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不死鳥!-ふぇにっくす!-  作者: 起始部川 剛
第4章 ヴァンパイア×イツカ
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第15歯 不死鳥と翼

 ガラスの破片と共に地面に倒れた僕と吸血鬼。

「この野郎!」

「鳥風情が!」


 同時に叫んで、吸血鬼が倒れたまま僕に手を伸ばす。それを右腕ではらいのけて、左腕を突き出して吸血鬼の肩を軽く握る。

 僕に触られた吸血鬼の体を炎が包み込んだ。赤い炎に舐められてもがく吸血鬼を蹴り飛ばし、僕は野球ボールを投げるようにして吸血鬼に向けて火球を投げた。――自分でも驚いたが、この状態では普段の左腕だけの状態ではうまく出来ない翼を広げることも、火球を放つことも容易に――まるで、昔からできることのようにごく普通に出来た。


 吸血鬼はサッカーボールほどの火球が被弾する前に、地面を転がり火球を回避すると、コウモリのような翼を広げて空高く飛び上がった。

 僕もそれを追いかけるようにして紅い翼を広げて飛び上がった。


 初めての飛行でうまく出来るかは正直自身は無かったがこれもまた、昔から当たり前に出来たことの様に、普通に飛ぶことが出来た。


 夜景が綺麗だ――などと思う暇もなく、吸血鬼を追いかけて高度をどんどんあげていく。


 飛行に関しては僕の方が上だったようで、すぐに吸血鬼に追いついた。吸血鬼はそれを見ると足を振り回すようにして足元の僕を蹴り飛ばした。空中の為に踏ん張りがきかず、翼を大きく広げて空気抵抗を大きくして何とかブレーキをかけたが、それでもかなりの距離を弾き飛ばされてしまった。


 いくら戦闘力が飛躍的に増加したと言っても空中戦は慣れていない。僕の方が不利だ。――咄嗟に行った行動が正解だったおかげで何とかなったけれど、もしも翼を広げなければ、かなりの距離を蹴り飛ばされていたかもしれない。


 吸血鬼は僕が空中戦に慣れていないとみると、僕に向かって高速で接近してきた。上下左右に動いて僕を翻弄する。火球を1つ2つ投げてみたが、吸血鬼にかすることなく夜空に消えていった。


 遠距離攻撃は当てれない――か。なら、懐に飛び込んで――


 吸血鬼の突進を上に飛んでかわす。が、吸血鬼は僕の動きを予測していたように90度垂直に飛び上がり僕の真後ろについた。

「何ッ――」

「空中戦は苦手か? 不死鳥!」


 吸血鬼は僕の頭の頂点をかかと落としで蹴りつけた。

 自分の頭蓋骨が割れる音が響いて、鼻から血が噴き出る。自分でも驚くほどの量だった。一瞬意識を失いかけたが、意識を失う寸前に、傷ついた頭部の治癒は完了したようだ。


「うわああぁぁぁぁぁぁ!?」


 傷は回復したとはいえ、蹴りの衝撃が消えたわけではない。僕はかなりの高度から地面に向けて恐ろしい速度で頭から墜落していく。

 飛行中もジェットコースターに似た恐怖を味わったが、ぐんぐんと近付いてくる地面には生理的な恐怖を感じる。恐らくはこの程度なら死なないだろうが、()人間の僕の本能は「死」を直感していた。


 そんなことを思っているうちに受け身もとれずに地面に叩きつけられた。――――が、防御力も底上げされているようで、先ほどまでの僕ならバラバラになってしまうのではないかと思われる速度で叩きつけられたのだが、全身打撲程度のダメージで済んだ。――全身打撲でも通常の人間なら重症なのだろうが、僕はこの程度の傷は一瞬で回復する。


 衝撃で空気を絞り出され空になった肺に、大きく息を吸い込んで空気を補充する。


 しかし、死ぬわけはないと思っていたが、頭から地面に落ちたんだから、首の骨くらいは覚悟していたんだけど、まさか全身打撲程度とは……思ったよりも今の僕は恐ろしい存在なのかもしれない。


