第2腐 不死男と美人女
『――?』
何だろうか。ここは。なんというか、全身がふわふわする。何もない黒い空間の中で僕は一人たたずんでいた。動かしているのに動かしていないような、自分の事なのに他人事のような、そんな感覚。すぐに分かった。これは夢だと。
しかし、夢にしてははっきりしている。とはいっても、現実にしてはぼんやりしている。不思議な世界。
しかし……なんだか嫌な予感がするな。さて、そろそろ起きるとするか。
何となくではあるが、夢から覚める方法は知っている。こう、頭で念じると……
「はっ……うわあああ!?」
目が覚めた瞬間、僕は思わず叫んでしまった。目の前に、あの美人転校生、六右馬春美の顔があったからだ。
いつの間にか、僕は自分のベッドで寝ていて、何故か六右馬が僕を覗き込んでいたのだ。
「六右馬、何故ここに?」
上体を起こして左手にいる六右馬の方を向いて軽く頭を押さえながら言った。
「忘れ物を届けに……」
忘れ物なんてしたかな。――いや、問題はそこではないだろう。
グイッと顔を近づけられて、思わず後ずさりしてしまった。
何故だろうか。確かに美人ではあるが――どうしてここまで彼女に魅かれるのだろうか。心を操られている気分だ。
不思議な感覚だ。心の中では彼女を快く思っていなくとも、本能が彼女に魅かれている。こんな経験は初めてだ。
六右馬は僕の顔を至近距離で見つめると、獲物を狩る猫のような眼で僕を見て――僕をベッドの上で押し倒した。
いや、もうされるがままだった。
男の力で、しかも不死鳥の力ならば、たかが高校生の女の力なんて知れたもので、本気を出さずとも振りほどくことが出来たはずだが――本能か、それとも理性かもしれない僕の何かがその行動を遮った。
うわっ。うわうわ。何この状況。僕の部屋で、二人きりでベッドの上で、しかも僕の上に女の子がいるし!
高校の制服が、六右馬の凶悪な胸の先端部分を隠しているのだが――いや、もう夏服で、薄すぎて、下着をつけていないのか、先端の突起部分が見えるのよね。これがもう僕の股間を突起部分に進化させちゃうわけで――いやいや、やばいって。
「あれ……大きくなってきた」
六右馬春美は僕の突起部分と化した股間部に手を当てて優しく撫でまわす。
積極的すぎだろ!!若者の性の乱れが問題になっていると言われていても「そうでもないと思う」と思っていたさっきまでの自分が恥ずかしい!乱れすぎだ若者よ!
うわああああああああああああああああああああああああああああ!!
やめてくれ何コレエロゲ!?僕の人生で一番エロゲ!
股間を撫でまわしながら、六右馬の顔がどんどん僕に近付いてくる。
既に六右馬の息が顔に触れるほどまでに顔が近い。ツリ目だけどまつ毛も長くて、キラキラしてる目は、見ているだけで吸い込まれそうになる。
既に触れてると言ってもいい程に、六右馬の唇が僕の唇と合わさっている。もう死んでいいかも。
彼女がもっと僕に顔を近づける。完全に唇と唇が触れて、彼女の舌が僕の口の中に入ってくる。
ハイ、アウトー。
キスの味はレモンの味とか言われるけど、もうそんな事も考えられなかった。僕の場合、人生初キスは血の味だったんだけども。
うわぁ。舌と舌がこすれあって気持ちがいい。もうこれだけで激しい快感が僕を襲っている。
何というか、こう吸い込まれそうで、僕の息がどんどん荒くなっていっている。苦しい。
――ん?息が荒く?
「キャァ!?」
僕は両手で、おもいっきり六右馬を突き飛ばした。
僕から引き離された彼女は、僕の股の上に馬乗りになって、どうしてという顔をしている。こっちだって、あのまま最後まで行きたかったけど――どうやらそれは無理らしい。いや、助かったのだが。多分、最後までいってたらメイに殺されてた。




