知識が役に立った。しかし、やっぱりゾンビとはいえ人型の相手の頭を蹴り飛ばすのは気が引けるな。


「キャアアアアアアアッ!」

「馬鹿ッ! 勝手に動くな! あぶなっ……」

「キャアアアッ!」


 ゾンビに恐れをなして、腰を抜かしたまま這うように、叫びながら移動していた結城は、顔をぐしゃぐしゃにしながら逃げようとしていたのだが、突如足を掴まれて――彼女の動きは止まった。


 倒れるようにして彼女の脚を掴んだゾンビが、口を大きく開ける。

「あ……あ……」


「させるかッ!!」


 まるでサッカーボールを蹴り飛ばすようにして、ゾンビの頭を蹴り砕く。嫌な破砕音が響いて、どろどろした黒い血をまき散らしながらゾンビの顔が粉々砕ける。腐った血の匂いが辺りに立ち込める。


「ッ――」


 行けるか?いくらゾンビといっても、ゲームとは違って、ボスキャラ的な存在はいない。噛まれたら一発アウトだが、ゾンビの動きは予想以上に遅い。敵も脆いし、頑張れば何とかなるか?少なくとも生存率0%ではない。結城さえ動けるようになってくれれば逃げを選択しても――


 突如、少し離れた位置で破壊音がした。続いて、この世の者とは思えぬ咆哮。笑い声。悲鳴。そして、次に、大きなものがアタシたちに近付いてくる足音がした。



 木々とゾンビをなぎ倒し、現れたのは――クマだった。もちろん、普通のクマではない、腐敗は少ないが、臓器を引きずっている。クマのゾンビ。



「冗談――」

 アタシが顔をひきつらせながら後ろに下がった時、


「大丈夫!?」

 男の声がした。一瞬、弟が来てくれたのかと期待したが――違った。辰斗だ。ショタのお前が来ても頼りにならないんだよ。最初に逃げたし。

 軽はいなかった。アイツ。逃げたのか。殺す。ぜってえ殺す。


「馬鹿! 逃げろ!」

「でも――」

辰斗は動こうとしなかった。


「あ、あ……」

 結城は、恐怖で、まともに話せなくなっていた。失禁している。

 逃げることが出来ない結城に向かって、クマがどんどん近付いていく。

今はもう、クマが口を閉じれば結城の顔は、失われることになるだろう。


「結城! クソッ!」


 突如、一瞬、深夜の山が真昼の様に輝いた。

直に暗闇に包まれたのだが、ゾンビの動きも、クマの動きも止まる。しかし――気のせいか先程よりも明るい。空を見上げると、輝く何かが近付いてくる。


 どんどんどんどん大きくなってくるそれは2つの炎だ。

 一つはアタシのよく知っている奴だった。


「雑魚は任せよ! 熊の死体如き、お主でも一撃で粉砕することが出来るぞ!」

「分かった!」


 その翼を生やした男は、激しい音を立てて、地面に着地すると軽く飛び上がり、翼を器用に動かして空中で回転をして、サマーソルトキックの形でクマの顎を蹴りあげた。

 力が入らない形の様に思えたが、クマの頭は一撃で粉砕された。


「伏せろ!」

「了解ッ――」


 男は、結城の襟をつかんで、アタシの方へ跳び、抱えるようにして倒れた。


「燃えよ死人風情が」


 赤いドレスを着た赤い髪のツインテール少女が、くるくると華麗に周りながら指をパチンと鳴らした。次の瞬間、彼女のまわりにリング状の炎が現れ、それが広がり、触れたゾンビが一瞬にして紅く燃え上がる。


「あ! オイ! 辰斗!」

 気付くと、男友達の、ショタ野郎が、炎に包まれていた

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