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不死鳥!-ふぇにっくす!-  作者: 起始部川 剛
第5章 クチサケ×トウカ
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第10裂 不死男と失った少女

 さて、朝起きてから二人の少女とベッドの上戯れていたからか、遅刻ギリギリだった。何とか間に合い、教室に入ると、予想外なことに、霧原がいた。しかし、東間はいなかった。


 いつもは二人一緒にいるのに、不思議なものだと思いながら、関わりたくなかったので自分の席に向かって歩くと、霧原は、僕を見て、大げさと言えるほどのリアクションをとった。


 イスから、転げ落ちて、口をパクパクさせながら僕を指さしたのである。


 まあ、学校に来たことは褒めてやるが、それでもやはり僕のコイツに対する怒りは収まったわけではなく、僕を指さして、そんな化け物を見たようなリアクションをとられると、少しばかりイラッとくる。


「アンタ――昨日アレだけの怪我しといて、なんで学校にいるのよ……」


 ぷるぷると指を震わせながら、霧原は僕に言った。

 ? 別に、僕は不良に襲われた時、怪我なんてしてないぞ?


「あ? 何言って――――」

 そこまで言って気付いた。

 ああ。そうか。見られていたのか。――僕が口裂け女に襲われているところか――羽津花姉の肩をかりて帰っている最中のどちらかを。


 そして唐突に担任が入ってきて、また、「皆さんに残念なお知らせがあります」。

続けて「東間知美さんが入院しました」


◆◇◆◇◆◇◆


「思ったより遅くなったな……」既に外が暗くなっている。――夜になると、口裂けと出会ってしまいそうで――僕としては会いたいのだが、それでもまあ、これ以上制服を切り刻まれるのはゴメンなので、とりあえず家までは無事にたどり着きたい。

 僕が何度制服を買い替えた程か。羽津花姉も以津花も理由を知っているから、何も言ってこないけど、それだけでも数万は無駄にしている。


 東間が入院ねぇ――昨日の夜には無事だったことから見て、帰りか。つまりは僕から逃げ出した後。時間的には、僕が井口とやりあった後か……もしくはその前か。確率的にはイコールなのかもしれないが、井口の着ていたワンピースが血だらけだったところを見ると、僕と口裂け女となった井口が出会う少し前という線が有力的だろう。


「ねえ」

 僕が校門をくぐった時、隣から女の声が聞こえた。

 また、「私キレイ?」と聞かれるのかとドキドキしながら声のする方向を向くと――そこにいたのは、霧原姫奈だった。

「……昨日のアレ、なんだったの?」


 アレ?アレってなんだ?――口裂け女か?それとも机を蹴りあげたことか?


「――――昨日、アンタが鎌持った女に斬られるの見たんだけど」


 見られていたか。――何とも言えない。

 見られていたと言っても、昨日は不死鳥としての力が殆ど消えていたため、僕が化け物だという事はばれなかったとは思うが、それでも傷が全くないというのはマズいかも知れない。


 僕がどうしようかとおろおろしていると、霧原は続けた。

「不良が逃げて、やばいと思って逃げて、ちょっと行ったらさ……急にあの女が出てきて、知美のほっぺ斬って逃げたよ。知美、ほっぺ斬られて口裂け女みたいになっちゃって、一生治らないかもって」


 霧原は、涙ぐみながら、僕に言った。

 自業自得だ。おかげで僕もとばっちりを受けたんだ。――でも、あれも、井口が自分を助けてくれなかった僕に対して――僕が井口を助けられなかったことの、罰なのかもしれない。


「最初にアンタに謝っとくよ。ゴメン。今更謝っても許されるとは思わないけど――ウチ、東間があの女にやられて初めてアンタの気持ちがわかったよ。馬鹿にしてゴメン」


――――東間も、井口にやられたか。

 友達を失ったら、泣くのは当然。そして泣いた僕を馬鹿にした事を謝ったという事は、彼女も泣いたのか。


「謝るのは、僕じゃなくて井口に言え」

 僕は冷たく、霧原に返した。霧原は彼女らしくない程に、しゅんとしており、なんだか僕の方が悪いような気もしてきたが、でも、それでも、僕は彼女を許すつもりなんてなかった。


 謝ったところで遅い。謝られても、僕はお前達を一生憎む。

 多分、井口だって、謝ったところで、止まらない。理性を失っている。




「僕はお前を許さないけど――井口が誰かを傷付けるのは嫌だからな」

「……ありがと」

 そういって、とりあえず、霧原と一緒に人気のない路地を歩いた。

 別にツンデレとかではなくて、事実を言っただけなんだけど。



 それから時間を待たずして、日が暮れた。夕焼け色に染まっていた路地が、黒く包まれる。いくら暗いと言っても、人の目ですら自由に利く程度の暗さだろうが――日が暮れれば、奴らの時間。


 この世界の支配者は、人間から妖怪へと変わる。



突如――

「私、キレイ?」


 声がした。

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