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不死鳥!-ふぇにっくす!-  作者: 起始部川 剛
第4章 ヴァンパイア×イツカ
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第10歯 不死鳥男と連撃

 僕は立ち上がって、吸血鬼に意識を集中させた。僕が吸血鬼に意識を集中させると同時に、吸血鬼は動いた。少しだが、見えた――


 僕は後ろに跳んで爆発的な威力を持つパンチをかわした。風圧で体が吹き飛ばされそうになるが、何とか踏ん張る。

 が、吸血鬼は僕が攻撃をかわしたのを見ると、腕を引っ込めてそのまま回転し、回し蹴りの要領で僕の腹に蹴りを入れた。


 吸血鬼の恐ろしい威力の蹴りで何時も弾き飛ばされていたが、今度は踏ん張ることが出来た。――やはり、集中したおかげか、先ほどよりも力が上がっている。――が、上がったところで吸血鬼と僕の戦闘力の差は対して縮まらなかった。


 弾き飛ばされなかった僕を見ると、吸血鬼はもはや芸術と呼べるほど華麗に動き、僕に見事な連撃を叩き込んでくる。僕は両腕でそれを防ぎ、かわすが間に合わない。

 回避したと思えば僕の死角から脚が、腕が飛んでくる。


 死にものぐるいで両腕で四方八方から降り注ぐ攻撃の雨を防いだが、防御が意味をなしていない。一撃を食らうたびに、僕の腕が変形する。傷が回復している最中に次の攻撃が飛んでくるため、回復が間に合わず、次から次へと全身が変形していく。



 腹に食らえば、おなかと背中がくっついたのではないかと思うくらい深くめり込む。僕は、自分が吹き飛ばされないように踏ん張るだけで精一杯だった。

――何度か足が地面から離れたのだが、吸血鬼は地面に浮いた僕を地面にたたきつけるように蹴りつけて、僕を逃さなかった。



「負け、て、タマ、ル、カァ!!」


 自分の物とは思えない声を潰れた喉から絞り出して、自分に気合を入れる。


 僕は、相手の鋭い突きのような蹴りを、体をねじってかわした。僕の腹の前を通る足を右手で掴んで、手刀でこの足を叩き潰そうと左腕をおもいきり振り下ろした。


 完全に当たったと思ったが、僕の大ぶりの攻撃は空を斬っただけたった。吸血鬼は消えていて、大量のコウモリが、吸血鬼のいたところから現れた。吸血鬼が、大量のコウモリになって僕の攻撃を避けたようだ。


 吸血鬼には攻撃が、当たらない――かわされる!?


 大量のコウモリは僕の周りをくるくると周った。まるで僕の隙を探っているように。そして僕が目の渇きに耐えかねて目を閉じた――まばたきをした瞬間、大量のコウモリが一斉に僕に向かって突進してきた。


「うわっ、うわああ!」


 左腕で襲ってくるコウモリを叩き落として対応するが、向こうの数は何百といる。とても対応できる数ではない。僕の頬を、肩を、太ももを、コウモリたちがかじり取っていく。どれだけかじり取られてもかじり取られた先から回復していくのだから、コウモリたちにとって、僕はいい餌なんだろう。減らないし、死なない。


 どれだけの攻撃を受けたかわからないが、時間にして1分も立っていないと思う。

 コウモリたちが、僕の体の周りから離れて一か所に集まっていく。コウモリは人型に集まっていき、やがてそれは足の先から吸血鬼の姿へと戻っていった。




「なかなか踏ん張るな、人間……いや、人間ではない男よ」

「うるせぇ……吸血鬼」


皮肉を交えて(皮肉になっているかと聞かれれば微妙だが)余裕を持った表情で吸血鬼に言葉を投げつけたつもりが、どうやら想像以上にダメージを食らっていたらしく、とても余裕といえる声色ではなかった。

 吸血鬼が、僕を睨んだ。何故かわからないが――恐怖を覚え、僕は左に跳んだ。


 僕の右腕が、ぐしゃりと音を立てて引きちぎれた。いや、まるで何か鋭利なものに斬られたようなきれいな傷痕。

 吸血鬼の超能力か――!?


「ッ……冗だ―――ッ!」


 僕が切れた右腕に気をとられているうちに吸血鬼が僕の眼の前まで接近していた。あわてて左腕を突き出すように吸血鬼に攻撃をしようとしたが、吸血鬼はその攻撃が届く前に、僕の腹に指を突き刺していた。――突き刺していた。


「ぐ……あああああああ!!」


ぐちゅぐちゅと音を立てながら僕の腹の中に吸血鬼の指が、手が、入り込んでくる。気持ち悪い。吸血鬼は、僕の臓器を掴んで、僕の体を持ち上げた。僕の口から大量の血が噴き出る。


 吸血鬼は僕の臓器を掴んで、僕を地面にたたきつけた。地面を這いずるようにして無様に吸血鬼から距離をとろうとする僕の臓器が飛び出ている腹を、吸血鬼は爆発的な威力の蹴りで、蹴り飛ばした。


 空中で何回転もして、パーンと風船が割れたような音を響かせながら僕は壁に叩きつけられた。僕の体から大量の血が、肉片が、臓器が飛び散った。体が、爆散したみたいだった。


 そこから地面に落ちた僕だが、立ち上がることが出来ない。腹の傷も回復していないし、辺りに飛び散っている僕の肉片も、まだ存在している。普段なら飛び散った血も、肉片も燃えて消えるというのに。


 壁にもたれかかるようにして、こひゅーこひゅーと潰れた喉で息をする。肺が潰れているのか、息をしても苦しい。血がのどに詰まっているのか、血がわき出てくるのか、息をする度にごぼごぼと音がする。


何故だ?なぜ回復しない?

その疑問は、すぐに解決した。


――――死に過ぎた。


 不死鳥の回復能力の限界。

 不死鳥とはいえ、何も死なないわけではない。事実、ウィンドだって初めて会った時は、死にかけていたじゃないか。

 短時間に何度も死ぬと、不死鳥の回復能力もやがて限界を迎える。少しでも時間をあければ何とかなるのかもしれないが、僕はこの10分足らずの時間で、一体何十回死んだのだろう。いつ回復能力の限界が来てもおかしくない程に死んでいた。その限界が、今、来たのだ。


 吸血鬼が、僕の眼の前に立った。

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