第4羽 フェニックスと人の腕
不良BCD以下略達も、こちらに迫ってくる。ちょっと怖い。だけど、僕は精一杯カッコつけて言った。
「黙れ。……須藤、今助ける」
うおおおぅ。カッコいい。もう僕は僕に惚れちゃうぜ。須藤はゆっくりと僕の方を見た。涙で顔を濡らして――
「ざけてんじゃねぇ!!」
リーダーのその言葉を合図に、不良BC以下略達も金属バットやメリケンサックを構えてこちらに走ってくる。先手は不良B。僕の頭を金属バットで叩きつけた。それで勝負が決まったと思ったのだろう。他の不良たちは下品な笑いや言葉を僕に投げかけてくる。
「ダッセェ!」
「カッコつけといて瞬殺とか!」
流石に一瞬クラッと来たが、意識を失う前に僕の頭の傷は完治したらしい。僕は、すでに完治している頭に乗っているバットをぎゅっと握り、僕の頭からどかした。そして、僕の左頬の部分までバットを握ったまま左腕を持ってきて、力を込めてバットを握り締めた。
「てめぇ!?」
流石にこれには不良達も驚いたらしく、おろおろしている。強いってのは気持ちいいな。
さらに、バットを掴む腕に力を入れると、ベコベコとバットの頭がつぶれた。僕が、握りつぶした。
と、同時に僕に掴まれている金属の部分が赤く熱を帯びていく。すぐにバットが、熱を帯びた赤い鉄に姿を変える。
「熱ッ!!」
あまりの熱さに反射的に不良Bはバット放した。
「そらぁ!」
僕は赤い鉄と化したバットを投げ捨てて隙だらけの不良Bの体に蹴りを叩き込んだ。
不良Bは、まるでアクション映画のように数メートルも吹き飛んで最後に芝生の上をずざーっと滑った後、泡を吹いて気絶した。おおう。僕強い。これ、本当に人殺すといけないから、手加減しないと。
不良CD以下略達および不良リーダーも須藤も全員、え?何今の?みたいな目で、僕と倒れている不良Bを交互に見ている。ちなみに、自分でも驚いています。僕強すぎ。
「やっ……やっちまえ!」
不良リーダーはかなりビビっていたのか裏声で叫んだ。ダサすぎる。
僕は、声を上げて迫ってくる不良を殴り、蹴って蹴散らして行った。無双ゲームみたいだった。
僕に攻撃が当たっても、相手が怪我を確認する前に僕の傷は完治しており、僕が攻撃をすれば一撃で決まる。防御無視一撃必殺攻撃持ちのHP無限というチートキャラを目の前にして不良以下略達は次々と倒れて行った。全滅まで、1分かからなかったと思う。僕はアニメの主人公のようなテンションで、不良リーダーを指さして言った。
「あとはお前だけだ」
不良リーダーはがくがくと震えながら、足元の須藤を無理やり立ち上がらせ、彼女の喉元にナイフを当てた。
「うごがっ……うごこっなっ!!」
噛みまくりの裏声で僕を脅した。これはマズい。僕は刺されても多分死なないけど、須藤は刺されると死ぬんだよな。
流石不良リーダー僕にもっとも有効な手段で最後まで抵抗する。
どうする――
その時――
「キモいんだよ!」
叫び声と同時に須藤が不良リーダーの腹に肘鉄を食らわせる。不良リーダーがナイフを落とす。
「汚い手でオレに触れるんじゃねぇ!!」
彼女は不良リーダーの腕を掴んで、背負い投げの要領で地面に叩きつけた。
死んだと一瞬思ったが、不良リーダーはぴくぴくと動いていた。瞬殺だった。彼の周りの地面にひびが入っている。いったいどれだけの力で叩きつけたんだ。と、いうか不良リーダーもよく生きてるな。はい、不良リーダーに拍手。パチパチー
須藤は、涙の溜まっている目をこすって、僕の方を見た。そうか、須藤から見たら、僕もまた、化け物なんだ。僕は、何も言わずに立ち去ろうと背を向けた。その時、
「オイ」
須藤が、声をかけてきた。ビクッと身をすくませてから恐る恐る振り向くと彼女は笑顔でこちらを見つめていた。
「ありがとな」
そう言った。
――!須藤は、驚いている僕に構わず近付いてくる。
「知っているみたいだけど、オレは須藤雷花。お前は?」
「……僕は、鬼冴三燈火」
ちょっと戸惑いながらも、答えてみた。
「ん。わかった。で、燈火。改めてお礼を言う。サンキュ。そして、昼間、殴って悪かったな。オレ、喧嘩売られて気が立ってたんだ。でも、何人もいてな……ああ。そうだ。ちょっと待ってくれ」
いきなり下の名前を呼び捨てか。だが、美人でおっぱいが大きい女の人にそう呼ばれるのはマジでうれしい。須藤は倒れている不良リーダーの所へ歩いていく。何をする気なのだろう。
彼女は、動かない不良リーダーの股間に蹴りを入れた。
「キモいんだよ!ふざけんな!何が「オレと一対一で戦わなければ学校を襲撃する」だ!十何人も連れてきやがって!」
既に意識のない不良リーダーの股間をげしげしと蹴り続ける須藤。
「やめて上げて! そこだけはやめて上げて!」
思わず叫んでしまう。見てるこっちが痛い。
「ん? そうか? まあ、オレも気が済んだし、こんなもんにしといてやらぁ」
最後に、もう一度さっきよりも力を込めて、須藤は不良リーダーの股間に蹴りを入れた。
痛い!痛い!
須藤は、僕の方へ歩み寄ってきて
「それで、なんだ。あーー……」
恥ずかしそうに笑いながら頬をぽりぽりとかいた。辞めてくれ。萌え死ぬ。
「オレさ、こんなんだから友達全然いなくてさ。全然人と触れ合う機会が無いんだ。だから、これからも仲良くしてくれないか?」
――――!!まさか、そんなことがあるわけがない!ゲーム以外で女の子と友達になるなんて不可能なんだぞ!?しかもおっぱい大きい。
「聞きたいことは沢山あるけど、オレが今お前に言いたいのは礼とその言葉だ」
彼女は僕に右手を差し出してきた。これに応じない男は、多分いないだろう。
「ああ」
そう言って僕は人間の右手で彼女と握手をした。
僕は少しだけ、こんな力も悪くないものだと思った。
今回の話で、第1章の「ストライク×フェニックス」は終わりです。
次章もすぐに更新すると思いますので、よろしくお願いします。