第7腐 風呂と少女
「あれおや? 今日は羽津花姉はいないのか?」
「うん。なんかサークルの皆と山に行くんだって」
「あー。そういえばなんか言ってたなぁ。どこの山?」
メイと別れてからも、緊張感なく須藤と遊んで、それなりに遅い時間になって帰って来て、テレビゲームで白熱の戦いを繰り広げている以津花とメイしかいなかったので聞いてみると、画面から顔を放さずに僕の質問に答えた。
「あっ。死んだ」
「甘いです。弱いです」
「もー、メイちゃん強いー。私の方がいっぱいやってるはずなのにー。お兄ちゃんの所為で気が散ったじゃん」
僕の所為にする妹であった。いや、実際お前らそんなに強くないぞ?初心者同士の闘いみたいなものだ。いや、僕もそんなにうまくないんだけれども、極々たまにウィンドとゲームをやるけど、アイツは本当に強い。
ウィンドはゲームを本気でやるタイプで、不死鳥の能力全開で挑んでくるもんだから、動体視力やらなんやらで、格闘ゲームだと一回コンボが入っただけで死亡。音ゲーだとパーフェクトなんて余裕。パーティーゲームだと、ほぼ自由に好きな目をだせるとチート少女と来てやがる。おかげで楽しくもなんともない。
ウィンドと対戦させてやりたいくらいだ。いや、僕も出来るだけウィンドと家族を会わせたくないから、やる機会なんてないんだろうけども。
「わかったー。ご飯の時になったらよべよー」
以津花とメイの無言の返事に頷いて、自分の部屋に戻る。机の上のスマートフォンを取り出して、適当に触る。特にすることも無いので、風呂に入ることにした。
風呂は一人で考える事の出来る時間。唯一僕が落ち着ける場所だ。とはいえ、正確には一人きりではなく、不死鳥がもう一人存在しているわけだが。
それにしてもウィンドが風呂に入っているところを見たことが無い。不死鳥だから老廃物は殆どでない。僕の場合は元人間だから垢やフケ以外の老廃物は出る。とはいえ、ウィンドも汚れは突くはずなんだけど。
「丸聞こえだぞ」
「て、うわ!?」
目の前に、全裸のウィンドがいた。
「全く、常識にとらわれ過ぎだ。馬鹿者。汚れは突くが、わらわがお主の中に入る時にすべての汚れはその場に置き去り、つまりは汚れが完璧にとれるのだ」
「わかったわかった! お前なにやってんだよ!」
「フン。こんな体、見られたところでどうという事は無いわ。わらわにとってこれは本当の姿ではないしな。……それともお主はこんな幼い体で興奮するとでもいうのか? ほれほれ」
浴槽の中で股を広げるウィンド。無論、隠してすらいない部分は見える。ああ!やめてくれ!僕は!僕はねぇ!
「あ」
「ん?」
「うぇ?」
同じく、全裸のメイが、浴室のドアの前にたたずんでいた。
徐々に、メイの顔が真っ赤に染まっていく。
「変態ッですっ!」
「まて! 誤解だ! 話せばわか――」
メイが大鎌を構える。大きく振りかぶって、鎌がどんどん僕に近付いてくる。
僕が再度意識を取り戻したのは、真っ赤に染まった浴槽の中だった。