 まあ、確かにあれくらい防御力が無いと、この動きに体がついてこれないかもしれないから、当然と言えば当然か。自分で腕を振り回したら腕がちぎれた、なんてゴメンだ。

「――の野郎ォ!」


 もう一度翼を広げて空高く飛び上がった。吸血鬼の前まで飛び上がって、吸血鬼の顔に向けて右手を突き出す。吸血鬼は右手をはらうようにして軌道をズラし、僕の伸びきった右腕を掴んで、僕の顔にパンチを放った。

触れられている部分が、肘の当たりなので、炎上効果が発動しない。


「ッ――」


 激しい衝撃が脳を揺らし、強烈なパンチが顔面を醜いほどに歪ませ、後ろに弾き飛ばされそうになるが、吸血鬼に右手を掴まれており弾き飛ばされることは許されない。


 だが、吸血鬼が僕を掴んでいる限りは、吸血鬼も僕の攻撃を避けれないのは同じ。それはまた、僕にとっては好都合だった。


「お前を殺して、以津花を元に戻す!」

「ハッ! 他人の命より自分の命の心配をしろ!」

「冗談! ――悪いが命が多すぎてどの命の心配をすればいいのかわかんねぇよ!」


 と、某種死の打撃自由のパイロットのセリフを丸ごと否定するような言葉を吸血鬼に向けて、左手と一緒に投げつけた。吸血鬼の腹に左腕がめり込む。吸血鬼の口から血が噴き出す――――初めて、吸血鬼にまともなダメージを与えたような気がした――。実際は何度かダメージを与えているのだが。


 吸血鬼は掴んでいた僕の腕をはなし、はなれ際に僕を蹴り飛ばした。

が、僕もお返しに吸血鬼の胸に火球を投げつけた。


 …僕の炎を振り払って、吸血鬼は腕を伸ばした。大きなコウモリが僕に向かって突進してくる。

 吸血鬼なりの遠距離攻撃なのだろう。僕はそのコウモリを左手で叩き潰して降下しながら片腕を突き出して火炎放射器の様に炎を拡散させて吸血鬼に向けて撃ち出した。


 吸血鬼は射線から左に逃れて炎をかわすと、僕に向かって降下してきた。

 吸血鬼の手刀に僕も手刀で返す。お互いの手が交差する。攻撃面では恐らく僕と吸血鬼はイコール。


 先程までと違い、打ち合っても僕が押し負けることはない。当たり方によっては、僕の方が有利なくらいだ。それ程までに、僕自身が強化されているという事だろう。


 お互いの腕をはじくようにして離れると、もう一度近付いてお互いに手刀で相手を攻撃しあった。


 僕の手刀が吸血鬼の右肩を切り裂いて、吸血鬼の手刀は僕の喉を切り裂いた。お互いに攻撃力が高すぎて、手刀は相手の肉を切り裂くほど強力な攻撃になっている。まさしく刀だ。


 パタパタとお互いに返り血を浴びながら(とはいえ吸血鬼が浴びている血はすぐに燃えて消えてしまうため、実際は僕だけが一方的に返り血を浴びている。)お互いに攻撃を浴びせ続けた。


 どちらかが死ぬまで、攻撃し続ける。


「不死鳥の男よ! 貴様がどんな経緯でそうなったのかは知らんが、お前は純粋な化け物ではないな!」

 …吸血鬼は手刀で攻撃すると見せかけ、対応しようとした僕の腕を足で蹴りあげた。


「ご名答!」


 相手の顔に向けてパンチを放ったが、吸血鬼はギリギリで顔を傾けて直撃を避けた。僕の攻撃は吸血鬼の頬を軽く傷つけただけで終わってしまった。吸血鬼は僕の首を掴んで顔をグイッと近付けた。僕は右足で押し出すようにして吸血鬼を蹴り飛ばして距離をとる。



 戦闘に慣れてきた。――僕にとっては本当に嫌な話だが、どうやら僕は経験値が溜まりやすいらしい。

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